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第八章
第366話
しおりを挟む「あの国は妖精たちを皆殺しにしようとしたわけではない。しかし知識がなかった。そのせいで、暗の妖精は一族のほとんどを滅ぼされた。……確かに死んでもほとんどは同じ属性の妖精に生まれ変わる。だけど、暗と光の妖精たちは違う。生まれる条件があるんだ。それに該当しなければ、生まれ変わる前が暗や光でも違う属性になるんだ」
そう、その二属性の妖精は奇跡でしかない。
「そうね。私も光と暗の妖精はエミリアちゃんの妖精しか会ったことがないわ」
ミリィさんの言葉にエリーさんも「話に聞いていたけど会ったのはエミリアちゃんの妖精が初めてだわ」と同意した。
「私のクラちゃんは……連中に殺されて、運よくもう一度暗の妖精として生まれ変われた稀有な存在。そして唯一王都で生き残ってた。妖精の隠れ里には六人しかいなかったよ。みぃちゃんは……仲間たちに妖力を分け与えられてギリギリ生きていた子。一日遅かったら生まれ変わってふたたび使役されていた。ちぃちゃんは……王都の外で殺された。生まれ変わった場所が鑑定の魔導具の感知範囲外で見つからずに助かった子。そして、ひーちゃんは仮死状態でビン詰めにされて市場で販売されていたのを見つけた。高額だったけど買い取って回復させたの」
「ビン詰めって、妖精が見えるのですか」
「光の加減でうっすら。火の妖精は赤色の髪の毛だから。ひーちゃんは強い妖力を持っているからオレンジ色で目立ったみたい。……連中は珍しい色だからビン詰めにしたの。ほかの火の妖精たちみたいに赤色だったら……殺されてた」
そういったら、隣に座るアルマンさんに頭を撫でられた。
「妖精の髪の色は違うのか?」
「うん、妖力の強さで。ひーちゃんは強いけど、コントロールが上手くいかなくて。それで聖魔師と契約すれば暴走しなくなるから私と契約したんだ」
「きっとそれだけじゃないぞ。助けてくれたエミリアちゃんのそばにいたいと思ったんだ。ただそれをいうのが恥ずかしくて、そう言い訳してるだけだ」
「そう、なのかな?」
「ああ、そうだ。エミリアちゃんは優しいからな。本当のことをいっても周りが許そうとしないから、一番説得力のある理由を使ったんだろう」
……そうなのかな? でもそんなに私のことを気に入ってくれたのなら嬉しいな。
「それで妖精の隠れ里で私が妖精たちの味方で仲間を助けるといっても信じてもらえなくてね。聖魔師だといっても信じてもらえなくて……。でもピピンとリリンが説得してくれたの。『どんなに信じられなくても、何度も裏切られても。裏切る側になった方が負けだよ』って。ピピンとリリンは仲間たちに裏切られたからね。だからその言葉の重みが妖精たちの心に響いたんだよ」
声は聞こえない。だけど、あとで妖精たちに聞かれて二人との出会いを語った。そのときになんて説得したのかを教えてくれた。ピピンとリリンは当時のことを恨んではいない。
《 『捨てるように放り出された。それが悲しかった。ただ、それだけ』だって 》
二人には新しい仲間ができた。それでも妖精たちが一緒になって騒いで遊んでいる姿を見ているピピンの表情は時々悲しげだ。私がダンジョンに入るまでは、あんな風に仲間たちと楽しく生きていたのだろう。
……二人の仲間を倒したのは私だ。ピピンの悲しみは私が生み出したんだ。
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