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第八章

第365話

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「みんなにはここで過ごしてもらう……あら、どうしたの?」

アラクネの言葉に何人かが恐怖を顔にあらわした。

「アラクネ。あの連中みたいに遊ばれるのかって思われてる~」
「え? ああ、違うわ。いま地上で妖精たちが見てきた封印内の報告をしているの。その中にはくらやみの妖精が撮ってきた記録の魔石もあって、それも見てもらうらしいわ。それをエミリアには見せたくないから安全なこの場所に来てもらったの」
「だから、私たちは報告会が終わるまでここで過ごしてね、ってことね」

エリーさんが納得したように確認するとアラクネが笑顔で頷いた。


アラクネの話では、騰蛇は彼らを封印内に移すつもりらしい。誰も干渉しない『大きな檻』のつもりなのだ。

「それは大丈夫なの? その……全員がって話だったけど」
「ええ、理由やその原因はわかったから」

エリーさんが言葉を選んで質問する。その気持ちに気付いたようでアラクネが優しく微笑む。

「アラクネ。理由や原因は?」
「神の干渉。といっても一国を魔物の国のままにしておくと魔物が活性化する原因になるらしいの。それで『別の姿にした』というわけ」
「あの地中でウゴウゴしてた黒いモノは?」
「あれは『国王たちの成れの果て』。彼らは清浄化し始めた地上から少しでも遠くへ逃げようとしているの」
「そいつらは神から別の姿を与えられなかったのか?」

私とアラクネの会話に、疑問を持ったアルマンさんが質問をした。何人かから頷きで同意される。

「だって罰だから」
「ええ、彼らは大変重い罪を犯したから……赦されない罪を。だから、光の差し込まない地中で消えない自我を持ったまま生きていくのよ。陽の光は彼らを焼くわ」
「地中でも砂の隙間から陽の光が通ってる。それに騰蛇が返事をするときに揺れるから。それが、今まで差し込まなかった陽が届くようになって……」
「逃げ続けた結果、封印の底までたどり着いたのよ。今はその底を蠢いて穴を探しているわ」
「妖精の結界の頃ならあったかもしれないけど。神獣の封印経由騰蛇の封印だもん。穴なんてナイナイ」
「ええ、ないわね」

私は変わらずエリーさんの胡座の中。そんな私の前まできて私と両手を握りあって笑うアラクネ。

「それで、騰蛇が揺らす度に逃げ回っているってわけか」
「どこにも逃げられないというのに、か?」
「……いっそのこと、全身焼かれちまった方がよくないか? そうしたら死ねるだろ?」
「あら、それは無理よ」

調査団たちの会話にアラクネが笑顔で答える。

「だって、連中は死ねないの」
「そうそう。死は安らぎ。でも連中にそんな安らぎはいらない」
「一体、どんな罪を犯したというのですか」
「んー? 妖精たち、いない?」
「ええ、いないわ」

私が周囲を見回すとアラクネは安心させるように頭を撫でてきた。妖精たちは結界を行き来できない。だからこそ、私たちをアラクネに託した妖精たちは地上で報告会に参加している。
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