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第八章
第356話
しおりを挟む「エミリア。明日には国境に到着するぞ」
「神獣たちに連れてきてもらった方が早かったのに」
「仕方がないだろ。『聖魔師はきていない』ことになっているんだから」
荷馬車の中にテントを張っての移動。テント内で自由に過ごし、夕食になったら荷馬車を止めて外で食事。もちろん結界石で結界を張っている。それも二重結界で内部が見えないようにしているのは妖精たちが見えないようにするためだ。
すでに神獣の加護が届く領域を超えている。
「ねえ、本当に戦わなくてもいいの?」
「ああ、お前は調査員の一人だ」
すでに私の職業は『魔法剣士』に切り替えてある。別に切り替えたからといって妖精たちと一緒にいられないわけでも同調術が使えないわけではないけど。職業を聖魔師にしているのは、鑑定が使える相手を牽制するためだ。
「エミリアちゃん、今日は何して過ごしていたの?」
「今日は色ガラス作り。明日、完成する予定なんだけど……」
チラリとダイバを見ると「ん?」と聞かれた。
「明日、いつ頃国境に到着するの?」
「ああ、予定は昼過ぎだな。ただ魔物と戦闘があれば遅れていく。遅くても夕方には到着だ」
「エミリアちゃんじゃないけど。私たちも戦わなくてもいいの?」
「ああ、ミリィたちは対人の時に動いてくれると助かる。……国王が、連中がエミリアに何をしてくるかわからなくて心配している。聖魔師の不参加は言ってあるが、女性を同行している時点で絡んでくる可能性が高い」
同行者にミリィさんが加わっている。そしてエリーさんやキッカさんたちも。各国の様子がきな臭いため、エリーさん以外の対人戦に慣れている守備隊としての経験が役に立つというダイバの提案に同意した国王からの依頼だ。
あの国王、久しぶりに会ったら性格がはっちゃけてしまっていた。
「程よく正当防衛、チョイと八つ当たり。妖精たちの罰のオマケ付き」
「聖魔師のエミリアさんは、相手を殺さなければ正当防衛が主張できます」
「じゃあ、徹底的に正当防衛、ドカンッと八つ当たり。妖精たちの罰に騰蛇の神罰付き」
カタカタと小さな振動が起きた。
「あ、騰蛇が喜んでる」
「それは良かったです。好きなだけ暴れてストレス発散してきてください」
ルヴィアンカの言葉にダイバとシーズルが顔を見合わせた。
「おい、国王がエミリアの男版に見えてきたぞ」
「いや、外見は違うが中身がにている」
「この国、大丈夫か?」
「側近たちが止められなければ『第二のダンジョン都市』だ」
「あ、それは面白そうですね」
「植物が多くなって過ごしやすくなれば妖精たちが住み着くよ」
「それはいいことじゃないですか」
目を輝かせていうルヴィアンカにダイバとシーズルが頭を抱えていた。
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