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第七章
第275話
しおりを挟む「……むずかしい」
ルブランは妖精たちと同調するのに時間がかかっていた。焦れば焦るほど心が乱れてしまう。
「お父さん、頑張って!」
そんな父親の気持ちに気付かない子供の声援に、ルブランの心が掻き乱されてしまう。
「ルブラン。ちょっと休憩して」
私の声で、妖精たちから手を離したルブランがゆっくり草原に座る。
「じゃあ、面白いことしてあげようか」
「なに?」
「何をするの?」
私の言葉に目を輝かせる子供たち。
「ちょっと見ててね」
そういうと風の妖精が光って私と同調する。
「うわあ!」
私の外見が『銀色のポニーテール姿』になったのを見て、子供たちが歓声をあげる。そう、これが『乗り移らせる』という方法だ。もちろん私に主導権がある。この状態で風の魔法も妖精の妖力も使える。
「これで魔法を使えば妖精は簡単に使い方を身につける。でもね、これでは魔法の加減がわからないから危険でもあるんだよ」
「なんでー?」
「使う私の魔力が基本だからね。小さな妖精が大きな私と同じだけの魔力を使うのはむずかしいの。ほら、二人が頑張ってもお父さんやお母さんみたいに何でもできないでしょう? それと一緒だよ」
私の言葉に「「そっかー」」と声を揃える子供たち。
ぴょん、と私から風の妖精が離れると、私は元の姿に戻った。
「じゃあ、今度は妖精二人との同調術ね」
そういうと、右手に水の妖精。左手に光の妖精がくっついて同調術を開始する。それを安定させると二人が空に手を伸ばした。それにあわせて虹があらわれる。風と地の妖精が手を繋いで目を閉じると、空からピンク色やオレンジ色の花びらが降ってきた。
「わあ!」
「すご~い!」
「虹は水と光の妖精たち。花びら吹雪は風と地の妖精たちよ」
「……きれいだわ」
「ああ」
子供たちの声に続けてフローリアとルブランの声も聞こえた。
「こらこら。ルブランは自分でできるようになりなさい」
「自分にもできるでしょうか?」
「できるわよ。これは妖精と心を通わせられる聖魔師だからできることなんだから」
「パパ、がんばって」
「お父さんならできるよ」
子供たちの声援にルブランの妖精たちも《 できるよ 》と頷いている。しかし、ルブランの表情はさえない。
「……ルブラン、もしかして『同調すること』が怖い? 自分が乗っ取られると思ってる? それとも、心に隠したことや思ったことが覗かれるって思ってる?」
私の言葉に一瞬身体が揺れた。
「ああ、やっぱりね」
「……すみません」
『同調』と聞いて、まずそう思うのだろう。
実は私も同調術を教わってるときに、ギャグでそのやりとりがあった。
「えー、私の考えてることが読まれちゃう?」
《 そんなことないって 》
《 じゃあ、今なにを考えているの? 》
「……美味しそうだな~、ジュルリ」
チラリと光の妖精を見ながらヨダレを拭うマネをしながらいうと、みんなの視線も光の妖精に集中する。
《 ちょっと! 私は美味しくないってー! 》
ペロン
《 きゃー! 》
光の妖精の背後から近寄っていた白虎が、光の妖精を軽く舐めたことで悲鳴をあげた。
「ば~い、白虎の心の声をアフレコしてました♪」
ガウガウ
《 白虎が『味見したけど美味しくない』だって 》
白虎の声を通訳した水の妖精の言葉に全員が爆笑した。
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