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第七章
第248話
しおりを挟む「わざわざ聖魔師様御自ら愚息をお連れいただけるとは」
ニヤニヤ笑う男とニタニタ笑う男たち。そしてニコニコ笑う女たちにヘラヘラ笑うその他もろもろ。
ここは王城の中庭。そのど真ん中に『聖魔士くずれの元王子』が眠る檻を置いた。
「どうぞこちらへ。聖魔師様を歓迎して……」
「部屋もご用意させていただいております。気に入った女がおりましたらどうぞお連れして……」
「コイツはミスリアの母親と交換だったはずだ。彼女はどうした?」
「はて? そのような条件を我々は存じませんな」
ニヤつきながら「さあ、どのような女が好みですかな?」といってくる男。収納カバンから一振りの剣を取り出し、鞘を取ると鋒を男の首に向けた剣に光魔法で雷を纏わせる。
「……ヘェ~。この聖魔師を前にしてそのような戯言が通じると思っておるのか」
「あ、わわわわ……。おた、お助けを……」
「許さぬ!」
鋒を地面に突き刺すと剣を中心に光が蜘蛛の巣状に走った。
《 エミリア。言われた通りに結界石を置いてきたよ 》
《 エミリア。ミスリアの母親、やっぱり口封じで殺されるところだった 》
《 ミスリアのところに送ったからもう大丈夫 》
《 エミリア。言われた通り、『悪くない人たち』は城の外へ追い出したよ 》
「上々。っつーことで……‼︎」
深呼吸をして息を大きく吸うと、地面に突き刺さった剣にさらに魔力を流す。魔力の素である魔素を大きく吸い込んでためた魔力を息を吐くように剣に流すことで、地面に広がった蜘蛛の巣の光が強くなっていく。
『静電気』
「「「ギャァァァァァ!!!」」」
「「「キャァァァァァ!!!」」」
「「「アガガガガガガ……」」」
細く長く苦しめるために魔力を調節しながら流しているが……。うーん、残念。アニメのように体内が見えたり、クリスマスツリーの豆電球のように点滅するんじゃないかと内心楽しみにしてたのに……
「地面、濡らした方が効果バツグンだったかなー?」
《 ちょっと、エミリア。そんなことしたら『鉄の心臓』を誇るここの連中でも死ぬから 》
風の妖精に苦笑された。
「鉄の心臓なら、もっと効果がありそうだよね」
《 そんなことより。エミリア、もう帰ろう 》
《 みんながご飯を用意して待ってるよ 》
「そうだね。ひと仕事したからお腹ペコペコ」
運よく、気絶せずに済んだ王族や貴族たちもいる。彼らは私の周りにいる聖魔たちに目を丸くしている。いま一緒にいるのは妖精たちと契約していない妖精たちの仲間たち。そして白虎やピピンとリリン……のほかに、キマイラたち神獣四体。
ついてきたんだよ、キマイラたち。
「っていうかー! なんで、妖精たちと一緒に『妖精の輪』できてるんだよー!」
《 だって~、一緒にいくといって聞かないんだもん! 》
《 みんなが連れてきたんだよ。私たちは止めたよ! 》
この『みんな』は、私と契約していない妖精たちだ。妖精たちが檻の中にいる神獣たちに会いにいけるようにってしていたのが裏目にでたようだ。その神獣たちは久しぶりに元の大きさに戻れて嬉しそうにしている。
「こら、そこ! つまみ食いは禁止!」
「ヒ、エェ……」
わざと気絶していない貴族の後方から近付いて嘴を開いていたキマイラ。私に注意されると目尻を下げて、貴族の顔をベロリと舐めあげた。貴族は振り向いて少しずつ上を向き……見えたのはキマイラが大きく開いた口。そして舐められて、白目をむいて泡を吹いて意識を手放した。
実際に魔物に襲われた時に気絶なんかしたら、美味しくいただかれて…………
「不味いっ! ペッペッ」
神獣は美食家のようで、食べてもらえない可能性のほうが高そうだ。
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