79 / 789
第四章
第92話
しおりを挟む「ところで。エアさん。此処に国王や主だった重鎮が揃っているということは、エアさんが交渉人だと気付かれたのですか?」
「いえ・・・。それが、その・・・」
「それとは関係なく国王に襲われたらしい」
「それは一体どういうことなのかしら?」
「「 エリー!」」
声がした方を見ると、『大変怒っています』というより『大魔神降臨』に近い状態のエリーさんが立っていました。
「エリーさん!」
「もう大丈夫よ。国王から、今回の件に関する『すべての権限』を捥ぎ取ってきたから」
エリーさんは、駆け寄った私を抱きしめて、慰めるように背中を撫でてくれました。それだけで、張っていた緊張の糸が切れて、涙が溢れて止まらなくなってしまいました。
「・・・早かったな」
「当たり前でしょ?それで?アルマンから『エアちゃんが連れ去られて監禁されている』と聞いたけど」
「悪い。俺とあの子らは、交渉人と勘違いした連中に城の一室に通されたんだ。だから詳しくは知らない」
「俺たちは城の外にいた。エアさんが城の外で弱って倒れている人たちに『補水液』を渡していたんだが、回復した人を見た城の連中に連れ去られた。エアさんにつけていたネージュの話だと、俺たちに罪を着せて皆殺しにすると脅されたエアさんは、ネージュを逃して自分ひとりだけで城に入って行ったらしい」
「・・・そう。エアちゃん、ひとりで良く頑張ったわ」
エリーさんの、私を抱きしめる力が強くなりました。そんなエリーさんにさらに強くしがみつくと、「もう大丈夫よ。あとは任せて」といってくれます。さきほど『国王から今回の件に関する『すべての権限』を捥ぎ取ってきた』と言っていました。
・・・何をするつもりなのでしょう。
「改めて。私は交渉代理人のエリーです」
「同じく交渉代理人のキッカです」
キッカさんとエリーさんは挨拶をしてから『交渉終了』を宣言しました。セイマール側は何も言えません。
交渉人である私をこの部屋に監禁しただけでなく、国王自ら襲い掛かったのですから。
ちなみに現在、私はアルマンさんの張った結界の中です。アルマンさんは『結界の外』にいます。セイマール側の暴走を止めるためです。
そして国王たちは・・・。
「おねえちゃんをイジメた わるいヤツには『せいぎのてっつい』だー!」
「おねえちゃんをなかせた わるいヤツには『せいぎのキーック』」
「「 ぎゃあぁぁぁぁ!!!」」
エリーさんから『教育的指導』を任された双子に遊ばれていました。
「エアさん。お迎えが来ましたよ。此処はエリーたちに任せて、エアさんは馬車に戻ってテントの中に入ってて下さい」
「エアちゃん。結界を張るの忘れないで。いい?明日の昼まで『話し合い』をするから、出て来ちゃダメよ」
「終わったら連絡します。それまで絶対出ないで下さい」
「・・・ごはんは?」
「そうですね。俺たち三人だけ別で」
「エアちゃん。リクエスト。牛肉のカレー。甘口。アルコールのサングリア。フルーツポンチ」
「俺はシーフードカレー。辛口。同じくアルコールのサングリア。アップルパイ」
「じゃあ俺は豚肉のカレー。辛口。ベリーのラッシー。フルーツパフェ。それとは別に磯辺巻き300追加で」
「アルマン・・・。エアちゃん。いい加減アルマンから磯辺巻きの代金、支払って貰いなさい」
「え?」
「エアちゃん。『え?』じゃないでしょう。いくら何でも多すぎよ」
「・・・ですが、豆腐などポンタくんたち職人さんたちから私に届く食材の代金は、アルマンさんが払ってくれていますよ?」
「え?!何時から?!」
「王都に戻って磯辺巻きをリクエスト始めた時からだな」
「でも300個って・・・」
「あ、違います。『300個 』ではなく『300皿』です。ひと皿7個ですから2,100個ですね」
「「 アルマン!!」」
あら?アルマンさんが、目を吊り上げたエリーさんとキッカさんに詰め寄られています。
「アルマンさん。お皿が足りませんよ?」
「お?300枚じゃなかったか?」
「200枚です」
「じゃあ、200で」
「分かりました」
「『分かりました』じゃないでしょ!エアちゃん!何時の間にアルマンとフレンド登録したのよ!」
「・・・少し前、です。『おもしろ写真』を撮ったので。キッカさん経由で送ろうと思ったんですが」
「俺がすぐに見たかったからな」
「え?何コレ?」
「コレって、其処の連中?・・・何というか」
ああ。私がアルマンさんに送った写真を二人に送ったんですね。
「アルマンさん。笑い転げていました」
「そ、そうね。・・・プッ。悪いけど・・・みっともないわね」
「ええ。これが『この国の重鎮の本当の姿』だなんて・・・」
「そいつが欲しくてな。まあ、俺がフレンドになっても大したことには使わないからな」
「・・・わかったわ。さあ、エアちゃん。ちゃんと安全なテントの中にいてね」
「シルオール。アクアたちは『お楽しみ中』だから、このまま俺たちの所に置いておく。エアさんのことは任せたぞ」
「はい。ではエアさん行きましょう」
シルオールさんに促されて、私は城を出ました。お城の前に置いている馬車の前でネージュさんが大泣きしてて、私の姿を見ると「無事で良かったですー!」「守れなくてすみませんでしたー!」と泣きじゃくっていました。
「ネージュさんがアルマンさんに教えに行ってくれたから、私は無事だったんですよ。ありがとうございます」
「いえ・・・。あの男を斬ってでもエアさんを守るべきでした」
「・・・斬ってたら、大問題ですよ」
「ネージュ。・・・何故かエリーが駆けつけていた」
あれ?エリーさんは『入り口』から入ったわけではないようです。
「エアさん。テントの中に入っててください」
「はい。分かりました。・・・あ、あとでカレーを渡しますね。キッカさんたちは話し合いがあるので、中で食べるそうです」
「分かりました。今度こそ間違いなくお守りしますので、ご安心ください」
「はい。お願いします」
此方の皆さんには、カレーは全種類出しましょう。そうです。此処に残っている人たちは私とフレンド登録していないので送れないのです。そして早く渡したら、今から『カレーパーティー』が始まるでしょう。
そうなったら、エリーさんの怒りの矛先が皆さんに向いてしまいます。それだけは全力で避けないといけません。
61
お気に入りに追加
8,041
あなたにおすすめの小説
私は聖女になる気はありません。
アーエル
ファンタジー
祖母は国を救った『元・聖女』。
そんな家に生まれたレリーナだったが、『救国の聖女の末裔』には特権が許されている。
『聖女候補を辞退出来る』という特権だ。
「今の生活に満足してる」
そんなレリーナと村の人たちのほのぼのスローライフ・・・になるはずです
小説家になろう さん
カクヨム さん
でも公開しています
異世界追放《完結》
アーエル
ファンタジー
召喚された少女は世界の役に立つ。
この世界に残すことで自分たちの役に立つ。
だったら元の世界に戻れないようにすればいい。
神が邪魔をしようと本人が望まなかろうと。
操ってしまえば良い。
……そんな世界がありました。
他社でも公開
団長サマの幼馴染が聖女の座をよこせというので譲ってあげました
毒島醜女
ファンタジー
※某ちゃんねる風創作
『魔力掲示板』
特定の魔法陣を描けば老若男女、貧富の差関係なくアクセスできる掲示板。ビジネスの情報交換、政治の議論、それだけでなく世間話のようなフランクなものまで存在する。
平民レベルの微力な魔力でも打ち込めるものから、貴族クラスの魔力を有するものしか開けないものから多種多様である。勿論そういった身分に関わらずに交流できる掲示板もある。
今日もまた、掲示板は悲喜こもごもに賑わっていた――
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜
𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。
だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。
「もっと早く癒せよ! このグズが!」
「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」
「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」
また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、
「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」
「チッ。あの能無しのせいで……」
頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。
もう我慢ならない!
聖女さんは、とうとう怒った。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。