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第三章

第61話

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「じゃあ・・・今のこの町のこと。そして此処を襲った連中などのことを話すわね」

まず最初に『この部屋を襲った者たち』から。
襲った者たちは昨日聞いた通り、この町の守備隊が漏らした『冒険者がレアな虫草を大量に持っている。それを町長に高額で売却している。自分たちがその虫草を奪えば遊んで暮らせる』と言う情報を聞いた人たちが集まった集団だったようです。
では『誰が漏らした』のか。
守備隊側で漏洩させたものはすでに牢に入っている。では『守備隊隊員に漏らした』のは誰か。
それは庁舎の経理部の書記官だった。バーで酔った勢いで漏らしたようです。

「『今までの1.5倍で売って欲しい』って言ってきたけど追い返したわよ。「巫山戯んな!」と怒鳴りつけてね」

「凄いわよ。「此方コッチ下手したてに出てれば図に乗りやがって」「わざわざ『買ってやる』って言ってるんだ!」「ただで済むと思ってるのか!」って怒鳴ってきたから、記録をオーガストに送っておいたわ。町内に名前と処分が公表されたわよ。まあ『恐喝罪』だからね」

ちなみに処分は、情報漏洩した職員は規約通りに解雇クビ。それとは別に『最短三ヶ月から最長五年間の無給処分』。ほとんどが経理部の上、謝罪ではなく殴り込み。そのため庁舎の人事管理部が連帯で責任を負うことになりました。
そのような者たちを採用し、職員として配置したのが人事管理部なのです。

こういう犯罪で連帯責任を取らせるのは、『自分の言動が多数の人を巻き込む』と分からせるため・・・『見せしめ』のため。
中には、知らない人の罪で両親や親戚が巻き込まれて奴隷になり、身寄りをなくした子もいます。そんな子は罪を憎み、不正を憎む。そして、庁舎などの『高み』を目指す。「上に立ち改革をする」目標があるからです。
このルーフォートの庁舎にもその心を持つ職員はいます。そんな彼らから町長へ報告が入り、すぐに『殴り込みに向かった者たち』は経理部から追放された。そのため、経理部や人事部の業務に支障はないそうです。

すべての役職経理部肩書き書記官を失い、雑用係にまで堕ちた彼らだったが、それでも『庁舎勤務』という、残された唯一の肩書きに縋り付いて生きていく道を選んだようです。

「最長五年の無給って一体誰が・・・?」

「オーガストよ」

「彼らの町長だからね。止められなかったことを悔やんでいたわ」

そして『実行者たち』は守備隊の牢でお互い罵り合っていたそうです。ちなみに実行者対守備隊隊員だそうです。
現在は彼らが『虫草を強奪しようとしたために自分たちが危機にあっている』と後ろ指をさされながら、松明やキャンプファイヤーの組み立てなどをしているそうです。

「それで許されると思っているけど・・・王都に運ばれればちゃんと罪を問われて罰を受けるわね。大体、私欲で女性を襲ったんだからね。まだ家族まで同罪にならなかっただけ、ありがたいと思って欲しいわ」

でも、今の危機を招いたとして、家族は針の筵でしょう。




「ねえ。聞いてもいいですか?」

「何かしら?」

「現在はどうなっているのですか?」

「・・・町の中に虫が溢れているわ。だから、人々は家に閉じこもっている。今は松明にも果実や酒を入れているわ」

「オーガストがね。『最終手段は、この町を燃やすことも考えている』って宣言したの。焼き尽くして、『新しいルーフォート』を作るのもいいだろうって」

「そこまで追い詰められているのですか?」

私の言葉に顔を見合わせていますが、誰も口を開きません。

「虫草を使いますか?」

「いいえ。今のこの町は『自業自得』でしかないわ」

「困ったことにね。オーガストと一部の人たちしか謝罪にこなかったの。残りはお互いを責めるだけ・・・」

「・・・虫草を渡します。此処から私たちが無事に出られるようになるには、虫を倒すしかないですから」

「エアちゃん。いいの?」

アンジーさんの質問に頷くと、何故か誰もが表情を歪めました。

「その代わり、今まで通り町の人たちにさせて下さい。もちろん家に隠れている人たちも。この町全員で『町を守る』気がないなら、二度と虫草を渡しません」

「分かったわ。ちゃんと代金は支払わせる。その代わり虫草は三千本でいいわ」

「え?それでは・・・」

「まずは『お試し』よ。彼らにやる気があるか。生きる気があるか」

「・・・分かりました」

三千本の虫草を出すと、フォスターさんとネージュさんが受け取り部屋を出て行きました。

「フォスターさん、大丈夫ですか?」

「はい。今はもう大丈夫です」

フォスターさんに具合を聞いたら、そう返ってきました。もう安心のようです。




「時々、チャットが繋がるのですが・・・まだ不安定ですね」

「え?そうなの?」

「はい。チャットだけでメールと通話は使えません。チャットも2分あるかないか、という短時間です。チャットの画面を開けたら使えなかったりしますが・・・」

私の言葉に何人かがステータス画面を開いたようです。

「ウワッ!チャットを開いたら『現在使えません』の表示が出た!」

「え?俺の開かなかったぞ」

同時に開いていても違うようです。

「でも、分かったわね。『少しずつ状況は良くなっている』って」

「そうね。ってエアちゃん!何?」

「虫草・・・送っておきました」

「送れたの?」

「プレゼントが開いたから送ってみました」

「だからって五万本は多すぎでしょ?!」

「でも、なくなる度に出てくるか分からない私を待ってるの?」

「・・・そうね。じゃあ、エリー。預かっていて」

「分かったわ。使わなかった分はポンタに売るわ。エアちゃんもそれでいいわね」


エリーさんの言葉に私は頷きました。
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