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第三章
第42話
しおりを挟むこのオルスタ村には病院がある。
医学の智識を持った『医者』と、その補助をする『看護師』。そして『薬学師』。この職業を作ったのはナシードと共に村に移った側近たちだ。騎士団でも医学の知識は持っている。それだけでなく、軍医として就いていた側近もいるのだ。
この村では、治療はレリーナの先祖が薬で回復出来ない村人を神官のモーリスが『神のちから』で回復させていた。
「私に宿った『聖なるちから』は私の時間を止めて、誰も私に関して『気付かない』もの。逆に『神のちから』は神官時代から持っていました」
「私も新官職のままこの村に来ました。ですから同じ『神のちから』を持っています」
モーリスの言葉に、神官長だったユリナスも頷いた。ユリナスは神殿の一室で神官として暮らしている。村のみんなからは『オルガの養父』として認識されており、ユーリカたちからは「おじいちゃん」と呼ばれて幸せな日々を過ごしている。
「なあ。なんで『薬剤師』や『調剤師』じゃないんだ?」
「そのどちらも『医者の指示で薬を調合する』職業です。ですが、この村に必要とされているのはレリーナさんのような『薬屋』です」
「それに、病院併設にしてしまっては『軽度な治療』が出来ません。「医者の診療を受けてから」では、熱を出したり初期の風邪をひいた。『どっかのバカ』みたいに体力が足りないのに張り切り過ぎて筋肉痛を起こしてシップが必要になった場合でも、病院を通すおつもりですか?」
『どっかのバカ』と言われて、目を逸らした男がひとり。
「お前のことだ、ナシード」
「分かってる!」
「あ?目を逸らしたから気付いていないのかと思ったぞ」
シュリの言葉に周りはクスクスと堪える気のない笑いを溢していた。
「・・・コホン。まあいい。それでこの『助産師』とはなんだ?」
「ああ。それは『産婆』です。これはシュリさんのお母様のように『人の出産を手助けする先生』という所から名付けました。女性たちの出産関係の課を作ろうと思っています」
「それはいい考えです。胎児の声が聞こえる『聖なるちから』もあるようですから。それでしたらレリーナさんの時みたいに家で倒れることもないでしょう」
モーリスの言葉にシュリの表情が曇る。
「シュリ」
「大丈夫だ。・・・あんな恐怖は二度と味わいたくないし・・・誰にも味わって欲しくない」
「ああ。分かってる。そのために『出来ることをする』んだ。・・・この辺はニーナさんに任せたほうがいいだろう。シュリ。ニーナさんに相談してもらえるか?」
「分かった」
シュリの母のように、一般の人ですら責任者としてこの村を支えている。
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これからもよろしくお願いします。
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