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第三章

第37話

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「いいか?どんなことがあっても『大騒ぎしていい』とは限らないんだ。重要な話を聞いて声をあげる者を信用すると思うか?」

「・・・思いません」

職員室でミリアーナはナシードから説教の最中だ。『聖なるちから』で授業が中断したことで大騒ぎしたミリアーナがお説教を受けているのだ。ミリアーナにとって、これは一番の罰になる。
職員室には祖父母と父が教員としているのだ。その前で他の教員から叱られているのを見られているのだ。ミリアーナは恥ずかしさで顔が真っ赤だ。

「良いか?今回のことで怒られるのはミリアーナだけではない。通信部のカリファとエンディも叱られているんだ。カリファから通信を受けたエンディが教室を飛び出して放送部に駆け込んで『あの放送』を流した。それで授業が終わった。先生の中には事前に段取りをして授業を進めているんだ。それを無駄にしたんだぞ。・・・ですよね。ジェリン先生」

話が自分に向けられて苦笑する。

「ミリアーナ。授業終了まで我慢出来なかったのか?」

「・・・ごめんなさい。ユーリカの『嬉しい』って感情も一緒に流れて来ちゃって・・・。自分のことのように嬉しいって思っちゃって」

「ふむ・・・。ナシード先生。これは問題だな」

「やはりそう思うか?」

「違うの!ユーリカは悪くないの!私が悪いの!だからユーリカを叱らないで!」

先生二人の重々しい会話に、ミリアーナは焦っていた。自分のせいで親友が叱られてしまうと思ったのだろう。

「ミリアーナ」

「ごめんなさい!全部私が悪いの!だからユーリカを叱らないで!・・・おねが、い」

「ミリアーナ。落ち着きなさい」

最後はもう泣き叫んでいるミリアーナの耳に、誰の声も届かない。

「落ち着け!」

ミリアーナの頭を両側から手で挟んだジュリンが『聖なるちから』を使ってミリアーナの脳に直接声をかける。一瞬でミリアーナは泣き止んだ。

「ミリアーナ。ユーリカを叱ることはない。だが『感情が流れる』ことは誰にでもあるが、『受け取る側も同じ感情になる』のは問題なんだよ」

「ミリアーナ。もしユーリカが怒っていたらミリアーナまで怒り出してしまう。その矛先が『関係ない人』に向けられる可能性もあるんだ。ミリアーナ。もし家でいかりの感情を受けたら、レリーナや弟妹にその怒りを向けるのか?」

ナシードの言葉に「イヤ・・・ママたちを傷つけたくない」と泣き出すミリアーナ。

「ああ。そうだ。『ミリアーナとユーリカを傷つけて泣かさない』ために特訓が必要になる。ただ今すぐに考えられる方法が見つからない。そのため調査と試験を受けてもらう。ミリアーナの感情がユーリカに届くのかも調べないと、な。出来るか?」

「うん。頑張る」

ミリアーナは何度も頷いた。
その様子を見た教員たちは、『他にも相手の感情に揺さぶられる『受け手』がいる』可能性を考えて、新たに調査を行うことを決めた。
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