上 下
2 / 13

2

しおりを挟む

翌日、学園は休日。
学園は授業が休みでも喫茶室やテラスは開いている。
サロンでは仲良し令嬢たちの小規模なお茶会も開かれていた。

そこでは色々な話が話題にあがった。
そのテーマはすべて同じで……寮生は誰もが知ることとなり、お茶会で話を聞いた通学生も家族にそれを話した。

翌々日は八割の大人も休日。
天気も良く、貴婦人たちの優雅なお茶会が開かれた。
そこでも話はみんな同じ。
こうして、二日間の間に事実とちょっぴりの目撃情報スパイスに出どころ不明の噂が振りかけられたオードブルがどのお茶会でも振る舞われた。


そうして、ごく一部だけが何も知らないまま学業に、就業に時間を過ごしていた。

「恥ずかしげもなく授業に出られているなんて……」
「ええ、フェリア様は恥ずかしくて授業に出られないと嘆いておられますわ」
「まあ……それはお可哀想に」

あちらこちらで何か話をしている。
それも自分を見て。
しかし、フェリアが恥ずかしくて授業に出られないといっているということは、エバンス本人は言葉を濁していたが上手く既成事実が作れたということだろう。
頭を打っていたみたいだから、行為を覚えていないとか?
まあ、それもフェリアをエバンスの家に嫁がせれば思い出せるだろう。

疎ましいフェリアを寮生として押し込んで部屋を奪ってアクセサリーを奪い取ってやった。
幼児体型のフェリアが着ていたドレスは私に合わないから捨てさせた。
いま思えば、あのドレスを下取りにして新しいドレスを仕立ててもらえばよかった。
レースや宝石はいいものだったし、生地もそれ相応のものを使っていた。

部屋を奪ったことで家には帰ることもできず、父親に『エバンスに押し倒された』と言い出せないようだ。
だったら、優しい姉わたしから父に話してあげよう。
そんな嬉しい気分のセリーナに、勇気を出して近寄った女生徒がいた。

「セリーナ様、お伺いしても宜しくて?」
「何をかしら?」
「先週末に、その……エバンス様と、特殊教室で……。このようなことを女性の方に直接お尋ねするのは失礼だと存じております。ですが、その……エバンス様はしばらく休まれるそうなので……」

彼女が聞きたいのはエバンスとフェリアとの既成事実があったか、だろう。
エバンスの話でははっきりしないが、そんなこと彼女たちには真実かわからない。
既成事実なんか後からでも作れる。
その前に噂で動けなくしてやるのも『既成事実のお膳立て』になる。
それに姉の私が既成事実を認めてしまえば、フェリアに逃げ道はなくなる。
セリーナはそう考えると、恥ずかしそうに微笑んだ。

「ええ、エバンス様とのことは事実ですわ」
「そ、そうだったのですか」
「ええ、ですから今日にでも父に直接お話させていただきますわ」
「まあ、それはおめでとうございます」
「ありがとうございます」

このとき、セリーナは大きな勘違いをしていた。
そしてそれは、エバンスとセリーナの足下で地獄のフタが少しだけ開いた瞬間だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

突然伯爵令嬢になってお姉様が出来ました!え、家の義父もお姉様の婚約者もクズしかいなくない??

シャチ
ファンタジー
母の再婚で伯爵令嬢になってしまったアリアは、とっても素敵なお姉様が出来たのに、実の母も含めて、家族がクズ過ぎるし、素敵なお姉様の婚約者すらとんでもない人物。 何とかお姉様を救わなくては! 日曜学校で文字書き計算を習っていたアリアは、お仕事を手伝いながらお姉様を何とか手助けする! 小説家になろうで日間総合1位を取れました~ 転載防止のためにこちらでも投稿します。

どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」 「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」  私は思わずそう言った。  だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。  ***  私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。  お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。  だから父からも煙たがられているのは自覚があった。  しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。  「必ず仕返ししてやろう」って。  そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。

神のみぞ知る《完結》

アーエル
恋愛
『隣国に民に愛されし公爵令嬢あり』 そんな言葉を聞いたのは嫌われ王太子 彼は策を講じた それが国の崩壊を導くとも知らず 国は滅ぶ。 愚か者の浅はかな言動により。 他社でも公開

婚約破棄?それならこの国を返して頂きます

Ruhuna
ファンタジー
大陸の西側に位置するアルティマ王国 500年の時を経てその国は元の国へと返り咲くために時が動き出すーーー 根暗公爵の娘と、笑われていたマーガレット・ウィンザーは婚約者であるナラード・アルティマから婚約破棄されたことで反撃を開始した

異世界追放《完結》

アーエル
ファンタジー
召喚された少女は世界の役に立つ。 この世界に残すことで自分たちの役に立つ。 だったら元の世界に戻れないようにすればいい。 神が邪魔をしようと本人が望まなかろうと。 操ってしまえば良い。 ……そんな世界がありました。 他社でも公開

愚者による愚行と愚策の結果……《完結》

アーエル
ファンタジー
その愚者は無知だった。 それが転落の始まり……ではなかった。 本当の愚者は誰だったのか。 誰を相手にしていたのか。 後悔は……してもし足りない。 全13話 ‪☆他社でも公開します

【完結】慈愛の聖女様は、告げました。

BBやっこ
ファンタジー
1.契約を自分勝手に曲げた王子の誓いは、どうなるのでしょう? 2.非道を働いた者たちへ告げる聖女の言葉は? 3.私は誓い、祈りましょう。 ずっと修行を教えを受けたままに、慈愛を持って。 しかし。、誰のためのものなのでしょう?戸惑いも悲しみも成長の糧に。 後に、慈愛の聖女と言われる少女の羽化の時。

処理中です...