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第十章

第223話

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「ご主人さま、戦ったの見てどう思った?
まだ『ご主人さまは弱い』って思う?」

「いえ・・・そのようなことは・・・」

「でも、『戦う前』にスゥが言ったよね。
「ご主人の足下にも及びません」って。
「そのうち分かる」とも言ったよね。
それでもご主人さまを見下していたの?
・・・・・・私よりも弱いのに」

ルーナの最後の言葉は小さく呟いただけだったが、無音の結界内では2人には十分大きく聞こえた。

自分たちはズルをしてきたため、レベルと実力が伴っていない。
それは指摘された。注意を受けた。
だからこそ、両翼で弱い魔物を受け持っている。
それでも、中央を任されているスゥが多めに負担してくれている。
・・・・・・それでも足手まといになっている。
その自覚はある。
だから、認めたくなかった。
『ろくに戦わないヒナルクさんよりも弱い』なんて。
いえ。私たちは信じたくなかった。
『目の前の可愛い少年が獣人より強い』なんて。


「ご主人は強いです。
ですが、弱い私たちと一緒に前線で戦っても、私たちのためになりません。
そのため、ご主人は私たちに実戦させることで実力をつけさせてくれています」

「実は、私も貴女たちと同じ・・・いいえ。もっと酷くご主人様を見下していました。
何度注意されても私はご主人様をバカにしていました。
それでもご主人様も師匠も私たちを見捨てず、『共闘』という形でもう一度やり直すことを許して下さいました。
お二人は以前の私です。
ご主人様を見下してバカにしていた頃の」

「私たちが初めて会った時・・・ご主人も師匠も『お二人のこと』に気付いていました。
私は『先入観をもって人を見てはいけない』とご主人に教わりました。
『自分の目で直接見て、直接聞いて、自分自身で考えて答えを出しなさい。
たとえそれが少数の意見だとしても、自分で導き出した答えなら信じなさい。
間違いだと気付いたら、すぐに謝罪して『正しい答え』に身を置きなさい。
恥ずべきなのは、間違いに気付いてもそれを認めないココロだ。
勇気とは、間違いを認めて謝罪することだ。
そして、自分の行動には最後まで責任を持ちなさい』
私はご主人の言葉を理解出来ていませんでした。
そんな私に何も教えず、『私が助けたい』と願ったからあの時ご主人も師匠も許して下さったのです。
ご主人の言葉の意味を知ったのは、夜、私の身の振り方を考えていた時です。
すべて考えて、自分で答えを導き出し、私は『今の立ち位置』を選びました」

シーナとスゥの告白に、ジョシュアたちは目を丸くする。
『恥ずべきなのは、間違いに気付いてもそれを認めないココロ。
勇気とは、間違いを認めて謝罪すること』
それは今の自分たちにも当てはまることじゃないか。

「・・・ごめんなさい。私が間違っていた。
ううん。違うわ。
私たちは二度も助けられたのに。
前回だって失礼なことしたのに。
その時の礼もしていないし謝罪もしていない。
・・・スゥ。貴女にも酷いことを言ったわ。
本当にごめんなさい」

「私は・・・ジョルトの仕出かしたことを聞いたわ。
その被害者が獣人だって言うことも。
だから目の前に現れた獣人あなたが・・・嫌だった。
怖いとかではなく、弟の仕出かした罪を責められているようで・・・
本当に。本当にごめんなさい」

ジョアンナの言葉に合わせて2人はスゥに額を地面にこすり付けて謝罪した。
本当に、自分たちは何をしているのか。
改めて思い返すと恥ずべき行為しか思い返せなかった。
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