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第七章

第104話

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「・・・・・・『これ』は一体どういうことなのか説明して下さい」



下の酒場へおりたさくらと副隊長。
しかし酒場も『ひどい有り様』だった。


「良かった!無事だったか!」


さくらの姿を見たあんちゃんの一人がさくらに駆け寄る。


「オレは何ともない。あんちゃんたちの方がボロボロじゃねーか」

「いや。俺らよりマスターが・・・」


あんちゃんの視線の先を辿ると床に直接寝ているオッチャンが目に入った。
そして、しがみついて泣きじゃくっている『オッチャンの娘』。
彼女のおかげで『私は無事』だったのだ。

・・・ごめん。ハンドくん。『魔法』つかうわ。


『水魔法なら良いですよ』


オッチャンに近付くと、泣きじゃくっていた娘さんが振り向いた。

「・・・ヒナルクさま」

「ありがとう。キミのおかげでオレは助かった」


そう。昼ごはんを食べたあとに彼女が訪室してきて『別の部屋のカギ』を渡してきたのだ。
「お休みになられる時はこちらの部屋を『絶対』にお使い下さい」と。
それだけを言って、すぐに部屋を出て行った彼女の様子がおかしかったから、『ハンドくんの1人』が護衛としてコッソリついていった。
すぐに宿屋を出てどこかへ出かけた所までは知ってたけど・・・
アクビしてるのに気付かれて、ハンドくんに寝るように言われちゃった。


〖 ご飯もデザートも食べたのですから、もうお休み下さい 〗
〖 夜ご飯が遅くなればデザートはナシですよ 〗


そう言われて、あてがわれた部屋に入ったらそのまま寝ちゃったんだった。
起きたときに『真っ暗』だったし、寝ぼけていたから『部屋が変わってる』のを忘れてパニックになるし・・・
『大きな音』が怖かったし、ハンドくんはナデナデ止めちゃったから怖かったし・・・


『少しでも物音をたてたら『隠れている意味』がないですからね』


・・・『隠れてた』のも忘れてたの。


でもオッチャンたちが『私を守ろう』としてケガをした。
オッチャンは鑑定魔法でHP体力がもう・・・・・・
『神官』たちが来るのなんて待ってられなかった。

オッチャンの隣に膝をつく。
『床に広がった血の海』がオッチャンの生命が尽きようとしていることを証明している。


「ヒナルク様!立ってください!」


血で汚れます!と言われたが、そんなもん『オッチャンの生命』が消えかかってるのに気にしてる方がおかしいだろ。


「助けてくれてありがとな」


私がもう一度そう言うと、彼女は俯いて首を左右に振る。


「オッチャン。いつも美味いメシ食わせてくれてありがとな」


私がそう言うと、声が聞こえたのかニヤリと笑ってくれた。


「だから。これが『オレからの礼』な」


オッチャンの上に重ねた両手を翳して『水の回復魔法』を発動させる。




・・・・・・ぴちゃん。

雫が一滴、水面に落ちる音がした。
すると『水の波紋』が、目を閉じているさくらを中心に『宿屋全体』の床に広がっていく。
まるで『柔らかい空気』が水色の光となって、波のように繰り返し広がっていく。
その波が金色に輝くと、あんちゃんたちのキズが次々と消え、痛みも軽くなり、そして消えていった。
床に横になり『忍び寄る死』を覚悟していたオッチャンのキズもみるみる塞がっていった。





この『奇跡のような光景』は神殿の手で『秘匿』とされた。





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