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第七章

第96話

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奴隷商人の警護に向かった別の警備隊員たちは、奴隷たちを乗せた奴隷商人と無事に合流出来た。
商人の話では、街道で男たち2人を捕えた『青色の髪』をした小柄な少年が「『犯罪奴隷』を捕まえた」と声を掛けてきた。
確認のため2人を鑑定石で確認したら、間違いなく『犯罪奴隷に落ちるだけの罪を犯した者』だった。
そのため、正規の手続きをして2人は『犯罪奴隷』として買い取った。
『正規の手続き』と言っても、鑑定石で罪状が確認されれば皮製の『隷属の首輪』を罪人に着けるだけだ。
その際に首輪に付けられた『魔石』に魔法で『現在の主人』を登録する。
『隷属の首輪』を着けられた奴隷は『日常生活以外の記憶』が消される。
主人が代わるなどで首輪を外されれば、首輪を付けていた間の記憶が奴隷から消される。
『情報が保持』されるのは、『隷属の首輪』を着けない『普通の奴隷』だけだ。
ちなみに『隷属の首輪』は『使い捨て』。
付けられている魔石が小さくて『一回きり』しか使えないからだ。

興味津々で見ていた少年に『隷属の首輪』の説明をして、奴隷2人分の金を渡した。
犯罪奴隷の金額は『罪状』によって変わる。
そしてその金額は『鑑定石』が決める。
少年から買い取った2人の金額は『金貨2,400枚』だった。





・・・国を上げて大捜索されていた『大犯罪者2人』が『青髪の少年』に無傷で捕まって『犯罪奴隷』となったニュースは、翌日には国内外に知れ渡った。
そして年二回、王都で開催される『国主催の奴隷市』の目玉出品となった。




さくらは『周りに騒がれることをした』とは思っていない。
ただ『少女たち』を助けるために『奴隷商人』の存在が必要だっただけだ。
そして、その奴隷商人を殺そうとした連中が『ジャマだったから捕まえた』だけだ。
鑑定魔法で『たくさんの罪状』があるのに気付き、ハンドくんから『『犯罪奴隷』としての資質は十分ですね』と言われた。
そして馬車で来た奴隷商人に『いらないから売り払った』。
・・・それだけなのだ。



ちなみに使った魔法は『かなダライ』だけだ。
隊長がひっくり返ったあとでハンドくんに指摘されて気付いたのだが、『金ダライ』の魔法が『レベル2』にレベルアップしていた。
だから『威力を試してみた』だけだ。
・・・呆気なく昏倒するとは思わなかったが。

それも『隷属の首輪』を着けられても、乱暴に『檻つき』の奴隷専用馬車に投げ込まれても起きなかったのだから、結構威力が強くなったのかも知れない。
今までみたいに『コントのノリ』で使えないことにさくらは落ち込んだが『大丈夫です。『犯罪者』に使えば良いのですから』とハンドくんに言われて喜んだのだった。





それより、なにより。


『お金は全部預かります』

「えー!頑張ったのにー!ごほーび!ごほーび!」


奴隷商人から貰ってすぐにアイテムボックスにしまった金貨を、麻袋ごとハンドくんに『没収』されたことの方が、さくらにとって『大問題』だった。




ちなみに・・・


『さっき頑張った『ごほうび』です』

「わーい!」



特別にアイスが3種類入ったワッフルコーンを『お昼ごはん』のあとにもらって「1個多い~♪」と喜んださくらだった。




「まったく。もう。さくらったら」


ヒナリはテレビに映ったさくらに苦笑する。

さくらが『金ダライ』の魔法で男たちを気絶させて、馬車に乗った男性に男たちを渡してお金の入った袋を受け取ったのも、馬車が去ってからハンドくんにお金の袋を取り上げられたのも見ていた。
今回は『馬車が去ってから』のさくらとハンドくんの『やりとり』だけ音声が聞こえた。
と言ってもハンドくんは『チャット』で会話してるようで『さくらの声』だけ聞こえたが。

その後は草原くさはらで『ピクニック』のようにシートを敷いた地面に座って、おにぎりやおかずを美味しそうに頬張ったあとに『ご褒美のアイス』をもらって満面の笑顔で食べだしたところで映像は途切れた。


きっとハンドくんは自分たちに『さくらの様子を見せる』ため、『外でごはん』にしたのだろう。
そしてさくらは『見られている』ことに気付いていない。
だから『のさくら』が見られるのだろう。


部屋の中には『結界』が張られているため、さくらの様子を見ることができないのだ。
一度だけ、ハンドくんが『さくらの寝姿』を此方こちらに残したタブレットで撮影してくれていた。
相変わらず『ダッちゃん』を抱きしめて『右側を下』にして眠っているさくら。
いつも3人で寝るときはこの姿だった。
そしてさくらの右側がヒナリ。反対側がヨルクだ。
ハンドくんが頬を『ツンツン』と触ると「んー。ひにゃり~」と寝ぼけた声を出してくすぐったそうに笑う。
それをみた『ひにゃり』ことヒナリは「もう・・・」と苦笑する。
さくらが寝ていると、ヒナリはよくさくらの頬を触っていたのだ。

ヒナリは時々、その映像をみながらタブレットを・・・さくらの顔を撫でている。
とても愛しそうに。





「楽しそうでしたね」

「ああ。『ハンドくんが一緒』だからな」


ジタンとヨルクは『笑顔のさくら』が見られて嬉しそうだ。

ヨルクはハンドくんに図書室で『冒険旅行』の話を聞いた時から『さくらが泣いていたら、どんなに遠くても飛んでいく』と心に決めていた。
しかし、さくらの冒険に必要と思われる『準備』をしてて気が付いた。
ドリトス様もセルヴァンも。そしてジタンでさえも『さくらを信じている』ことを。
さくらは、どんなに辛いことに直面しても必ず立ち上がり、真っ直ぐ前を向いて歩けると信じていることを。


『親鳥なら雛を信じろ』


さくらが『日射病』で倒れた時にセルヴァンに言われた言葉だ。
・・・オレはさくらを『本当の意味』で信じていなかった。

そしてセルヴァンに聞いた。
「『さくらを信じる』ってなんだ?」と。
セルヴァンは驚いていた。
でも「さくらがすること、したいことを『見守る』ことだ」と教えてくれた。

オレには難しい・・・
しかし「『準備をしっかりして送り出す』のも見守ること」だと言われて、自分で出来る範囲の準備をセルヴァンと一緒にした。
上着に思いつく様々な『付与』を手当り次第つけていた時に、創造神から『着用者の周りの空気だけ清浄化させる』魔法を教わった。
時間が掛かったが、それでも取得する事ができた。
セルヴァンの方が先に魔法を取得出来たのが悔しかったが・・・
あとから『清浄化』魔法を知ったドリトス様が、数時間で取得した上、3日後には『無詠唱』で使えるようになっていた。
ドリトス様の場合、今は使える魔法のすべてが『無詠唱』だ。
さくらに「構造が分かれば無詠唱でも魔法が使えるんだよ」と教えられたが、ヨルクには難しかった。
さくらが『冒険旅行』に行ってから、ドリトス様はセルヴァンと共に魔法の構造を研究している。
生活魔法や治癒・回復魔法など無詠唱で早く使える方が良いものを選んでいるらしい。




そんなドリトス様は、さくらでも使えそうな武器とハンドくんが使う武器ハリセンを作っていた。
接近戦はハンドくんがすると言っていた。
だからさくらには後方からでも使える武器を作っていた。
もちろん2人の主な攻撃は『強力な魔法』だろう。


そしてジタンは『何も出来なかった』。
国王代理の責務と自身の戴冠式の準備があったからだ。
そのため小さい頃に祖母から贈られた『純銀製の短剣』に神の加護を付与してもらう事にした。
しかし神から『下手な事はできない』と言われた。
それは強い『神の加護』を付与された物は『聖なる物』として神殿に『奪われる』可能性が高いそうだ。
それがあったため、従来付与されていた『魔除け』を『魔物除け』に。
半径10メートルの『範囲結界』を追加してもらった。
『純銀製』のため、その2つは『お守り』として付与されていてもおかしくはないらしい。
特に『範囲結界』は強力で、範囲外の『魔物の声』が届かなくなっている。
そして『攻撃対象』の魔物とは範囲内であっても『心が繋がらない』ようになっている。
そして『アイテムボックス』内に入っていても、その効果は有効だ。



神々も『さくらを守るため』に色々と考えていたのだった。



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