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第七章

第93話

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あの『広場の騒動』以降、『銀馬亭』やその周辺にはさくらをひと目見よう、お近付きになろう、自分の店の商品をさくらに買ってもらい『銀板御用達』の箔をつけようという連中が彷徨うろつくようになった。
しかし相手は慇懃無礼な警備隊ですら敬服している『銀板』なのだ。
下手なことをすれば、捕縛されて『取り調べ』経由『奴隷落ち』のエレベーターではなく、取り調べもすべてすっ飛ばして、問答無用で牢獄から『奴隷落ち』直行便のダストシュートに押し込まれて落とされるだけだ。
その時に家族や同業者、取引先をどれだけ巻き込むか分からない。


さすがに『押し売り』と引き換えにするには、デメリットが大き過ぎるのだった。
そのため『遠巻きに見ている』しか出来ないのだった。
しかし、その当人は宿から出てこなかった。
部屋を覗こうとした者もいたが、宿の窓には元々『覗き防止』の魔法がかけられている。
そのため部屋の中の様子も、姿を見ることも出来なかった。



さくらはここ数日、宿屋の自室でひきこもって過ごしている。
のではなく、先日のことがあるため、無人島で武器を試していたのだ。



部屋から出てこないさくらを心配した宿屋のオッチャンが、さくらが食事におりてきた時に「部屋で何をしてるのか」を聞いてきた。
「この前ザーニたちが寄越した武器の『確認』だよ」と言ったら、すんなり納得された。
どれだけ数が多かったのかをオッチャンも知っているのだ。
そして「危ないから無闇に部屋へ人を寄越すなよ」と言ったら承諾してくれた。

彼は酒場に来る客で『一見いちげんさん』は断っている。
一度、さくらが食事に出てきた時に『さくらに近付こうとした客』がいたのだ。
それは他の客たちが押さえて事なきを得たが。
それ以来『客の制限』をしているのだ。
宿の客さくら』に迷惑をかけないことも、酒場を併設する宿屋の義務なのだ。



無人島でハンドくんの『鋼のハリセン』は、ハンドくんが『強化』して『鋼鉄のハリセン』にレベルアップさせた上、『反射』のコーティングまでしていたことが分かった。

・・・ってレーザー光線を跳ね返すってアリなの?!


『この世界は『何でもアリ』です』


・・・・・・ねえ。ハンドくん。


『大丈夫です。さくらに迷惑を掛けることはありません』



うん。その点は信じているよ。




今日で武器は全部『調査済み』だ。
武器に関してはハンドくんがリスト化してくれた。
中には『普通の武器』もいくつかあったが、ほとんどが『普通より強力』だった。

例えば『レイピア』。
詳細には何も書かれていないのに、さくらが手にすれば『草薙くさなぎの』と頭に付いた。
軽く振るっただけで『真空刃』が出て10m先で消えた。
『地魔法』で出した目標物に離れた場所からレイピアをぐと、『真空刃』でポッキリ真っ二つになった。
同じ『草薙』の武器の中には、『笹の葉』のような『やいば』が半円形の方角に『シュパパパパー』と飛び出す短剣もあった。

そんなモノ、確認しないで『町中まちなか』で一振りしていたら、一発で『大量殺人事件』発生だ。
『銀板さま。ご乱心らんし~ん!』って騒がれたくないし、『指名手配近付くな!キケン!』もされたくない!


ったく。
私の趣味は『辻斬り』じゃないんだから・・・
ザーニたちも一体何を考えているのやら。



大量の武器はアイテムボックス内に『フォルダ』を作って整頓する。
間違った使い方をしないためだ。
いくら『神の免罪符』があったとしても、相手がどんなに酷い『悪人』だったとしても、出来れば殺したくはないよ・・・





午後を過ぎてから部屋に戻ったさくらは、ベッドでゴロゴロとしながら考え事をしていた。


奥さんのことはセルヴァン自身から『事故で亡くなった』とだけ聞いていた。
高熱で寝込んでいる頃に『家族の話』を聞いたのだ。
『家族』を大事にしてほしくて・・・


そして、ある日の夢でみた。
我を忘れたセルヴァンが、怒気を最大限まで放っていた。
『夢の中』だったからか、『深い哀しみ』が混じっててツラそうだったからか。
セルヴァンの怒気はぜんぜん怖くなかった。
逆に空に向けて泣き叫んでいるのに声が枯れたように出ていない・・・
涙が枯れ果てたのか流れていない・・・
そんな『慟哭』をしているセルヴァンの姿を、見ている方がツラかった。
泣き止んでほしかった。

いつもの様にセルヴァンに駆け寄り、背後から「セルぅ」と強く抱き締めたところで目を覚ました。


・・・あの後、夢の中のセルヴァンはどうなったのだろう。
泣き止んだのだろうか。

せめて・・・『声』をあげて、『涙』を流して泣いてほしい。
涙は悲しみを『軽く』してくれるから。
必要ならハンドくんに結界を張ってもらうから・・・・・・



そして先日関わった獣人族の奴隷たち。
その中に『セルヴァンの妻子』がいた。
転生してるからセルヴァンのことは覚えていないよね。
でもなぜ『下の大陸』にいたのだろう?
彼女たち3人を助けてあげたい。
一度は『アリステイド大陸』に生まれることが出来た人たちだ。
きっと『真っ直ぐな生き方』をすれば、『魂をけがさない生き方』を繰り返せば、再び『アリステイド大陸』に生まれることができると思う。



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