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第五章

第53話

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「いつまでもそこにいたら風邪引くぞ」

水の女神の言葉に『さくらの部屋』の扉からドワーフたちが姿を現す。
彼らはさくらがリビングに現れてすぐの時点から扉の影に隠れていた。
我ら神に『遠慮』したのだろう。


「さくらの『ねがい』は聞いたかな?」

「オレたちだけだと『寂しい』と・・・」

「それは『仕方がない』だろう?この子が此処へきた頃は、この広い部屋に『ひとりぼっち』だったのだから」

そう。ハンドくんたちとアリスティアラがいただけだ。
そして創造神が現れて他の神々も常時姿を現すようになった。
それはさくらが喜ぶからだ。
しかしドワーフドリトス獣人セルヴァンが現れると姿を隠した。
そのたびにさくらは寂しそうな表情をしていたのだ。


さくらの『甘え』はその頃から始まったのだ。




水の女神の言葉に翼族の2人は周りを見回して「ここにひとりぼっち・・・」と呟く。
当時、ドワーフと獣人はさくらが寂しい思いをしないように何度も足を運んでいた。
しかし倒れたさくらを疲れさせる事になるから長時間は居られなかった。



『呪い』の件で神々は『出来る範囲』でさくらを守った。
しかしさくら本人が呪者や関係者の死を望まなかったため『守護』しか出来なかった。
そして『呪いに巻き込みたくない』という意思で神々を遠ざけた。
唯一、アリスティアラだけが苦しむさくらのそばにいられた。
時々、創造神が体内に溜まるおりを消すためにさくらのそばにいたが・・・
それでも『寝ている時』に限られていた。


『飛空船事件』で『若い神々』の神籍が剥奪された。
他の残っている神々がフォローしてきたお陰で『天災』は起きずに済んでいる。
神は『一つ』の守護に『二柱ふたはしら以上』存在する。
守護神すべてが神籍を剥奪されたものはない。
もし『守護する神が不在になった』としても、創造神やアリスティアラたち『上位神』が代わりをする事が出来るため一切問題はないが。

エルフ族の寿命も大幅に減らされた。
「長寿が偉い」とおごる彼らを、この世界で一番の『短命種族』にしたのだ。
それで反省をすれば良かったのだが、彼らの一部がのちにこの王城を襲った。
連中は王城の最上階を攻撃して侵入し、さくらを奪って『人質』にして『元の寿命』に戻させようとしたのだ。

要求が通りさくらを解放した後も『エルフ族の傀儡かいらい』として『自分たちの奴隷としてに良いよう操る使う』つもりでもいた。
自分たちの存在をおびやかすさくらを、『神の愛をかたる娘』として『公開処刑見せしめ』で八つ裂きにするつもりだったのだ。
それを生かしてやるのだからエルフ族自分たちのために『隷属』するのは『当たり前』だろう。
襲撃犯たちは本気でそう考えていたのだ。


・・・その計画は『さくらへの悪意』を事前に察知したハンドくんたちのハリセン攻撃反撃で失敗に終わった。


連中には、功績を認められたハンドくんたちの望み通り『600歳で死ぬまでハリセン攻撃を受け続ける』天罰が下った。
ハンドくんたちの話だと『天罰を受けてでも長生きしたかったんですから『本望』でしょう』とのことだった。
彼らはまだ100歳前後の若いエルフたちだ。
500年も天罰ハリセン攻撃を受け続けるのは、自身の愚かな行為に対して反省を促すのに十分だろう。

そして襲撃が失敗し『天罰』を受けたことを神殿から伝えられたエルフ族は、『女神に愛された娘』が『ホンモノ』だと知って慌てた。
そして愛し子さくらに対して『二度と無礼を働かない』と誓った。


ただ彼らを早く故郷に戻さないと、ハンドくんたちがおこなっている『肉体へのハリセン攻撃』が続くことになる。
ハンドくんたちはハリセンを手にして、姿を現すと同時に数発攻撃をして姿を消す。
そのためエルフ以外に『目撃者』はいない。
もちろんエルフたちは『襲撃者はハリセン』としか分かっていない。

神殿よりエルフたちの日々の様子についての報告と共に、『見えない襲撃者』の報告も受けたジタンの表情筋が引きったのは仕方がないだろう。

神殿には『エルフたちは神々から罰を受けている』と返答した。
ハンドくんたちのハリセン攻撃を神々が止めていない。
黙認しているということは『神の罰』と同じことだ。

何より王城を襲撃してきたエルフたちを捕らえたのはハンドくんたちだ。
ハンドくんたちが『表舞台』に現れない以上、報奨を与えることはできない。
ハンドくんたちに尋ねても『さくらのためにした事』と突っぱねられるだけだった。
そのため公式には『さくら様の功績』となっている。
だったら『ハリセン攻撃』はハンドくんたちへの『報奨』と思えばいい。

ジタンの考えは神々と同じだったのだ。


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