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第一章
第13話
しおりを挟む応接室でソファに座らされる。
目の前に土気色のレイソル・マクニカ・アストラム『自業自得』の三人衆。
鑑定で私のかけた魔法『浄化対象外』が切れていないのは確認済み。
でもステータスに『天罰続行中』とある。
これは一体全体なんじゃらほい。
『放っといてもすぐにわかると思うよ』
それは楽しみだ。
マクニカに「それで?『乙女の魔石』はいくつ買うの?」と聞いたら「今あるだけ全部」だって。
先日のアリスティアラとのやり取りを覚えてないらしい。
「へぇー。2万個以上も買えるんだ。そりゃあ大金なんだから、用意するのに時間もかかるよねー」
マクニカは「あっ」とか「えっ」とか言った後、レイソルの様子を見ながら「『乙女の魔石』は一つ銀貨10枚で交換となります」と言ったとたん、レイソルとマクニカが悲鳴を上げて床を転げ回った。
のた打ち回る2人にアストラムは完全に怯えている。
『見えていますか?』
うん。全身に荊が巻き付いているね。
アニメのOPで『『男装の麗人』が全身をバラに巻き付かれている姿』は美しいのに。
この『おっさんズ』は・・・見苦しい!
アレ?でもさっきまで『なかった』よね?
『ウソを吐いたからな』
『『正直』にしていれば『天罰』を受けずに済むものを・・・』
あの状態で床に倒れたら更に突き刺さってるよね。
イタソーだな。
『痛そーだよな』
『本当に痛そうだ』
でも
『『『天罰』だから仕方がないよなー』』
自業自得よね。
『まったくだ』
うーん。
話にならないしウルサイから、ハンドくんたちに言って・・・
『『窓からポイッ』はダメですよ』
・・・ちぇーっ。
じゃあハンドくん。
『廊下へポイッ』してきて。
荊でケガしないように注意してね。
ハンドくんたちがポンッと現れて、レイソルとマクニカを部屋の外へポイッと投げ出した。
同時に『絶叫』が廊下に響いたけど、ハンドくんが気にせず扉を閉じると気にならないくらいに小さくなった。
何か髪の毛を掴んだり、首の後ろを掴んだりって『普通ではない掴み方』をしてるハンドくんもいたけど・・・
『気のせい』
『木の精』
『樫の精』ってことで。
『『『そうそう!』』』
『『そうそう』じゃありません!』
『ウワッ!アリスティアラが怒った!』
・・・何か『鬼ごっこ』が始まってる気配がするけど。
『気のせい。気のせい』
うん。そうだね。
創造神が言うんだから『気のせい』だよね。
それより
「私が『乙女の魔石』の価値を知らないハズないのに」
女神様からちゃんと聞いているんだけど。
「ごまかそうとするから『罰』が当たるんじゃい」
「『止めた方がいい』と言ったんだけど・・・」
ドリトスの言葉にセルヴァンが頷く。
そっか。それは『罰が当たっても仕方がない』よなー。
「で?」
アストラムに目線を移すと、カタカタと小刻みに震えている。
「一緒に騙そうとした?あ、ウソを吐けば『見えない荊の刑』が待ってるよ」
楽しいねー。
そう言ったら、ただ目線を泳がして怯えるだけで返事がない。
また『某有名ゲームの名台詞』を口にするか?
その前に静電気魔法『ビリビリ』の威力を試してみようか。
気絶させてから名台詞を言った方が・・・
そんな『面白そうなこと』を考えていたらドアがノックされた。
もう復活したんかい。と思ったら、鑑定魔法で表示されたのは違う名前。
床に転がっていたはずの『ぼったくり2人組』の名前は何処かへ移動中。
懲りずに治療院に運んでいるのだろうか。
昨日聞いた話だと『天罰』なんだから、どんな魔法でも解除は出来ないらしい。
解除自体『天に逆らう』行為だから治療師たちも天罰を受けるし、2人はさらに悪化するんだよね。
『あたり』
『治療師たちへの天罰は軽めにしてるよ』
だったら神殿にそのこと伝えて下さいよ。
無理矢理従わされる治療師たちが可哀想じゃないですか。
『イヤイヤ。最初に天罰を与えた時点で、神殿には『天罰だから触るな』と伝えてある』
『あれでも王と宰相だからな。『何とかしよう』とするんだ』
『あとで『治療院』を鑑定してごらん』
『ゴロゴロと『天罰を受けし者』の称号がいるぞ』
『賞罰欄に『天罰何回』って奴が、うじゃうじゃ揃っているぞ』
それって「自分は王のためにこれだけ生命をかけたぞ」って自慢されるんじゃないの?
『それはない』
『天罰を受けた身体は、乙女のチカラでも浄化はされなくなる』
『浄化されない身体は寿命に関わるものだ』
じゃあ『浄化対象外』の状態?
『それ以上だ』
『『浄化対象外』は浄化されないだけで、『汚れた空気を吸って生きていく』事が出来る』
『だが天罰の場合は違う。埃の溜まった空間で呼吸するようなものだ。肺や内臓に埃が溜まり機能を低下させていく。そして死を迎える』
ああ。私の世界で問題になった『アスベスト被害』のようなものか。
『そうだな』
『ただ・・・『賞罰』は死んでも消えない』
『賞罰にある天罰の回数は『生まれ変わる』と一つ減るが、『天罰』を受けた状態で生まれ変わる』
それって・・・この世界の人たちは知ってるの?
『もちろん知っている』
『この世界に生まれてすぐ、神父に『賞罰欄』を確認される』
『賞罰の有無で、まず将来が決まる』
『天罰の場合は『これ以上の天罰を受けないように』との理由から、神殿の地下にある檻の中で機を織り一生を終える』
確かに人との接触が少なければ、その分『天罰を受けにくい』よね。
でも・・・なんで『機織り』?
『『神に赦しを乞う』ために、神殿で使うものを作らせるから』
『機織りは1人で出来るから』
確かに人との接触が少なければ、その分追加で『天罰を受けにくい』よね。
『そして『賞罰欄』に罰を受けた者の家族や親族にも影響を及ぼす』
『まず『役職』にはつけない』
確かに『殺人者』の家族が『取り締まる側』とか、『横領』の家族が『経理職』って・・・悪いけど信用出来ないわ。
『生まれ変わった場合だと、跡取りだろうと神殿に子を奪われるからな』
『赤ん坊を隠したり逃げたりすれば、たとえ賞罰が無くても一家同罪で神殿の地下行きだ』
『領主なら領地没収になる。その場合、全領民が『犯罪奴隷』に落とされることもある』
それは『私がいく大陸』の話だね。
この大陸には 奴隷はいないから。
『ああ。この大陸では『賞罰を受けたもの』は生まれないからな』
つまりカースト制度だと、『アリステイド大陸』は『他の大陸』より上位で、何か悪いことをしたら次に生まれる時はランクを下げた大陸になるってことか。
『キミの好きな『ポイッ』だな』
賞罰か。
常識を越えたレベルアップをしてるからなぁ。
私も気をつけないと・・・
『キミは『免罪符』があるから心配しなくていいよ』
免罪符?
『女神に愛されし娘』
『神々に愛されし娘』
『創造神に愛されし娘』
・・・なんか増えてるし。
『最強』の免罪符まで出てきたし。
とりあえず、免罪符を使わなくても済むように気をつけます。
ドアの向こうの人物は、「どうぞ」とドリトスが声をかけてからドアを開いた。
「失礼致します。そちらの方が『女神に愛されし娘』様ですね」
そう言ってドアの前に現れた若者は、拳を握った右手を胸に当てて腰を折った。
「お初にお目にかかります。エルハイゼン国国王レイソルが第一子、ジタンと申します」
ココロの中で『心臓を~』と巨人が出るアニメのサビを歌ってしまったのは、私のせいではない・・・と思う。
「数々の非礼を、父レイソルに代わり謝罪致します」
レイソルの息子と名乗るジタンは、父親と違い礼儀正しい青年のようだ。
この国の呼び名は皇太子?殿下?
『どちらでも』
ありがとう。
アリスティアラに呼び方を確認して、ソファから立ち上がり立位で挨拶を返す。
「お初にお目にかかります。皇太子様。私は『さくら』と申します。此方こそ宜しくお願い致します」
私の挨拶に満足したのか、ジタンは嬉しそうに笑顔を見せる。
『ネコを何匹被ってます?』
最低10匹。
『それもただのネコじゃないな』
『猫科の猛獣か』
今は木天蓼で大人しくなっている、鬣の素敵なライオンさんです。
『出たな。『モフモフ』病!』
モフモフは正義です!
『バカが寝た子を起こさない事を願ってる』
ジタンはまだ15歳前後といった外見だが、チャランポランな父親のせいで精神的に大人になっている様子。
「ジタン。『乙女の魔石』なんだがな」
私をソファに座らせたドリトスが、騒動前の話をしてくれる。
私相手にぼったくりを図って天罰を受けたことを知り、ジタンは驚きで口が少し開いている。
「さくら様!大変申し訳御座いません!『乙女の魔石』は貴重な品で、1個でも金貨800枚は下りません」
それを銀貨10枚なんて・・・
私たちは如何なる『天罰』を受けても仕方がありません。
そう言ってひたすら頭を下げ続けるジタンは見てて痛々しい。
うん。前回『乙女の魔石』を出したときに鑑定したけど、『乙女の魔石 金貨800枚』って表示されていたんだよね。
金貨1枚が日本円換算で一万円。
銀貨1枚で千円。
銅貨1枚が100円。
この世界にはその三種類しかないそうだ。
そしてどの大陸も硬貨自体は変わらない。
ただ『乙女の魔石』を別の大陸で売ったら「金貨1,000枚は下らないわね~」とのこと。
金欠病になったら「身なりの良い人を生命にかかわることで助けたらお礼で貰った」と言って、1個ぐらい売っても良いかもしれない。
そんな貴重なアイテムを、『何も知らないハズの私』に素直に代金を提示するとは。
気に入った!
マジでこの子に譲位させない?
『まだ20歳になったばかりだ』
『今は国王の補助的立場でしかない』
えー。『今の私』より2歳上かぁ。
大人びているよね。
・・・やっぱりレイソルの『焼滅』を。
『それはダメですって!』
・・・やっぱり、レイソルの手足の1本でも『焼滅』を。
『その気持ちはよ~~~く分かるがな』
創造神のチャットの直後、何処か遠くで「ギャー!」という叫び声が何度も聞こえた。
『これで我慢しろ』
・・・・・・わかりました。
仕方がないから、『今は』我慢しましょう。
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