6 / 7
後編:1
しおりを挟む「####、##! #######?」
何を言っているのかわからない。
そんな私は前列に並ぶ少女を見ていた。
召喚された少女と同じか少し年上だろうか。
「####、##! ###? ##!」
拍手が巻き起こり、前列の黒髪の少女が泣き叫ぶ。
少女は前で括られた腕を乱雑に掴まれて男に引き摺り出されると、銀色の首輪をはめられた。
すると少女の目が虚ろになり、首輪につけられた鎖を引っ張られると男に従うように大人しくついていった。
『精神に干渉する魔導具』
あれが私の首にもつけられるのか。
腕輪だったが、召喚された少女に使われるはずだった。
それは神によって妨害されていたが……
意思を殺し、どんな命令にも従わせる。
使う側には便利なもの。
それを目の当たりにして、私にも着けられる恐怖で全身が震えていた。
私は半数の少女たちと再び檻の馬車に入れられて移動している。
あれは奴隷市だったのだろう。
私たちは売れ残ったのだ。
『見目麗しい次期女王』と呼ばれていた私は……
ううん、あの首輪をつけられずにすんだと喜べばいいんだ。
それでも、あんな魔道具を使わなくても心が死んでいく。
与えられる食事を這いつくばって直接口をつける。
手が縛られているため、それ以外に食べられないのだ。
カトラリーを使って食べていた食事は美味しかったのだろう。
今はそんなことも覚えていない。
食べなければ蹴られる。
衰弱すれば生きたまま狼に食われる。
私は死にたくない。
『大国の可憐な花』と呼ばれた私はもういない。
隣国で召喚されたのはまだ幼さの残る少女だった。
神殿から出られないというその少女に会うため、私がわざわざ行ってやったというのに少女は部屋から出なかった。
強行しようにも、彼女には神がついていて直接触れることもできないらしい。
「脅して髪を切ってやろうと思ったのに、あいつに触れなくてさ。逆に母と妹たちの髪が短くなってて。笑った俺を折檻しやがった」
「まあ、それは大変でしたわね」
「ああ、それでさ。アイツをこの世界に残してやろうと思ってさ」
そして騙して自分との結婚を宣言させれば、神だって手が出せなくなる。
あの膜がなくなれば魔導具を腕に装着できる。
それで世界を救う奴隷にする。
私はそれに賛同した。
それなのに、なぜ?
私たちは世界を平和にするために……
間違いだったというの?
私たちが望んだ平和は、彼女が犠牲になれば私たちは幸せになれる。
ひとりの犠牲で成り立つ世界。
…………それの一体何が悪かったの?
35
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説
神に逆らった人間が生きていける訳ないだろう?大地も空気も神の意のままだぞ?<聖女は神の愛し子>
ラララキヲ
ファンタジー
フライアルド聖国は『聖女に護られた国』だ。『神が自分の愛し子の為に作った』のがこの国がある大地(島)である為に、聖女は王族よりも大切に扱われてきた。
それに不満を持ったのが当然『王侯貴族』だった。
彼らは遂に神に盾突き「人の尊厳を守る為に!」と神の信者たちを追い出そうとした。去らねば罪人として捕まえると言って。
そしてフライアルド聖国の歴史は動く。
『神の作り出した世界』で馬鹿な人間は現実を知る……
神「プンスコ(`3´)」
!!注!! この話に出てくる“神”は実態の無い超常的な存在です。万能神、創造神の部類です。刃物で刺したら死ぬ様な“自称神”ではありません。人間が神を名乗ってる様な謎の宗教の話ではありませんし、そんな口先だけの神(笑)を容認するものでもありませんので誤解無きよう宜しくお願いします。!!注!!
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇ちょっと【恋愛】もあるよ!
◇なろうにも上げてます。
偽物の女神と陥れられ国を追われることになった聖女が、ざまぁのために虎視眈々と策略を練りながら、辺境の地でゆったり楽しく領地開拓ライフ!!
銀灰
ファンタジー
生まれたときからこの身に宿した聖女の力をもって、私はこの国を守り続けてきた。
人々は、私を女神の代理と呼ぶ。
だが――ふとした拍子に転落する様は、ただの人間と何も変わらないようだ。
ある日、私は悪女ルイーンの陰謀に陥れられ、偽物の女神という烙印を押されて国を追いやられることとなった。
……まあ、いいんだがな。
私が困ることではないのだから。
しかしせっかくだ、辺境の地を切り開いて、のんびりゆったりとするか。
今まで、そういった機会もなかったしな。
……だが、そうだな。
陥れられたこの借りは、返すことにするか。
女神などと呼ばれてはいるが、私も一人の人間だ。
企みの一つも、考えてみたりするさ。
さて、どうなるか――。
嘘つきと呼ばれた精霊使いの私
ゆるぽ
ファンタジー
私の村には精霊の愛し子がいた、私にも精霊使いとしての才能があったのに誰も信じてくれなかった。愛し子についている精霊王さえも。真実を述べたのに信じてもらえず嘘つきと呼ばれた少女が幸せになるまでの物語。
リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる