異世界追放《完結》

アーエル

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後編:1

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「####、##! #######?」

何を言っているのかわからない。
そんな私は前列に並ぶ少女を見ていた。
召喚された少女と同じか少し年上だろうか。

「####、##! ###? ##!」

拍手が巻き起こり、前列の黒髪の少女が泣き叫ぶ。
少女は前で括られた腕を乱雑に掴まれて男に引き摺り出されると、銀色の首輪をはめられた。
すると少女の目が虚ろになり、首輪につけられた鎖を引っ張られると男に従うように大人しくついていった。

『精神に干渉する魔導具』

あれが私の首にもつけられるのか。
腕輪だったが、召喚された少女に使われるはずだった。
それは神によって妨害されていたが……
意思を殺し、どんな命令にも従わせる。
使には便利なもの。
それを目の当たりにして、私にも着けられる恐怖で全身が震えていた。


私は半数の少女たちと再び檻の馬車に入れられて移動している。
あれは奴隷市だったのだろう。
私たちは売れ残ったのだ。
『見目麗しい次期女王』と呼ばれていた私は……
ううん、あの首輪をつけられずにすんだと喜べばいいんだ。

それでも、あんな魔道具を使わなくても心が死んでいく。
与えられる食事を這いつくばって直接口をつける。
手が縛られているため、それ以外に食べられないのだ。
カトラリーを使って食べていた食事は美味しかったのだろう。
今はそんなことも覚えていない。
食べなければ蹴られる。
衰弱すれば生きたまま狼に食われる。
私は死にたくない。

『大国の可憐な花』と呼ばれた私はもういない。



隣国で召喚されたのはまだ幼さの残る少女だった。
神殿から出られないというその少女に会うため、私がわざわざ行ってやったというのに少女は部屋から出なかった。
強行しようにも、彼女には神がついていて直接触れることもできないらしい。

「脅して髪を切ってやろうと思ったのに、あいつに触れなくてさ。逆に母と妹たちの髪が短くなってて。笑った俺を折檻しやがった」
「まあ、それは大変でしたわね」
「ああ、それでさ。アイツをこの世界に残してやろうと思ってさ」

そして騙して自分との結婚を宣言させれば、神だって手が出せなくなる。
あの膜がなくなれば魔導具を腕に装着できる。
それで世界を救う奴隷にする。
私はそれに賛同した。
それなのに、なぜ?
私たちは世界を平和にするために……
間違いだったというの?
私たちが望んだ平和は、彼女が犠牲になれば私たちは幸せになれる。
ひとりの犠牲で成り立つ世界。
…………それの一体何が悪かったの?
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