学園裁判

アーエル

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第一章

「男爵家の分際で公爵家に楯突くか!」

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いくら後宮の住人で男性と接触がないといっても、いま何が起きているかという情報は逐一入る。
後宮には女性が勤めており、彼女たちは城内の情報を手に入れられる立場にある。
取り引きの対価は後宮の情報だ。
と言っても、最新のファッションは後宮から発信される。
それをいち早く手に入れたいがために貴族たちは取り引きの最新の情報を手に入れる。
もし間違った情報を侍女たちに流した貴族は今後一切の情報も得られない。
そればかりか、貴族間の信用も失墜させて孤立してしまう。
一切の情報も得られず、領地に引き下がった貴族もいるくらいだ。

後宮に出入り出来るマーメリアは商会の規則として『顧客の情報を話してはいけない』がある。
それでも無理に聞き出そうとした貴族がいた。
今よりさらに子供だったマーメリアをナイフで脅して聞き出そうとしたのだ。
…………その貴族は『王城で抜刀した』のと『ナイフで脅した』ことと『商会の規約を破らせようとした』だけでなく、根本的な貴族法『貴族の権力を無闇に振りかざすな』に違反した。
褫爵されて領地を没収されたのは、自分で起業して働いて商人の法律を身をもって覚えろということだった。
路頭に迷うところをマーメリアの父が世話をして、今は商会の新業種部門開設のために走り回っている。
新しいことを自ら発信していく側に立った彼は生き生きとしている。
追いかける側から生み出す側。
立場が変わっただけだが、世界は変わった。
彼のように相手の立場を理解することで自身の行動を恥じ、心を入れ替えることができればやり直すことも可能だろう。

オルスコットとフルールの両名の裁判が学園から公式なものに切り替えられたのは、二人の立場もそうだがフルールの父が娘の被害者の態度に激怒して暴力を振るったからだった。
それによって更生のチャンスは失われた。



それからさらにひと月後。
講堂に全校生徒が集められた。
学園裁判による判決が確定したのだ。


オルスコットは学園を退学、廃籍ののちに国外追放。
彼は王妃の実家で下働きの労働奴隷となる。
名はスコット、前科持ちの少年である。
王子という立場で甘言を鵜呑みにした彼に未来などない。
過去の王子は階段でふざけた結果の事故。
オルスコットのように悪意をもって起こした冤罪の主犯が、幽閉で許されるはずはなかった。


フルールは公爵家から助命嘆願が出たものの、被害者の中に死を選んだ少年もいたため聞き入れられず。
何より「では娘の罪を其の方が償うというのか?」と尋ねられて嘆願を引っ込めた。
元々、謝罪をして被害届を取り下げてもらおう、ついでに嘆願書に署名をしてもらおうという魂胆だったが誰一人謝罪を拒否し嘆願書の署名を断った。
男爵家の子息にも断られ、「誰も許そうなど思うものか!」と言われて殴った。
いや、その前に「男爵家の分際で公爵家に楯突くか!」と怒鳴ったのが悪かっただろう。
謝罪にきてそんな態度をとったのだから。
そして嘆願書の署名は他者による代筆……つまり偽造をした。
それを裁判で使ったのだ。
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