クルマでソロキャンプ🏕

アーエル

文字の大きさ
上 下
20 / 31
第一章

❷⓪

しおりを挟む

濃いめのドリップコーヒーにひたしていたサンドウィッチ用の食パンを使ったティラミス。
保存容器のひとつとサイズがピッタリなため、詰めて挟んで乗せて積んで重ねて振りかけて~を繰り返す。
底に敷く食パンには、井桁の隠し包丁を入れたものを。
切り込みの入っていない面を底に。
挟む食パンはフォークで穴を開けたもの。
最後はマスカルポーネクリームの上にココアを振って冷蔵庫へ。
私のティラミスは食パンで、マスカルポーネクリームは生クリームではなくヨーグルト。
だから、おやつだけでなく朝食代わりにもなる。

以前、河川の増水が原因で閉じ込められたキャンプ場。
そこで、ヨーグルトでつくったティラミスを販売したことがある。
その日に帰る予定だったキャンパーたちが食材を使い切っていたため、善意による販売が許されたんだけどね。
それを食べたことがあるのだ、ショップで会ったおじさんは。
別に食材を切らしていたのではなく、甘いものが食べたいのではなく。
コーヒーの香りにつられて寄ってきただけだけど。

「思ったより甘くはないな」
「そりゃあ、腹にたまらないクセに贅肉ぜいにくはたまるデザートではなく、ちゃんととしてつくったんだから」

冷蔵庫完備のコテージやキャビンなら、デザートタイプのとろけるティラミス(プリン容器)をつくるよ?
AC電源サイトであっても冷蔵保存が出来ない場所ではつくりませんって。
ただ、おじさんたちの感想を聞いて女性たちが集まったけど……

「はあ? 『こんなモン、いらん』と言ったのはどこのどいつだよ」

その言葉に謝罪もせずにダンマリ。
彼女らがそう言ったのには理由がある。
保存容器ごと欲しがったのだ。

「欲しけりゃ、皿を持参しろ」

そう言った私に、「そんな不味そうなモン、金を積まれてもいらん!」と言い返してきたのだ。
中には値引き交渉までしてきて、断ったら暴言を吐いた女性たちもいる。
1人前200円だよ?
それを4人前(保存容器1個分)で200円にしろ、だもん。
さらに「買ってやるんだから」とまできた。
…………根に持つのも当然ではないかい?

女性たちが慌てて寄ってきたときには、酒呑みなおじさんたちが12人前を買っていったため完売済み。
その後に、使いきったマスカルポーネ代わりに水切り豆腐でつくったティラミスも、おじさんたちに好評でした。
女性たち?
近寄らせませんでした。
というのも、は販売したのではないから。

「つくってみたんだけどさ~」
「「「クレクレー」」」

…………言ってるそばからスプーン握ってるし(笑)。
『回し喰い』されるに、遠巻きで見てた子どもたちが食べたそうにしていたけど。
流石に女性たちは「私たちにも」とは言えなかった様子。

「甘さがない分、こいつはうまいな」
「こっちの容器はココアを砂糖なしにしたから。こっちは甘めで、こっちはインスタントコーヒーを思いっきり砕いたのをかけてみた」
「この『コーヒー三昧』もいけるな」
「この白いのは豆腐なんだろ?」

試食をしてくれたおじさんたちは、ナッツなどのおつまみをお返しにくれました。
女性や子どもたち?
私のサイト周辺を彷徨うろついていたため、キャンプ場の職員に追い払われていましたよ。
ちなみにホタテの乾物ももらったため、たこ焼きならぬをつくって、これまたおじさんたちに試食してもらいました。

「柔らかいな、明石焼きたまごやきか?」
「そっちはね、戻し汁が良い味出してたから。こっちがたこ焼きで、こっちがタコの代わりに貝柱ホタテ入れてみた」
「コレはネギ焼きか」
「うん、丸めてみた」
「今度はお好み焼きで丸めてくれ」

リクエストのお好み焼きバージョンも作りましたよ。
紅しょうがを刻んだ方が人気でした。
あっ、お好み焼きは『お好み焼き粉』ではなく小麦粉でつくっています。
は「あったら使う」けど、キャンプでは道の駅で大和芋や自然薯が売ってたら買うかな。
から、時期をみないとね。
真夏だとお酢が必須!


ちなみにホットケーキで焼いたのは、私のおやつになりました。
冷めたものを保存袋に入れて、お腹が空いたらパクッと。
中にひとくちチョコを入れて丸めたから、パクッと口に放り込むととけたチョコが…………良いお味。
ひと口チョコもホワイトチョコからビター、イチゴや抹茶などバラエティーがある。
ただし口にしなければ、何味のチョコが入ってるのか分からない。
だから、パクパク、パクパクって食べていたらカロリーがちょっと…………オホホ。


さて、おじさんにはブランデー入りのティラミスを差し入れしました。
差し入れというよりは……毒見?

何度も会ってるから、テントは知っている。
私が来るのを知ってたのか、テントの入り口に酒の瓶。
この中に虫よけが入ってるんだよねー。

「パンに、あまってた製菓用のブランデーを垂らしたコーヒーを染み込ませてみた」
「そのブランデーは?」

そう言いつつ、クイッと呑むジェスチャーをするおじさん。

「いつまでいる?」
「開通した翌日にでも帰るかな」

早期リタイア組だから、慌てて帰る必要はないらしい。

「いま、ドライフルーツをブランデーにつけてるんだけど?」
「よし、それを食うまでいるぞ」
「パウンドケーキ……の予定」

カップケーキになったり、紅茶に入れたり。
「予定は未定で決定ではない」が私の口グセ。
気分で食べたい物もつくりたい物もかわる。

おじさんはそれを知っているから笑う。
もちろん、おじさんもただ貰うだけではない。

「コイツで何かつくれんか?」

そう言って出されたのは、様々な野菜や果物。
何種類か料理をつくって、1人前ずつおじさんに渡す。
そして、あまった食材は『料理をつくった手数料』として私がもらう。
これが、顔馴染みのおじさんたちとの取り決め。
いわゆる物々交換馴れ合いである。
キャンプ場の規則(販売禁止)の抜け穴をくぐって楽しんでいます。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

子宮筋腫と診断されまして。《12/23 完結》

アーエル
エッセイ・ノンフィクション
徐々に悪くなる体調 気付いたら大変なことに!? 貴方ならどうしますか? ハッピーエンドで終われるといいですねー。 ❄12月23日完結しました 閲覧ありがとうございました ☆ここに出てくる病院は実在します。 病院名と個人名は伏せていますが、すべて実際に現在進行形で起きていることです。 (だから「ノンフィクション」のジャンルです) 特定するのはご自由ですが、言い回るのはおやめください。 問い合わせもお断りします。

【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない 

堀 和三盆
恋愛
 一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。  信じられなかった。  母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。  そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。  日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。

だってお義姉様が

砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。 ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると…… 他サイトでも掲載中。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...