上 下
7 / 19
第一章

しおりを挟む

あのママ友集団は、係員誘導で敷地内から追放された。
とくに子連れの場合は、希望があればバンガローのあるキャンプ場の予約をとってくれるし、そこまで先導してくれる。
紹介を一切受けられなかったということは、開き直って反省しなかったのだろう。

「二度と来ないわよ! こんなところ!」

駐車場まで連れて行かれる途中の連中からそんな声が届いた。
いやいや。
『二度と利用しない』という誓約書に署名したはずだから、この施設は使うことができませんって。
全国展開している運営会社だったら、全部のキャンプ場やバーベキュー場が対象だって誓約書に記載されていたはずだよ。
下手したら、彼女たちの近所から予約されたら断られることも。
だって、代表で誰かが予約した場合、一緒に来る可能性もあるから。
幼稚園や地域の野外活動、小中学校の課外授業など。
…………ちゃんと反省すれば、そこまで厳しくならないけど。
反省どころか捨て台詞吐いてたからねぇ。
5年10年で許されたらいいねー(棒読み)。
本当に反省して、キャンプ場へ謝罪しに行かなければ無理だろうけど。
あれだけ大口叩いていたら……旦那に引き摺って連れてこられない限りは謝罪しないだろうね。

管理棟にはいくつかの見本が置いてあって、各種手続きで受付に行った利用者は興味本位から何が書いてあるかを確認している。
だって施設ごとに規則は違う。
『花火は手持ち花火のみ』や『花火禁止』という季節限定の規則もあれば、『消灯は22時』だったり『音楽は夜8時まで』や『19時以降はエンジン禁止』という規約があるキャンプ場もあるくらいだ。
周囲から孤立しているキャンプ場といくつか隣接しているキャンプ場では、その内容は違ってくる。
厳しいのが、イベントを含めた集会の終了時刻。
余韻を楽しみたくて騒いでいれば「よそで騒いでくれ」と追い出されるのだ。
その次からはイベントの終了時間が繰り上げられて早くなるか、数年間は広場が貸してもらえなくなる。
たとえ収益が望めても、周辺に迷惑がかかることを天秤に掛ければ……

「イベント会場はよそでお願いします。宿泊地として個人に貸すことはしますが、消灯などは当方の規則に従っていただきます」

そうならないように運営側が頑張るのに、来場客は好き勝手に騒ぐ、騒ぐ。
会場から離れた麓のコンビニや会場周辺のキャンプ場でも集まって騒げば、翌年からいい顔をしてもらえない。
それが、前年に自分たちが騒いで迷惑をかけたからだと自覚していないライブ常連客が、キャンプ場などに抗議する。
…………だ~か~ら~、「お前たちのせいだ」って言ってるじゃん。
キャンプ場はお前たちの第二ステージじゃない。
キャンパー全員がライブ参加者じゃない。
それを理解しないから、利用制限、もしくは利用禁止になるんだよ。
運営スタッフが周辺に頭を下げて謝罪行脚してるのも、キャンプ場のイタズラや破損の弁償代を支払っているのも……知らないんだよね?

イベントじゃなくてもテレビやCMのように、焚き火をしながらギターを弾いていたらみんなが集まってきて一緒にうたう、なんて許されず。
消灯時刻までに焚き火を消していないと注意され、「うるさい」と訴えられ、「音楽は禁止です!」と解散を申し渡される。
それに従わなければ、参加者全員キャンプ場からの追放だ。
キャンプ場で夜間に音楽が禁止されているところがあれば、そこは何度か騒音で苦情が出たから。
……自分たちが楽しければ周囲への配慮など無視してもいい、と思うなら離島でもどこへでも行ってくれ。
ルールが決められている以上、それに従えないなら利用するなと言いたい。
なお車中泊の場合、外に音が漏れないなら曲を流していてもいい(エンジンはかけちゃダメ)。
外に漏れていたら、巡回の職員にノックされて「もう少し音を下げてね~」と注意されるけど。
次の巡回でも音を下げていなかったら……厳しい処分にはなるよ。
だって、車中泊以外のキャンパーもいるからね。
テントの中で寝ているから、騒音被害で訴えられるんだよ。

ソロキャンパーでは滅多にないけど、複数人できたキャンパーが繰り返し注意されることもある。
飲酒で盛り上がっているんだろうけど、酔っ払いの声は拡声器を使って喋っているのかと思うくらいうるさい。
一度の注意で聞けないなら、深夜でも追放される。
近所迷惑は、どこでも許されない行為なのだ。
バンガローやコテージのあるキャンプ場なら、追加でお金を払わされてそこに押し込められる。
そこなら窓を開けたり外にでて騒いだりしなければ、ある程度自由に過ごせるのだから。
窓を開けて盛り上がったり、時間外にバーベキューをしたら?
それでもアウトだけどね。
『屋内では火気厳禁』と表示しているところもある。
バンガローって宿泊のみの施設で、トイレや浴室もなくキッチンもなければコンセントタップもない。
トイレとキッチンがついているのはコテージである。
ちなみにバンガローより高いのは当然。
別荘を借りているようなものだからだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

自称サバサバ女の友人を失った話。

夢見 歩
エッセイ・ノンフィクション
あなたの周りには居ませんか? 「私ってサバサバしてるからさぁ」が口癖の女の人。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

もう、いいのです。

千 遊雲
恋愛
婚約者の王子殿下に、好かれていないと分かっていました。 けれど、嫌われていても構わない。そう思い、放置していた私が悪かったのでしょうか?

投稿インセンティブで月額23万円を稼いだ方法。

克全
エッセイ・ノンフィクション
「カクヨム」にも投稿しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ある国の王の後悔

黒木メイ
恋愛
ある国の王は後悔していた。 私は彼女を最後まで信じきれなかった。私は彼女を守れなかった。 小説家になろうに過去(2018)投稿した短編。 カクヨムにも掲載中。

処理中です...