3 / 19
第一章
❸
しおりを挟むそして第二の情報。
天気予報にも降水確率にも加わらない小雨が降っている点。
山の上の方で雨が降っていても、風の具合によっては川下、山の中腹にまで雨が降る。
だからこそ、この地域には日中でも小雨が降り、夜のうちに湿度の含まれた空気が冷えて地面を濡らしている。
この情報を得ていなければ、テントの中で寝てて風邪をひく。
予報を覆すほどの気温低下が予想されるからだ。
天気予報は観測所で計測されているのであって、キャンプ場で詳しく計測されているわけではない。
百均で買える簡易の温度計持参、湿度もわかるなら尚良い。
電池式の時計一体型では湿度一発で故障、というか電池が液もれする。
キャンプ場によってはライブで温度と湿度の情報を公開していることがあるため、情報収集は大事だ。
夏でも朝方は一気に気温が下がることがある。
放射冷却現象も関係しているけど、山の気温は思ったより低くなる。
山頂や川上の冷気は、キャンプ場にまで下りてくる。
「夏だから大丈夫だろう」という甘ちゃんな考えは、翌朝、風邪症状や腹痛などという形で自分に返ってくる。
夏に寝袋は蒸し暑いからイヤだろう。
その気持ちはよく分かる。
しかし…………蒸し暑いということは、朝方に気温が下がるということだ。
自然を甘く見てはいけない、ということを我が身で思い知るがいい。
暑くて飛び出すというなら、簡易扇風機や充電式の冷風扇を持っていこう!
そして腹巻き持参。
暑くて寝袋から飛び出しても、お腹は守られる。
翌朝、トイレと友だちになったり、恋人のように離れられないってことも起きない。
寝袋は足下が開くタイプもある。
虫刺されに注意だ!
最後に第三の情報。
これは第二の情報の延長線上にあるのだけど……連日の湿度を含んだ空気は、キャンプに必須な焚き火に不向きだ。
今では焚き火をするのに焚き火台の使用が必須になっているキャンプ場が多い。
マナーの守れないにわかキャンパーが増えたせいだ。
通常、焚き火は芝のない地面に石を組んでおこなうか、地面を10センチほど掘っておこなう。
周囲にむき出しの地面がなければ、焚き火台を使うのがルール。
数千円で購入できる、コンパクトに折り畳める焚き火台が多いのだから、ひとつくらい買えばいいのに、と思うけどね。
バカ者たちが、わざと芝生に火をつけて黒焦げにして笑っていたこともある。
……彼らは芝生の張り替え代金も含んだ弁償金を支払ってたけどね。
20万円以上だったかな?
そのことは規約に書かれているのでご注意を。
通常は地面に不燃性の専用マットを敷いて、その上に焚き火台を乗せて使う。
私もそのタイプ。
これだと、爆ぜた薪が芝に黒焦げをつくらないのと、焚き火台が汚れないため、片付けるのは残った煤を捨てるくらい。
以前、民芸品で購入した小さな竹箒を、煤を落とすのに重宝している。
過去には「後片付けが面倒」などという理由から、数千円のバーベキューコンロがそのまま廃棄されたというニュースもあった。
下手したら、設営に失敗したのか、ポールが曲がったテントやタープ。
片付けるのが面倒になったのか、一部が泥で汚れたイスやテーブルなどのキャンプ用品をそのまま置いて帰る連中までいるくらいだ。
……1回だけ使って要らないならくれって言ってもいいか?
【閑話休題。】
湿度が高ければ薪は使いにくい。
一般的に液体の着火剤が有名だけど、それを使った事故は起きる。
湿度が高いため、うまく燃えないからと言って追加で着火剤を撒いたり、最初から着火剤をボトル1本使った結果、思った以上の火力や火柱がたつことも。
その事故防止に、私はカセットコンロを持っていく。
テーブルでカセットコンロを使った料理、それを「キャンプに来てまで?」と馬鹿にする人もいる。
キャンパーの数だけ、その人にあったキャンプ時間というものが存在する。
本人がその過ごし方を望むなら、誰も口を挟む権限などない。
⁂
観光地を巡り、その土地の土産物を見物。
中には『本日のデザート』としてプリンなどを購入する。
これもまた、キャンプの醍醐味。
こうして、私が予約したキャンプ場に到着したのは12時を過ぎた頃。
「利用は3泊でしたね」
「はい、お願いします」
予約を確認後、キャンプ場によっては許可証代わりの札が渡される。
それを車の前方の見える位置に置いておくことで、「このキャンパーは使用許可を受けています」という証明になる。
たまに現れるのが、「バーベキューの日帰り客が無許可でキャンプ場を使用している」という迷惑な連中。
……残念ながら、この日もそうだった。
「先にきたもの勝ちだ」なんて勘違いしたファミリー層。
それも車3台で乗りつけているうえ、その隣で子どもたちが遊んでいた。
しかし、許可証を持っているこちらが有利。
「無料じゃないのか!」
「違いますね」
遠くからでも分かるマナー違反。
駐車する芝生とテントを張れる芝生の広さは違う。
その駐車が許された芝生とキャンプ用の芝生にまで車を乗せて3台も停めた上、隣のスペースに大型のテントを張っていた。
キャンプ場には専用のルールが決められている。
『テントは決められた場所に張ってください』
『車は1サイトに1台まで。2台目以降はバーベキュー場の駐車場を使用してください。また許可のない場所に車をとめないでください』
『テント用と駐車用の芝生の破損には、一面30万円を徴収します』
騒いでいた家族は顔面蒼白。
それもそうだろう。
自分たちがバーベキュー場だと思っていた場所は、実はキャンプ場だったのだから。
代表者として男性たちが管理棟まで連れて行かれたことで母親はソワソワしていたけど、子どもたちと一緒にバーベキューの続きを楽しんでいた。
「ここがキャンプ場なら、お金を払えばこのまま泊まってもいいわよね」
そんな声すら聞こえていたよ。
子どもたちが自転車など置いていて、芝がところどころ捲れていたのは、砂遊びのようにスコップを使って掘られたからだろうか。
ペグを地面に挿して穴があいたとしても、それは破損には含まれない。
軽く踏めば元に戻るからだ。
それを『道具を使って掘り起こした』のと一緒にしてほしくはないね。
32
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
子宮筋腫と診断されまして。《12/23 完結》
アーエル
エッセイ・ノンフィクション
徐々に悪くなる体調
気付いたら大変なことに!?
貴方ならどうしますか?
ハッピーエンドで終われるといいですねー。
❄12月23日完結しました
閲覧ありがとうございました
☆ここに出てくる病院は実在します。
病院名と個人名は伏せていますが、すべて実際に現在進行形で起きていることです。
(だから「ノンフィクション」のジャンルです)
特定するのはご自由ですが、言い回るのはおやめください。
問い合わせもお断りします。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
子供って難解だ〜2児の母の笑える小話〜
珊瑚やよい(にん)
エッセイ・ノンフィクション
10秒で読める笑えるエッセイ集です。
2匹の怪獣さんの母です。11歳の娘と5歳の息子がいます。子供はネタの宝庫だと思います。クスッと笑えるエピソードをどうぞ。
毎日毎日ネタが絶えなくて更新しながら楽しんでいます(笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる