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番外編:ウリエラのその後
「面白い結果がでているわね」
しおりを挟む「あれは本当に王子だったのか?」
モニターに映し出された、警戒もせずハンバーガーを頬張るウリエラの姿に驚きの声があがる。
さらに、紙コップの中身を飲む姿には呆れて声も出ない。
飲食を済ませ満腹といかなくても食欲を満たしたウリエラは、次は睡眠を貪るようだ。
「さあて、夢によって罪の意識は呼び起こされるかねえ」
「どうでしょうか。アレの『人間だった最後の記憶』はルーブンバッハ家の応接室です。その後は擬似体験で人生を繰り返すが、分岐点では必ず過去と同じ選択をします」
「もはや救いはない、ということか」
「はい、残念ながら」
「…………次の段階に進めよう。オーラシアの見立てでは、ポーリシアはあれ以上よくはならぬ」
「手足となる人工生命体を用意します」
「中にはアレを使う」
義父セイントは研究室の中の物体から目を離さずにそういった。
そこには肉体は失われて臓器だけになった、者だった物たち。
モニターには臓器ごとに意識が残っている。
脳だけではなく心臓や眼球にも『ウリエラの意識』が残っている。
それも個々に。
いま見ていたのは脳だが、目に残った意識は繰り返しゼアと出会った頃を繰り返し夢に見ているし、心臓は労働奴隷として送られた鉱山で恨みのある貴族たちに毎日タコ殴りされていた記憶をもち、右肺は薬物で仮死と蘇生を繰り返した記憶を残し、左肺は夜通し男たちに陵辱される男娼時代を繰り返す。
「一番反省の見られない脳を使った人工生命体は、オーラシアやポーリシアに命令されて意思とは別に従う自身を呪い苦しむだろう。それこそ最高の罰だ、そうは思わないかね?」
「それも良いですが、アレらをオーラシア様の店に配置し店員として働かせましょう。他人に仕えることのなかった彼らには十分苦痛だと思われます」
「言葉は丁寧に。娘たちに従うのだからな」
「もちろんです。主従関係は大事ですから」
意識に繋がれた電波はアインの研究所のモニターに映し出される。
白い部屋の中で従いたくない命令に素直に従う自分を目で見ているのか。
喚き、騒ぎ、暴れる姿は滑稽だ。
『あら、じゃあグレン。奥に乾燥させた薬草があるから持ってきなさい』
『ハイ、喜ンデ♪』
「はいじゃねえ! なにオーラシアに従っている! っていうか喜ぶな! やめろー!」
『オ持チ致シマシタ』
『ポーリシアに持ってって』
『ハイ、喜ンデ♪』
「素直に従うな! そうだ、その箱をオーラシアに投げつけろ! あのすました顔に叩きつけて潰してやれ! この! 私の言うとおりに動け!」
『ポーリシア様、コチラデ間違イゴザイマセンカ』
『ありがとう。そこの棚にしまって』
『ハイ、喜ンデ♪』
「ポーリシア……貴様、貴様が生きていたせいで私は……。殺せ! クソッ! なぜ私のいう通りにうごけないんだぁぁぁ!」
『グレン、ちょっとここで踏み台になって』
『ハイ、女王様! 悦ンデ♪』
「悦ぶなぁぁぁ~!!!」
「面白い結果がでているわね」
「裸を見せるなよ、悦ばせるだけだ」
「身の回りの世話は普通の人工生命体よ。グレンはただの荷運びと昇降機が近くにないときの踏み台よ。それに私たちの制服はパンツルックで私邸エリアには入れないわ。でも女性の裸をみせても手出しできないでしょ」
「そ・れ・で・も・だ!!!」
「……わかったわよ」
(まさか意識体になっても自慰をするなんて……言わないでしょうね)
(そのまさかだ。モニターを管理している研究員には女の子もいるからな。あんなのを見せられるのも可哀想だろう?)
(すぐに整備点検に出してください。性欲を感じたら意識体に電撃が走るように設定し直します)
(どこまで性欲が強いのかしら。良かったわ、オーラシア姉様と結ばれて精霊族にならずに済んで)
(彼らは意識体のまま、機械のボディーを取り替えていつまで生きられるか楽しみだ)
(私たちと同じ永遠を生きるかもね。そうなったら愉しいわね。次はどんなボディーがいいかしら。やっぱり恥ずかしいのがいいわよね)
(完)
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