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番外編:ウリエラのその後

私を拒むことなどなかったはずだ

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私は父に睨まれ、先ほどまで睨み合っていたはずの三家に憎しみの目を向けられている。
私はオーラシアに求婚した。
それを侮蔑の目を向けて断った上、父の耳にも届いた。
そのせいでこの三ヶ月ずっと私室に謹慎させられてきたんだ。

そんなある日、オーラシアの婚約破棄の話を聞いた。
チャンスだ!

もう一度オーラシアにプロポーズをしようとルーブンバッハ家へと向かった。
父には反対されていたが、あれは堅物だ。
だいたい第三王子を臣籍降下させるんだったら『コイツがいい』と言ったら差し出せ!
なにが「リッツン侯爵子息と婚約している」だ。
アイツは俺のお古に腰振って安い愛を囁いているじゃないか。

今日は婚約破棄になるらしい。
だったら、傷心のオーラシアに求婚すれば私のものだ。
断ろうものなら襲えばいい。
みんなの見ている前で服を破ればそれだけで十分さ。
オーラシア、お前のその高飛車な態度を…………

「貴様は殺しても罪に問わん、と国王陛下より許可をもらっている。そう言いましたよね。黙って死ねや、このクズ」
「オーラシア。この無礼を許されたければ私のプロポーズを受けろ」
「あなたは、さっき私が言ったことを理解してビビっていたではありませんか」
「……何を言っている」
「貴様もデデと同じ存在クズだということだ」

私とオーラシアのやりとりに父の声が割って入ってきた。
なぜ……

「なぜ? 部屋で謹慎しているはずのお前がルーブンバッハ家に向かったと聞いたからな」
「父上、私はこのオーラシアを愛しています!」
「私は愛してなどいない。気持ち悪い、汚物」
「無礼だぞ!」
「無礼なのは貴様だ!」

なぜ父が私に怒鳴るんだ。
いまのは間違いなくオーラシアの方が無礼じゃないか!

「父上、私は第三王子で」
「婦女暴行でどれだけたくさんの女性を傷付けた?」
「私は尊い存在で」
「尊い存在? 誰が? まさかこのクズが? 陛下、このクズを幽閉にするという約束、反故にしやがった以上は国を滅ぼされても文句はないですよね」
「無礼だぞ、オーラシア!」
「…………へえ。貴様は私と間違えて双子の姉を犯して店の金を奪って。それで私に愛されていると本気で思っていたのか?」

…………何の話だ?
ルーブンバッハ家、いや領内で襲ったのは一件。
錬金術師の女が一人でやっている……そういえばオーラシアは在籍中に錬金術師の資格を取得して家を出た……いや、双子の片割れの話か?
しかし今『私と間違えて』と言った。
……残った片割れは次期当主。
では私たちはルーブンバッハ侯爵の次期当主に手を出したというのか……
オーラシアの言葉に私は「なぜあの店をピンポイントで狙ったのか」という後悔しかなかった。
別の店なら、違う女なら…………こんなことにならなかったはずだ。
そうしたらオーラシアが私を拒むことなどなかったはずだ。

「幽閉せずに謹慎してた、と言ったな」

オーラシアが殺気をまとって父を睨むと「申し訳ない」と謝罪した。
なぜ国王である父が小娘に謝罪する!

「原因は王妃か?」
「ああ。……最後にようやく生まれた子。アレは第一子が流れて、やっと生まれた子だ」
「だからといって、女性を犯しをばら撒いてもいい理由になるか!」

ルーブンバッハ侯爵が怒鳴った。
父と威圧が違う。
父の代わりに国王に、と望まれるだけはある。

「王妃に毒杯を。罪を『王妃という立場を悪用して軽くした』とバレたくなければな。その愚行をそこのクズが猿真似をした。許していいことと悪いこと、それも分からんクズなら王太子諸共皆殺しにするぞ」

何を言っている?
王家に手を出してゆるされると思っているのか!

「で? この悪人をどうする? もう幽閉なんて甘い罰はきかないよ。忘れているかもしれないけど、私もコイツらが害したポーリシアも王家の血を引いている。……それがどういうことか、わかってるよね。そしてデデ以外の仲間たちがどんな人生の結末を迎えたかも」

……先に王族を害したのはこちらだ。
それを王子という理由から幽閉という寛大な処置を受けたのに、王妃という権力で謹慎処分にした。
それにもかかわらず、私は部屋を抜け出してここで……被害者宅で暴挙に出た。
反省していない私を父はもう許してはくれない。

『殺しても罪に問わない』

その言葉は、私が言わせたのだと…………憎しみのこもった目に囲まれてようやく理解した。
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