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本章

面白いことを考えたんだ

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私は自分の稼いだお金を姉の持参金として直接リッツン家へ渡しに行った。
それによって、婚約者がポーリシアではなく私オーラシアだとデデに印象付けた。
持参金を私が払ったからといってもだったのに。
それに事件一ヶ月後に渡したのには理由がある。
すでに『第三王子と不愉快な子息たち』は次々と処分されて連絡が取れなくなっていた。
それを知らないデデだったが、仲間たちに連絡して大金が舞い込んだから一緒に使おうとはならなかった。

降って湧いた持参金現ナマを、デデはゼアと共に使いまくった。
二ヶ月で使い切るとは思っていませんでしたよ。
私も甘かったですねえ。
そしてあの日……彼らは私の前に姿を現した。
を求めて。
それを私たちは婚約破棄に切り替えた。


「オ持チ致シマシタ」
「ポーリシアに持ってって」
「ハイ、喜ンデ♪」

接客は私が管理している。
そう、この店は店員も人工生命体ロボットで、生きているのは私たち姉妹のみ。
ルーブンバッハ小国のウリである人工生命体ロボットの機能や対応を知るために実装された、最先端の店として有名になっている。

「ポーリシア様、コチラデ間違イゴザイマセンカ」
「ありがとう。そこの棚にしまって」
「ハイ、喜ンデ♪」

グレンは従順にポーリシアの命令に従う。
その姿を見て私はほくそ笑む。

「オーラシア義姉ねえさん。ポーリシア義姉さんに手を出した連中、やっぱり長く使えなかったよ」
「そう、それはそれでムカつくわね」
「それで、面白いことを考えたんだ。僕の人工生命体ロボットにね……」

アインの研究は成功した。
それは『切り刻まれた肉体それぞれに本人の意識は残っている』ことを実証させた。
人工脳に主人を登録させて、命じられたことのみに従う。
この店にいる人工生命体ロボットの一部は、ポーリシアを襲った連中の『成れの果て』だ。
もちろん、それを知っているのはアインと私、女王となったユーレシアと父の四人だけだ。
……ああ、人工生命体ロボットに埋め込まれた連中の意識も知っている。

ガードロボとお掃除ロボット。
つまり人工生命体ロボットでも最下層の『仕われるだけの存在』に、彼らのほとんどの意識が埋め込まれている。
命じてきた連中はボディーが壊れるまで仕えるようになったいま、どう思っているのか。
壊れても新しいボディーに取り替えられるだけなので、このまま意識が残り続けるのならこれはこれで終身刑終わらない罰に相応しい。
意識だけになったため、ポーリシアへの罪悪感や命じられる不快感と屈辱があっても、機械のボディーは素直に従っている。
ときどき、私の踏み台にしている。
自動昇降台ならあるけど、呼ぶより近くにいるグレンに踏み台になってもらった方が早いこともあるからね。

あのグレンにはウリエラの意識が入っている。
彼はあのあと、仲間たちと同じ滅びの道をたどった。
王は退位して王太子に道を譲った。
そして新王は多大な功績を認めて、ルーブンバッハの独立を促した。

「ウリエラの件があったにもかかわらず、我が国に多大な貢献を与えてくださった。私たちにはその恩を労うことはできても報いることはできない。もう、この国を見捨てて自由になってください。本当に申し訳ありませんでした」

あの事件を後悔しているのは王家だけでなく貴族も同様。
公になっていなくても貴族社会では知られた事実。
被害者と加害者。
被害者のルーブンバッハ侯爵家は王族でもある。
そして被害者の一族に支えられている加害者一族。
辛酸を嘗めて十年を耐えてきた。
これ以上も耐えていくか、滅びを覚悟するか。
彼らは後者を選んだのだ。
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