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ラーン王国編ー正騎士へー(メルトSIDE)
沈黙の騎士
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「騎士様ー」
「騎士様ー」
わらわらと子供達が寄ってきて俺に手を伸ばす。俺の腕に掴まるから、腕を持ち上げると子供が喜ぶ。するとますます子供にたかられる。
「はーい、みんな~もうお仕事に戻らないといけないからね?また今度。」
ポリカがやんわりと子供達を追い払ってくれた。
「はーい、騎士様またねー!」
「またねー!」
去って行く子供達に頷くと、ポリカが息を吐く。
「メルト?少しは喋ってくれないと……」
俺は首を傾げた。
「いや、だからね?」
子供達が去っていく方向を見て手を振った。
「特に必要ないと思う。」
ポリカが頭を抱えた。何故だ。
子供達が去った後、少し治安が悪い地域に入った。柄の悪い連中が多い裏町の方だ。騎士には表だって逆らったりはしないが身の危険を感じる場所だ。
特にフィメルには危険がある場所だ。だが、ここも騎士の見回りのコースになっている。
やや睨むようにして、中を歩いて行く。道は薄汚れていて、あちこちに座り込んでいる浮浪者らしきものがいる。饐えた匂いのする場所を歩いていると自然と剣に手がかかる。争いごとは起こってないようだがかなりの数の視線を感じる。
この地区をぐるりと回って元の通りに戻る。それが見回りのコースだ。たまに事件が起きてけが人や死体が転がっていることもあると聞いた。
緊張感のある空気の中、しばらく歩けば大通りに戻るという時、騒動に出会った。
やや細身だが鋭い目をしているメイルとガタイのいい熊のような大きいメイルが睨み合っていた。
その二人の後ろには手下と思われるメイルが何人かいて、そちらも睨み合っていた。
「俺のショバを荒らすとはいい度胸だな。」
「そっちが間抜けだからじゃねえか?」
そうお互いに言った後、お互いに殴りかかろうとした間に俺は割り込んだ。
二人の拳を手で止め、握って捻って地面に引き落とした。二人は仰向けに倒れた。
二人は、は?という顔をしていたが、俺は腰のマジックポーチから縄を引き出して拘束すると二人の首根っこを掴んで引きずって歩き出した。
「あー、もう。あんたたち。あとで騎士団の詰所に来なさい。」
ポリカがぽかんとしていた他のゴロツキたちに言う。
「なんだと、離しやがれ!」
「そうだ、やっちまえ!」
両方のゴロツキたちが飛びかかってくるがポリカが剣の柄で腹を狙って打っていって動けなくしていた。
「これ以上すると、あんたたちも捕まえるよ?」
ポリカが睨みをきかせて言い聞かせるとそいつらは逃げ出したようだ。さすがポリカ。
「いきなり飛び込まないでほしいよ。危ないだろ?」
ポリカが怒ってくる。
「問題ない。」
「あーもう。そのまま引きずって行くつもり?」
俺が頷くとポリカは肩を落とした。詰所に二人を預けて報告をする。主にポリカが報告しているが。
「なあ、また裏町のゴロツキ捕まえて来たのか?」
「あいつら取り締まりに手こずってた裏町のグループリーダーじゃね?」
「あれ、捕まえたところから引きずって来たらしくてあいつらズボンが擦り切れてたぞ。」
詰所に戻って来ていた他の見回りに回ってた連中が何か言っている。聞こえないけど。
「わかった。メルト、ポリカよくやった。もう上がっていいぞ。」
リンド先輩が報告書をまとめた。
俺とポリカは頷いて宿舎に戻った。
「……お腹すいた。」
「わかった。先に食堂行こう。」
ポンと背中をポリカが叩いた。俺は頷いて一緒に食堂に向かった。
「また子供達に群がられてたよ。メルトは。」
ポリカは笑いながら今日の出来事をミランたちに話す。エメリとミランが先にテーブルについていたので俺たちはそこに合流した。エメリも第一に配属になった。ポリカとエメリが同室で、俺たちの部屋の隣だ。
「あーメルト大きくなったからねー。つい、2、3年前まで可愛かったのに!今では抱き込むこともできないよ。背が違いすぎて……」
ミランが恨みがましく見つめてくる。
「もっと食べたらよかったのに……」
俺がボソッと言うと睨まれたから視線を逸らした。視線の先にリスクがいてこっちに寄ってくる。
「メルト~明日ちょっと食事会に付き合ってくれないかな?おごるから。俺の他にロステとグリメ、事務局の子2人が来るんだけどいいかな?ちょっと来るはずの子が来なくなっちゃってさ?」
奢りか。まあ、明日の休みは鍛錬しか予定になかったから、奢りならいいが。
「奢り、だな?」
とりあえず、確認しておこう。リスクは引きつった顔で店の名前と時間をいうと去っていった。
「メルト、あんたほんと鈍いね?」
ポリカに呆れたように言われたが、何のことだかわからないので首を傾げると食事に戻った。油断すると肉が落ちるからいっぱい食べないとダメなのだ。肉を。
翌日、言われた店に行くと6人テーブルですでにみんな揃っていた。席はロステの前になった。ロステがめちゃくちゃ焦った顔してたけど、なんでだろう?
隣は事務局のフィメル二人で、頭を下げたらニコニコした顔で会釈された。
「沈黙の騎士様も来たんだ。今日は得したね?」
「うん。」
沈黙の騎士様?誰だ?それ。
ニコニコした二人の様子に首を傾げつつ、リスクが音頭をとってエールで乾杯した。
食事はもうオーダーしてたみたいで、何も注文しなくても運ばれて来た。みんなよく話してて料理が冷めるなあと思いつつ、食べることに専念してた。
「メルトはこういうの興味あったんだ?」
ロステが恐る恐るといった感じで聞いて来た。
「ん?……うん?」
美味しい食事と賑やかな会は嫌いじゃない。まあ、奢りじゃなければ来なかったけれど。俺は頷くと、ロステは頭を抱えたようだった。
リスクがちらっとこっちに視線を向けて首を横に振った。なんだろう?
たまに事務局の子たちが質問してくるが、一言二言返すか、頷くくらいしかしなかった。
そうしたらその子たちはやっぱり沈黙の騎士様だ!と盛り上がっていた。
ん?沈黙の騎士様ってもしかして、俺のことか?
とりあえずいっぱい食べて満足したところで、会も終了のようだった。リスクは前にいた事務局の子を、グリメも目の前に座ってた子を送るようだった。そういう流れだったのか、ロステが送ると言って来た。まあ、帰る先は同じだと思うが、一応礼を言って一緒に帰ることにした。
「メ、メルト、今日は楽しかった?」
料理は美味しかったし、一緒にいたメンバーも不快な感じはなかったし、楽しかったといえば楽しかったな。そう思って俺は頷いた。
「なあ。沈黙の騎士様って誰のことだ?あの子たちが言ってたけど。」
気になることを聞いてみた。こうして歩くのは何回もあったけど、そのときは見上げていたのに、いつのまにかロステを見下ろす視線になっていた。
「え!?……あーその……」
ロステの視線が泳ぐ。じっと見つめるとなぜか赤くなった。
「メルトのことだけど…」
はああ??
「ミラン、俺は沈黙の騎士なのか。」
部屋に帰って来たらミランがいた。
ミランはキョトンとして吹き出した。
「や、やだなー知っちゃったのかー」
しかもお腹抱えて笑い出した。
「ミ・ラ・ン……」
俺が声を低くすると、ピタッと止まった。
「そうだよー。メルト、ほとんど喋らないから沈黙の騎士様って呼ばれ出して……今じゃ王都中知ってると思うよ?」
……なんだって?
「二つ名って強いからとかじゃ、ないの、か?」
俺は思わず床に手をついた。ミランがしゃがみこんで俺を見る。
「メルトは強いじゃん。黙ってケンカ止めてくれるし、迷子もちゃんと面倒見てくれて、子供達の相手もしてくれてしかも寡黙。なんてカッコイイんだろうと、人気急上昇中。」
ミランが褒めてくれるが、恥ずかしくてしばらく立ち上がれない。耳まで今真っ赤だと思う。
「そういうところは、大きくなっても変わってないねーメルト。可愛いー」
上から抱きつかれて俺は床に沈んだ。
「騎士様ー」
わらわらと子供達が寄ってきて俺に手を伸ばす。俺の腕に掴まるから、腕を持ち上げると子供が喜ぶ。するとますます子供にたかられる。
「はーい、みんな~もうお仕事に戻らないといけないからね?また今度。」
ポリカがやんわりと子供達を追い払ってくれた。
「はーい、騎士様またねー!」
「またねー!」
去って行く子供達に頷くと、ポリカが息を吐く。
「メルト?少しは喋ってくれないと……」
俺は首を傾げた。
「いや、だからね?」
子供達が去っていく方向を見て手を振った。
「特に必要ないと思う。」
ポリカが頭を抱えた。何故だ。
子供達が去った後、少し治安が悪い地域に入った。柄の悪い連中が多い裏町の方だ。騎士には表だって逆らったりはしないが身の危険を感じる場所だ。
特にフィメルには危険がある場所だ。だが、ここも騎士の見回りのコースになっている。
やや睨むようにして、中を歩いて行く。道は薄汚れていて、あちこちに座り込んでいる浮浪者らしきものがいる。饐えた匂いのする場所を歩いていると自然と剣に手がかかる。争いごとは起こってないようだがかなりの数の視線を感じる。
この地区をぐるりと回って元の通りに戻る。それが見回りのコースだ。たまに事件が起きてけが人や死体が転がっていることもあると聞いた。
緊張感のある空気の中、しばらく歩けば大通りに戻るという時、騒動に出会った。
やや細身だが鋭い目をしているメイルとガタイのいい熊のような大きいメイルが睨み合っていた。
その二人の後ろには手下と思われるメイルが何人かいて、そちらも睨み合っていた。
「俺のショバを荒らすとはいい度胸だな。」
「そっちが間抜けだからじゃねえか?」
そうお互いに言った後、お互いに殴りかかろうとした間に俺は割り込んだ。
二人の拳を手で止め、握って捻って地面に引き落とした。二人は仰向けに倒れた。
二人は、は?という顔をしていたが、俺は腰のマジックポーチから縄を引き出して拘束すると二人の首根っこを掴んで引きずって歩き出した。
「あー、もう。あんたたち。あとで騎士団の詰所に来なさい。」
ポリカがぽかんとしていた他のゴロツキたちに言う。
「なんだと、離しやがれ!」
「そうだ、やっちまえ!」
両方のゴロツキたちが飛びかかってくるがポリカが剣の柄で腹を狙って打っていって動けなくしていた。
「これ以上すると、あんたたちも捕まえるよ?」
ポリカが睨みをきかせて言い聞かせるとそいつらは逃げ出したようだ。さすがポリカ。
「いきなり飛び込まないでほしいよ。危ないだろ?」
ポリカが怒ってくる。
「問題ない。」
「あーもう。そのまま引きずって行くつもり?」
俺が頷くとポリカは肩を落とした。詰所に二人を預けて報告をする。主にポリカが報告しているが。
「なあ、また裏町のゴロツキ捕まえて来たのか?」
「あいつら取り締まりに手こずってた裏町のグループリーダーじゃね?」
「あれ、捕まえたところから引きずって来たらしくてあいつらズボンが擦り切れてたぞ。」
詰所に戻って来ていた他の見回りに回ってた連中が何か言っている。聞こえないけど。
「わかった。メルト、ポリカよくやった。もう上がっていいぞ。」
リンド先輩が報告書をまとめた。
俺とポリカは頷いて宿舎に戻った。
「……お腹すいた。」
「わかった。先に食堂行こう。」
ポンと背中をポリカが叩いた。俺は頷いて一緒に食堂に向かった。
「また子供達に群がられてたよ。メルトは。」
ポリカは笑いながら今日の出来事をミランたちに話す。エメリとミランが先にテーブルについていたので俺たちはそこに合流した。エメリも第一に配属になった。ポリカとエメリが同室で、俺たちの部屋の隣だ。
「あーメルト大きくなったからねー。つい、2、3年前まで可愛かったのに!今では抱き込むこともできないよ。背が違いすぎて……」
ミランが恨みがましく見つめてくる。
「もっと食べたらよかったのに……」
俺がボソッと言うと睨まれたから視線を逸らした。視線の先にリスクがいてこっちに寄ってくる。
「メルト~明日ちょっと食事会に付き合ってくれないかな?おごるから。俺の他にロステとグリメ、事務局の子2人が来るんだけどいいかな?ちょっと来るはずの子が来なくなっちゃってさ?」
奢りか。まあ、明日の休みは鍛錬しか予定になかったから、奢りならいいが。
「奢り、だな?」
とりあえず、確認しておこう。リスクは引きつった顔で店の名前と時間をいうと去っていった。
「メルト、あんたほんと鈍いね?」
ポリカに呆れたように言われたが、何のことだかわからないので首を傾げると食事に戻った。油断すると肉が落ちるからいっぱい食べないとダメなのだ。肉を。
翌日、言われた店に行くと6人テーブルですでにみんな揃っていた。席はロステの前になった。ロステがめちゃくちゃ焦った顔してたけど、なんでだろう?
隣は事務局のフィメル二人で、頭を下げたらニコニコした顔で会釈された。
「沈黙の騎士様も来たんだ。今日は得したね?」
「うん。」
沈黙の騎士様?誰だ?それ。
ニコニコした二人の様子に首を傾げつつ、リスクが音頭をとってエールで乾杯した。
食事はもうオーダーしてたみたいで、何も注文しなくても運ばれて来た。みんなよく話してて料理が冷めるなあと思いつつ、食べることに専念してた。
「メルトはこういうの興味あったんだ?」
ロステが恐る恐るといった感じで聞いて来た。
「ん?……うん?」
美味しい食事と賑やかな会は嫌いじゃない。まあ、奢りじゃなければ来なかったけれど。俺は頷くと、ロステは頭を抱えたようだった。
リスクがちらっとこっちに視線を向けて首を横に振った。なんだろう?
たまに事務局の子たちが質問してくるが、一言二言返すか、頷くくらいしかしなかった。
そうしたらその子たちはやっぱり沈黙の騎士様だ!と盛り上がっていた。
ん?沈黙の騎士様ってもしかして、俺のことか?
とりあえずいっぱい食べて満足したところで、会も終了のようだった。リスクは前にいた事務局の子を、グリメも目の前に座ってた子を送るようだった。そういう流れだったのか、ロステが送ると言って来た。まあ、帰る先は同じだと思うが、一応礼を言って一緒に帰ることにした。
「メ、メルト、今日は楽しかった?」
料理は美味しかったし、一緒にいたメンバーも不快な感じはなかったし、楽しかったといえば楽しかったな。そう思って俺は頷いた。
「なあ。沈黙の騎士様って誰のことだ?あの子たちが言ってたけど。」
気になることを聞いてみた。こうして歩くのは何回もあったけど、そのときは見上げていたのに、いつのまにかロステを見下ろす視線になっていた。
「え!?……あーその……」
ロステの視線が泳ぐ。じっと見つめるとなぜか赤くなった。
「メルトのことだけど…」
はああ??
「ミラン、俺は沈黙の騎士なのか。」
部屋に帰って来たらミランがいた。
ミランはキョトンとして吹き出した。
「や、やだなー知っちゃったのかー」
しかもお腹抱えて笑い出した。
「ミ・ラ・ン……」
俺が声を低くすると、ピタッと止まった。
「そうだよー。メルト、ほとんど喋らないから沈黙の騎士様って呼ばれ出して……今じゃ王都中知ってると思うよ?」
……なんだって?
「二つ名って強いからとかじゃ、ないの、か?」
俺は思わず床に手をついた。ミランがしゃがみこんで俺を見る。
「メルトは強いじゃん。黙ってケンカ止めてくれるし、迷子もちゃんと面倒見てくれて、子供達の相手もしてくれてしかも寡黙。なんてカッコイイんだろうと、人気急上昇中。」
ミランが褒めてくれるが、恥ずかしくてしばらく立ち上がれない。耳まで今真っ赤だと思う。
「そういうところは、大きくなっても変わってないねーメルト。可愛いー」
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