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祝宴

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ラジュファムがそそくさと退散した後、これはもうボクたちの独壇場であった。生贄にされた交渉官が憐れであるほどに。

話し合いの主導権を握ったボクたちは、想定外の危険に見舞われ、本来は州が駆除するはずだった魔獣をも倒した事実を持ち出した。そして、様々な名目で上乗せ金の支払いを約束させる事に成功する。ゼットツ州が希少金属の発掘で、莫大な富を蓄えている事を見越しての交渉術であった。

また討伐したモンスターの半分の権利はパーティーにある契約条項を利用し、魔獣の体の半分をこちらの言い値で引き取らせる事にも成功する。何せ魔獣の値段など誰も想定していないのだから”悪辣にならない範囲”で、吹っ掛けたのは言うまでもない。

ここではザレドスの知識が大いに役に立ち、交渉官に有無を言わさぬ弁舌が冴え渡った。ポピッカは安心したように微笑み続け、ゲルドーシュはといえば、呆気にとられるばかりといった表情が崩れる事はなかった。

その晩は、施設のレストランで祝杯となる。それぞれが、満足をかなり大きく上回る報酬を手にし、軍の後ろ盾があるため報復の心配もない。正に理想的な結末を迎えたのだった。

「それじゃぁ、依頼の達成に乾杯」

ボクの音頭で、皆がグラスを打ち鳴らす。

「いやぁ、上手く行きましたね。軍の援護があったとはいえ、あそこまでこちらの希望通りになるとは思いませんでしたよ」

酒に弱いのか、早くも鼻を赤らめたザレドスが歓談の口火を切る。

「ほんと、ほんと。一時はどうなるかと思ったけどさ。これでテュラフィーも大喜び間違いなしさ」

事情を知らなかった事もあり、交渉を壊しかけたゲルドーシュもそれに続く。

「私は特に、心配はしていませんでしたわ。恐らくですが、昨日の晩に部屋を訪れたウエイター。あれが軍の伝令だったんですのよね?」

飲酒を禁じられてはいない、フォラシム教の神父ポピッカもご機嫌だ。

「それそれ、何で事前に教えてくれなかったんだよ。おかげでとんだ恥をかいちまったぜ」

「何言ってるんですの。あの時あなた、既にグースカ眠っていたじゃありませんの」

ゲルドーシュの文句に、ポピッカがボヤいた。

「だけど、後で教えてくれたっていいじゃんか」

「ごめん、ごめん。だけどさ、もし本当の事を言ったら、キミは顔に出るだろ。下手すりゃニタニタし通しかも知れない。それだと、時間稼ぎをしたいこちらとしては困るんだ。相手が怪しむからね」

ゼットツ州名産のワインを飲みながら、ボクは戦士に説明する。

「えぇ? 馬鹿にしないでくれよ。俺だって知らぬふりの芝居くらい……」

「できるんですの?」

「……ん~、無理か、やっぱり」

全てが順調に終わったせいか、ポピッカのツッコミにも素直に応じるゲルドーシュ。

「でも、私にまで黙っているとは、どういう事でしょうか?」

冗談めかして、ポピッカがボクに振る。

「い、いやすみません。もちろんポピッカさんは大丈夫だと思いましたが、万が一、盗聴されていた場合に備えて黙ってました。それにポピッカさんなら、全てを察してくれるだろうって……」

「まぁ、お世辞がうまい事」

一同が笑う。

「そう言えばよ。ザレドスの旦那。魔獣を倒した時のさ”あの事”覚えているだろうな?」
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