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もう一段の手柄
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「奴に、それを認めさせる事が出来るかも知れません」
「何だって?」
ザレドスの一言に、隊長の目の色が変わる。
「先ほどスタンが地下8階の安全地帯に仕掛けた罠の話をしましたよね。実は昨日も同じ罠を仕掛けていまして、まぁ、単純なフレーム系のものなんですが、それがまんまと図に当たったんですよ。おかげで奴は、相当のダメージを負ったはずです。
ただその罠は、奴を傷つけただけではないのです」
ザレドスの言に、ゲルドーシュとポピッカが顔を見合わせた。無理もない。これはまだ、彼らに話していない情報だ。
「と、言うと」
隊長が食い入るようにザレドスへ迫る。彼の態度は、このミッションがゼットツ州にとって、如何に重要なものであるかを物語っていた。
「フレームの中に特殊な魔力残差を残す仕掛けをしておいたのですよ。だから奴の体には、今なおその痕跡が確実に残っていると思います」
「ん~、だからそれが何なんだ?」
細工師の説明に、ゲルドーシュがたまらず口を出す。
「地上階と地下一階の崩落の後、奴がこのダンジョンに居たと証明できるというわけか!」
普通に考えれば、崩落の後にダンジョンへ立ち入る事は不可能だ。しかし魔力残差が確認できれば、隊長の言った通り、崩落後にダンジョンへ立ち入った事になる。すなわち、そうするためには、抜け穴を通るしかないわけだ。
偶然にも隊長がゲルドーシュの疑問に答える形となった。
「いや、大変感謝する。ガスラムの狡猾さには、こちらも翻弄されっぱなしだったんだ。これで奴を追い詰める事が出来る!」
ボクは隊長の悦び方から、彼らも妨害者ガスラムにはかなり苦労していたのだと察した。
「あ、だから……」
隊長が思わず言葉を漏らす。
「実はガスラムを捕まえた時、おかしな事があったんですよ。状況からして奴が何らかの不埒な行動をしていたのは明らかだったので、こちらとしては奴がもっと抵抗すると思っていました。まぁ、州兵も一目置くほどの強力な魔法使いですからね、奴は。
それなのに、ただ意味もない抗弁をするだけで反抗する素振りがない。簡単な身体検査をすると回復途中にはありましたが、かなりの火傷の跡があったんです。だから抵抗しなかった、いや出来なかったんでしょう」
あぁ、やはりこちらが仕掛けた罠の効果は絶大だったんだ。奴は多分、大量のフレームを浴びて相当な重傷を負った。すぐには抜け穴を通って外へ行ける状態ではなかったので、自らに回復魔法をかけるかポーションを飲むかしてダンジョンへ留まったに違いない。
そして本来なら暫くして脱出するつもりが、ボクたちの真夜中の進軍に驚いて広間まで密かにつけてきたというわけか、
「それでは他に聞きたい事は……」
「わぁ――っ! 何だこれは――!!!」
隊長が次の質問を促そうとした時、広間の方から、軍人とは思えぬ甲高く狼狽した声が響いてくる。
「おい、どうした!? 何事だ!!」
その声に応えるべく、通路を通って兵隊が一人、隊長の元へ一目散に駆け寄って来た。
「大変です! 大変な事態です!」
「落ち着け! だから一体何が大変なんだ!?」
錯乱状態に近い兵士の形相に、隊長も困惑しているようだ。
「魔獣です! 奥の部屋に魔獣が!!」
「何? 魔獣!? 何をバカな事を言ってるんだ。こんなところに魔獣がいるわけないだろう!」
部下の支離滅裂ともいえる言動に、隊長の顔に不安と不信の色が見え始める。
「あぁ、魔獣な、いるよ。ってか、いたと言ったほうがいいよな。もう、くたばってるわけだからさ」
ゲルドーシュが、からかうように言った。
「ちょっ、ちょっとどういう事なんだ。魔獣だって? そんな代物がここに居たっていうのか! そんなバカな!!」
それまでの丁寧な口調から一転、かなり高圧的とも取れるもの言いで、隊長はボクたちを睨みつけた。
「何だって?」
ザレドスの一言に、隊長の目の色が変わる。
「先ほどスタンが地下8階の安全地帯に仕掛けた罠の話をしましたよね。実は昨日も同じ罠を仕掛けていまして、まぁ、単純なフレーム系のものなんですが、それがまんまと図に当たったんですよ。おかげで奴は、相当のダメージを負ったはずです。
ただその罠は、奴を傷つけただけではないのです」
ザレドスの言に、ゲルドーシュとポピッカが顔を見合わせた。無理もない。これはまだ、彼らに話していない情報だ。
「と、言うと」
隊長が食い入るようにザレドスへ迫る。彼の態度は、このミッションがゼットツ州にとって、如何に重要なものであるかを物語っていた。
「フレームの中に特殊な魔力残差を残す仕掛けをしておいたのですよ。だから奴の体には、今なおその痕跡が確実に残っていると思います」
「ん~、だからそれが何なんだ?」
細工師の説明に、ゲルドーシュがたまらず口を出す。
「地上階と地下一階の崩落の後、奴がこのダンジョンに居たと証明できるというわけか!」
普通に考えれば、崩落の後にダンジョンへ立ち入る事は不可能だ。しかし魔力残差が確認できれば、隊長の言った通り、崩落後にダンジョンへ立ち入った事になる。すなわち、そうするためには、抜け穴を通るしかないわけだ。
偶然にも隊長がゲルドーシュの疑問に答える形となった。
「いや、大変感謝する。ガスラムの狡猾さには、こちらも翻弄されっぱなしだったんだ。これで奴を追い詰める事が出来る!」
ボクは隊長の悦び方から、彼らも妨害者ガスラムにはかなり苦労していたのだと察した。
「あ、だから……」
隊長が思わず言葉を漏らす。
「実はガスラムを捕まえた時、おかしな事があったんですよ。状況からして奴が何らかの不埒な行動をしていたのは明らかだったので、こちらとしては奴がもっと抵抗すると思っていました。まぁ、州兵も一目置くほどの強力な魔法使いですからね、奴は。
それなのに、ただ意味もない抗弁をするだけで反抗する素振りがない。簡単な身体検査をすると回復途中にはありましたが、かなりの火傷の跡があったんです。だから抵抗しなかった、いや出来なかったんでしょう」
あぁ、やはりこちらが仕掛けた罠の効果は絶大だったんだ。奴は多分、大量のフレームを浴びて相当な重傷を負った。すぐには抜け穴を通って外へ行ける状態ではなかったので、自らに回復魔法をかけるかポーションを飲むかしてダンジョンへ留まったに違いない。
そして本来なら暫くして脱出するつもりが、ボクたちの真夜中の進軍に驚いて広間まで密かにつけてきたというわけか、
「それでは他に聞きたい事は……」
「わぁ――っ! 何だこれは――!!!」
隊長が次の質問を促そうとした時、広間の方から、軍人とは思えぬ甲高く狼狽した声が響いてくる。
「おい、どうした!? 何事だ!!」
その声に応えるべく、通路を通って兵隊が一人、隊長の元へ一目散に駆け寄って来た。
「大変です! 大変な事態です!」
「落ち着け! だから一体何が大変なんだ!?」
錯乱状態に近い兵士の形相に、隊長も困惑しているようだ。
「魔獣です! 奥の部屋に魔獣が!!」
「何? 魔獣!? 何をバカな事を言ってるんだ。こんなところに魔獣がいるわけないだろう!」
部下の支離滅裂ともいえる言動に、隊長の顔に不安と不信の色が見え始める。
「あぁ、魔獣な、いるよ。ってか、いたと言ったほうがいいよな。もう、くたばってるわけだからさ」
ゲルドーシュが、からかうように言った。
「ちょっ、ちょっとどういう事なんだ。魔獣だって? そんな代物がここに居たっていうのか! そんなバカな!!」
それまでの丁寧な口調から一転、かなり高圧的とも取れるもの言いで、隊長はボクたちを睨みつけた。
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