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扉の奥の秘宝 (25) 謎解き1
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「話を聞くなら、静かにしてくれよ。レネフィル。
まず、オレの部屋の前で兵士のお前を見た後、オレはボンシックに、宝物要塞に何人の兵士がいるかと聞いた。そして、オレが見た奴がいるかを調べたんだ。
だが全員を確認しても、あの兵士と同じ顔をした奴は見つからない。そこでオレは”誰かが、実在しない兵士に変装している”と考えたんだ。もちろんその時には、お前が化ける魔法を使えるなんてわかってはいなかったけどな。
実在する兵士に化けなかったのは、万が一オレに見つかって、その後、そいつに詰問したら騒ぎが大きくなると思ったんだろう。当然、そいつからすれば、オレが言いがかりをつけていると考えるだろうからな。
そうなれば、下手をすりゃ鍵開け勝負どころじゃなくなる」
とうとうと、自分の見立てを述べるフューイに、興奮していたレネフィルも思わず聞き入ります。
「じゃぁ、なぜオレが兵士の正体を見抜けたのか。それは、罠を張ったからなんだよ」
「罠?」
モゼントが、訝しんだ声を出しました。
「もったいぶるのは嫌いなんで、さっさと種明かしをするぞ」
フューイは、ポケットから例の魔法レンズを取り出します。そして、レンズの下にあるボタンを押すと……。
「あっ!」
モゼントとレネフィルが、思わず声を上げました。無理もありません。突然、レネフィルの両手に、光る斑点模様が現れたのですから。
「貴様、何をした!」
予想もしなかった出来事に、レネフィルがフューイを睨みつけます。本当に、彼女の変わりようにはビックリです。
「それはダンジョンで使う”マーキング用のインク”だよ。迷いそうな時には、壁に塗り付けるわけさ。光っているから、暗闇でも見つけやすい。まぁ、ちょっと洗ったくらいじゃ、落ちる事はない」
あぁ、いつぞやフューイが自室で取り出した小箱には、これが入っていたんですね。でも変ですね。さっきまでは、何も光っていませんでしたよ。
「何故、急に光リ始めたのか、疑問に思ってるのだろう?」
盗賊一味の心の中を見透かしたように、フューイが機先を制します。言われた二人の心中は、さぞや穏やかではないでしょうね。
「普通は光るようにしておくんだが、ダンジョンの中には知性の高い魔物がいる場合もある。いかにも”目印です”といったマーキングをしていると、削られて消されてしまう時があるんだよ。そういう時は、インクを透明にする事も出来るんだ」
なるほど。その切り替えをするのが、先ほどのボタンというワケなんですね。
「じゃあ、そのレンズが鍵開けの道具ってのは、真っ赤なウソという事か」
今度はモゼントが、フューイに先んじて言いました。
「ご名答。このレンズを通すと”透明にしたインク”が見えるんだ。そして今あんた方が見たように、レンズの下のボタンを押すと、透明、不透明を切り替えられる仕組みになっているわけさ」
「ふむふむ……。つまりお前の部屋の、侵入者が触りそうな場所に、それを透明な状態で塗っていたわけか。そんな事も知らずに、あたいはそれを触り放題に触っちまった」
自分の事を「私」から「あたい」に言い変えたレネフィルが苦笑します。彼女も少し、落ち着いてきたようです。
「ここまで言えばわかるだろう? 昨晩、お前がオレにこのレンズの事を聞いた時、じっくりと観察させてもらったわけさ。そして侵入者が誰かを確信した。もっとも、そうじゃないかと思ってはいたけどな」
フューイが又々、レネフィルの心を逆なでするような発言をしました。
まず、オレの部屋の前で兵士のお前を見た後、オレはボンシックに、宝物要塞に何人の兵士がいるかと聞いた。そして、オレが見た奴がいるかを調べたんだ。
だが全員を確認しても、あの兵士と同じ顔をした奴は見つからない。そこでオレは”誰かが、実在しない兵士に変装している”と考えたんだ。もちろんその時には、お前が化ける魔法を使えるなんてわかってはいなかったけどな。
実在する兵士に化けなかったのは、万が一オレに見つかって、その後、そいつに詰問したら騒ぎが大きくなると思ったんだろう。当然、そいつからすれば、オレが言いがかりをつけていると考えるだろうからな。
そうなれば、下手をすりゃ鍵開け勝負どころじゃなくなる」
とうとうと、自分の見立てを述べるフューイに、興奮していたレネフィルも思わず聞き入ります。
「じゃぁ、なぜオレが兵士の正体を見抜けたのか。それは、罠を張ったからなんだよ」
「罠?」
モゼントが、訝しんだ声を出しました。
「もったいぶるのは嫌いなんで、さっさと種明かしをするぞ」
フューイは、ポケットから例の魔法レンズを取り出します。そして、レンズの下にあるボタンを押すと……。
「あっ!」
モゼントとレネフィルが、思わず声を上げました。無理もありません。突然、レネフィルの両手に、光る斑点模様が現れたのですから。
「貴様、何をした!」
予想もしなかった出来事に、レネフィルがフューイを睨みつけます。本当に、彼女の変わりようにはビックリです。
「それはダンジョンで使う”マーキング用のインク”だよ。迷いそうな時には、壁に塗り付けるわけさ。光っているから、暗闇でも見つけやすい。まぁ、ちょっと洗ったくらいじゃ、落ちる事はない」
あぁ、いつぞやフューイが自室で取り出した小箱には、これが入っていたんですね。でも変ですね。さっきまでは、何も光っていませんでしたよ。
「何故、急に光リ始めたのか、疑問に思ってるのだろう?」
盗賊一味の心の中を見透かしたように、フューイが機先を制します。言われた二人の心中は、さぞや穏やかではないでしょうね。
「普通は光るようにしておくんだが、ダンジョンの中には知性の高い魔物がいる場合もある。いかにも”目印です”といったマーキングをしていると、削られて消されてしまう時があるんだよ。そういう時は、インクを透明にする事も出来るんだ」
なるほど。その切り替えをするのが、先ほどのボタンというワケなんですね。
「じゃあ、そのレンズが鍵開けの道具ってのは、真っ赤なウソという事か」
今度はモゼントが、フューイに先んじて言いました。
「ご名答。このレンズを通すと”透明にしたインク”が見えるんだ。そして今あんた方が見たように、レンズの下のボタンを押すと、透明、不透明を切り替えられる仕組みになっているわけさ」
「ふむふむ……。つまりお前の部屋の、侵入者が触りそうな場所に、それを透明な状態で塗っていたわけか。そんな事も知らずに、あたいはそれを触り放題に触っちまった」
自分の事を「私」から「あたい」に言い変えたレネフィルが苦笑します。彼女も少し、落ち着いてきたようです。
「ここまで言えばわかるだろう? 昨晩、お前がオレにこのレンズの事を聞いた時、じっくりと観察させてもらったわけさ。そして侵入者が誰かを確信した。もっとも、そうじゃないかと思ってはいたけどな」
フューイが又々、レネフィルの心を逆なでするような発言をしました。
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