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ある日常2
しおりを挟む「…今日はクロアフィート、お前に用があってきた」
「え?」
クロアはいつのまにか自分でいれたお茶を飲もうとしていたけど、口につける前に手を止めた。
「そうなんだ?ちょっと嬉しいな」
さっきは睨んでたのに、本当に嬉しそうな笑顔のクロア。やっぱりレフェのこと友達だと思ってるんだ。クロアは天然なとこあるから魔王であることなんて気にしないんだろう。レフェもちょっとぽやっとしたとこあるし、相性いいのかも?
「では、聞き入れてもらえるということだな。なに、また勇者との戦いをしてみたいだけだ。それで考えたのだが、勇者を相手にするときの定番らしいのだが、人をさらうのが有効だとか」
ええー?大人しく聞いてるだけにしよと思ってたけど、なにそれ、人をさらうなんて駄目だろと言いたいとこだけど、のんびりと散歩行ってきますなくらいのテンションで語られたら、どういう態度をとればいいんだ。
「へー、大変だね」
ああ…、クロアが天然発揮か?!一応、犯罪しようと思ってるんだけどって話をさらっと受け入れちゃっていいの?勇者に相談してるんだから、おそらくお芝居的なことをするつもりだろうけども。
「それで、お前の弱点を狙おうと思ってな。ノノロリルを…」
「却下。ノノは駄目」
「何故だ?危害を加えることは絶対ない」
俺も別にレフェのお手伝いくらいするけど。
「そういう少しでも危険になるかもしれないことにノノを関わらせたくない。それになによりノノが一時でも俺から離れ、君の側にいるなんて耐えられないよ?」
「ク、クロア…」
ばかばかばか。
「……………………………駄目か?」
「駄目。そうだなあ、僕の従兄弟とかにしない?僕には兄弟がいないから、一番近いのはその人だよ」
「……………」
不服そうなレフェは眉を寄せている。姿違うけど迫力があるなー。
「…仲はいいのか?」
「もちろん」
「…なら、それでいいだろう」
いいんだろうか。勝手に人質役にしちゃって。説明をうけるだけでも気を失わないだろうか。
「なあ、別にそれくらい俺はかまわないけど」
事情全部知ってるんだし。
「ノノ。ノノは優しいからレフェの役にたてればなんて考えるんだろうけど、…僕が嫌なんだ。分かってほしい」
穏やかに言うクロアだけど、瞳の奥が本気だ。レフェの役にたてればって思ったのも確かだけど、クロアの役にもたつかなって、思ったんだぞ。
「私も、考えが浅かった。お前を我々の問題に関わらせるべきではないだろう」
レフェの目は本当に気をつかってくれている。だけど関わるなってのは、少し寂しいよ。勇者とか魔王とか、そんなスケールでかすぎだろってことには本気で関わりたくはないけど。2人は、クロアとレフェだ。
「…そんな顔をするな。関わらせたくないのは、私達のエゴなのだから」
「レフェ…」
すんごい優しい目を向けられる。そしてレフェの手が俺に伸びてくる。けどクロアがたたき落とした。
「レフェー。駄目だよー」
にっこり笑うクロア。若干怖い。本当にクロアのほうが魔王より怖くないか?そんなに独占欲とか執着とか強い奴じゃないはずだけど。
「フッ…。隙があればつけいるのは当然だろう?」
まあ、魔王という存在はそういうことしそうだけど。
「…ノノだけは許さないからね?」
しょうがないなーって雰囲気になった。
とか思ったらすぐに雰囲気が悪くなる。レフェのほうもなにか漂わせはじめた。
「こちらとて、ノノロリルのことは別だ」
レ、レフェー?!なんでそんな変なこと言うの?!あわわ、どうしよ…。あ、お客さん。
「え?!」
「!!!」
俺は目の前の2人の頭をはたいた。
「ここは店だ。お客さんの迷惑になることは止めろよ!」
店番として、大事なお客を怯えさせるまねは許さない。
「ごめん、ノノ」
悲しそうなクロア。少し痛かったかな?
「すまない…」
レフェは眉を寄せ、辛そうだ。謝りたくなってきたけど、心を鬼にして見ないようにし、お客のもとに行く。常連のおじいさんだった。
その後は、いつものように穏やかな時間が流れるだけだった。クロアとレフェはたわいない会話をする。
日差しがぽかぽかとあったかい。
俺の最近の日常はこんな感じだ。
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