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ライバル4
しおりを挟む「今回やってきたのはレフェが真面目なのもあるだろうけど、早く負けたいってのもあるかもしれない」
「そんな…」
「だからね、僕はこのまま頑張らないほうがいいと思わない?」
「それは…」
そんな重い話、まだ考えられない。
「…て、騙されるか!魔王レフェさんはともかく、悪いことしてる奴は容赦なく倒せよな。それにクロアがちゃんとしないことで、レフェさんは困ってるかもしれない」
「んー、レフェの様子からすると、勇者が魔王と2度目の対峙したってことが噂になってくれればいいみたいだね。それで暫くは魔王の威厳?が保たれるんだろうね」
魔王らしいことをすればいいのだろう。
「…だったらいいんだけど…」
それでもお菓子をフォークでつつきながらノノロリルは考える。クロアと比べるとレフェは弱そうに見えるから心配だ。
「ノノ」
「ん…?」
「レフェはノノに危害を加えるようなことはしないだろうけど、もう家に入れたりしちゃ駄目だよ」
「なんで」
「…レフェって格好いいだろ?性格だって悪くないし、力だってある。…ノノが裏切るとは少しも思ってないけど…、ヤキモキはするんだよ」
「な……、アホか!」
手元にちょうどあったクッションをクロアの顔面に投げる。ぼふっと当たって落ちたクッションを受け止めたクロアの表情が満面の笑顔なのは、ノノロリルの顔が赤いからだ。
それで魔王の話は終わり、甘い言葉をたくさん言うクロアで、ノノロリルは陥落してしまった。
あれから何日も経つと、一応、勇者と魔王の対峙を目の前にしたのが夢だったかのように、静かな日常を過ごすノノロリル。
いつも通り、それほど忙しくない店番で、クロアフィートが来ることもなく、やや暇なノノロリルは魔王レフェレクトのことを考える。
魔王オーラだだもれで、クロアよりもしっかりしてそうだけど、どこか頼りない感じがした。有象無象の庶民が魔王様のことを考えてもしかたないが。
そして仕事が終わったノノロリルはいつものように家に帰るのだが、
「……えーーと、…」
ちょっと前に見た、さっき考えていた人が家の前にいる。
ノノロリルの家の近くに他の家はなく、林の中の小道の傍にある。
そんなに街と離れてるわけではないけれど、のどかな場所で、だから騒がしくたって近所迷惑にはならない。
家の前に人がいることが多い。店と家を行き来するだけの毎日だから、店にやってこないだけましか、と目の前にいる人物を忘れるように考えにふける。
「…ノノロリル」
呼んできた。
「…なんでしょうか」
魔王レフェは前に会った時のようにフードを深くかぶっていて、ゆったりと近づいてきた。
「えっと…、中に入ります?」
「ああ」
クロアの言ってた戯言は気にせず、レフェを中へと案内し、すでに仲間意識感じてる魔王にお茶とお茶菓子を用意する。
「それで、今度はどうしたんです?あ、この前の出来事あんまり意味なかったとか?ギャラリーいなかったですもんね」
「いや、それはもう、魔族の中では広まっている話で、十分意味があった」
フードをはずしたレフェは優雅にお茶を飲む。動作が高貴だ。
「えええ。そうなんだ…」
どう伝わっているのか気になる。
「…とはいえ、これで勇者クロアフィートとの対決が終わったとはいえない。今回はただの一時しのぎだな」
わずかに哀愁ただよってそうなレフェレクトで、ノノはやっぱり魔王って大変なんだなと思う。
「…それで、今後のことを相談しにきた」
「え、俺に?」
「ああ、今のままだと、クロアフィートは魔王退治をする気はなさそうだろう?」
「それでは駄目なんですか?」
無理して倒さなくていい、というか、レフェを倒したりする必要がない気がする。そのノノロリルの考えが伝わったのか、レフェレクトは言う。
「前にも言ったように、倒されたいという趣味はない。ただ、クロアにはパフォーマンスしてもらわねば困るのだ」
「はあ…」
魔王らしくある為には勇者がかかせないのかもしれない。それでも退治されそうなことを望むのは変な話だ。
「でも、それで俺に相談?」
「クロアフィートが動く理由も、動かせる者も、そなたであろう」
「……………」
否定したいができない。
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