バルファ旅行記

はるば草花

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バルファ旅行記つー

つー12

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「ではすぐに用意しますので、それまでに会いに行って話をしてくるといいですよ」

「は?」


シャルハの言葉に首を傾げる。誰にだ?ラルクスだろうか。


「メリルに会わなくていいの?今回のこと、メリルに言ってなかったんだけど、君に会いたいと何度も言ってましたよ」

「ああ!」


…忘れていたわけじゃないが、展開が早くて…。


「行ってくる。どこにいるだろうか?」


立ち上がってすぐに部屋を出ていこうとしたが、足を止めメリルの場所を聞く。


「今ならラルクス達と一緒にいる可能性が高いですよ」

「わかった」

「俺も行こう」

「なら俺もー」


誠那と一十も俺の後をついてきた。その姿を確認もせず俺は足早くラルクス達のもとに行く。

庭に隣接した通路に来ると、すぐにラルクスとメリルが一緒に遊んでいるのが見えた。


「メリル!」

「あー!オミ!もう、私に会わないでいっちゃうなんて信じられない!」

「悪い悪い。だけどこれで俺は何度もここに来れるようになったし」


目の前に飛んできたメリルは全身を動かして怒りを表現しているらしい。可愛い動きにしか見えないが。


「それでごまかされたりしないんだから!今日はいっぱい私と一緒にいてよ!」

「あー、それがそうしたいのはやまやまなんだが、もうそろそろ帰らないといけないんだ」


帰れって命令されてはいないけども、帰るべき空気だろ。


「ええー。もう!しょうがないなあ。それじゃあ後ろにいる2人を紹介してくれたら許してあげる。オミの知り合いなんでしょ?」


メリルは俺の後ろにいる2人を目を輝かせて見ている。…もしかしてメリルは美形が好きか?

妖精は光るものや綺麗なものが好きって、設定があったりもしたっけ?


「俺も紹介してほしいな。妖精ちゃん」

「オミの友人か?」


一十と誠那もメリルに興味があるようだ。


「イチトが興味しめすのは分かるとして、セイナは妖精もたくさん見てるだろ?」

「まあな。だが、この妖精はお前の友人なんだろう?」


んん?その言い方だと俺の友人に興味あるのか?…まあ、俺は友人少ないからな。どんな友人いるんだろうという興味か。


「そうか。わかった。メリル。2人は通っている学校が同じで、小さい頃から知っている。それと、今はこうして仲間のような感じだ」

「そこは友達だ!の一言でいいじゃん。ね、委員長」

「そうだな。俺もそれでいい」

「そうか。そう、だな」


やべ。なんか嬉しい。つい俺なんかでいいのかと言いそうになったが、そこは友達らしく肯定しとこう。



「オミの友達かー。私ともよろしくしてね」

「ああ」

「もちろん!メリルちゃんて可愛いね。俺はイチトって呼んでね」


一十の可愛い発言に嬉しそうにしているメリル。その姿は可愛いんだけど、一十みたいな軽い男に騙されちゃ駄目だぞ。


「あなたのお名前も教えてくれる?」


誠那に近づいたメリル。心なしか一十への視線より熱い気がする。そりゃ一十よりはいいと思うけども。


「俺は、」

「あれ?よく見れば見たことある気がするけど、そんなわけないよね。向こうの世界の人だものね」

「いや、メリル。セイナはもとはこっちの世界の人間なんだそうだ。だから見たこともあるかもしれないぞ」

「え?そうなの?そういえばずいぶんラルクスが懐いて…、あああ!思い出した!」


誠那をじっと見たメリルが叫ぶ。どこで会ったのか思い出したのか?


「ラルクスの長だ!前にここの幻獣が会議に行くのについてった時に見たよ!」

「は?…セイナが…?」


ラルクスの、という言葉に俺は誠那の顔を凝視する。


「え、いいんちょってば幻獣で長だったりするの?」

「……………長じゃない。…おそらくその時は、長の代理で来てたんだ」

「でも、幻獣は本当なんだ。人型でもあるわけだし力が強いってことだよね」

「…まあ、普通のラルクスと比べれば」

「そうだ!もしかして現在の長の子供がセイナ?それならすごく強くて期待の若者だって聞いたことあるよ」

「おおー。すごい委員長。ね、会長。…会長?」

「ああ…、そうだな。幻獣って、強いと人型になるのか?」


おおう。誠那がラルクスであるという事実に俺はなんでか思考が停止していたようだ。
幻獣と人の誠那がイコールなのは、ファンタジーならありえるから理解できる。


「そうらしいよ。力の差で能力もだいふ違ってきて、ここにいるようなラルクスはおそらく獣に近いだろうけど、人型だと人と変わらない知能をもっていて………、まあ、すごいんだよ!」

「セイナ。どういう感じなんだ?」


一十だと詳しく知らないようなので本人に聞く。


「ああ、姿は獣と人との両方を持っていて、獣人でも化けてる訳でもない。幻獣がそもそも微妙な存在なんだ。同じ種族内でも特性が違ってくる。俺は、力の強さで人に近い存在になっていてな。つまりは、今まで通りに接してほしい」

「あ、ああ…。それはもちろん」


なんか誠那が必死だ。そんなに心配しなくても獣扱いするとかそんな鬼畜なことしないぞ?
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