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後編

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「ユーリと結婚?全然いいよ」

「そんなあっさり!?」

あれからユーリと付き合う付き合わないで言い合ってると、ユーリを起こしに城のメイドさんがやってきた。そこで裸になってる私達を見ると止める間もなく一瞬でドアを閉めて国王様に報告されてしまった。

そしてあれよあれよという間に複数のメイドたちに取り囲まれ身支度をされるとせっせと王座の間まで運ばれたのだ。

報告を受けた国王様や国のお偉いさん達ははこりゃまためでたいとすでに昨日以上のお祝いムードであった。

そんな空気に困惑しながらも、先ほどユーリに言ったことを王様にも尋ねた。そしたら冒頭の答えが出たのである。

「まぁ勇者殿が驚かれるのも無理はありませんが、これには理由があるのですよ」

そんな私の疑問に答えるかのように、大臣が声をかける。

「というのもですね、ユーリ様から話は聞いているようですのでご存じでしょうが、聖女の力を授かるためにユーリ様を女として育ててきました。そして体は男でありながら心は女となったユーリ様に嫁いでくれるという奇特な女性はおらず、かといって男性と結ばれる気はユーリ様には全くなく、世継ぎとかどうしようと困っていたのですよ。陛下にはご兄弟はいませんし…なのでカンナ様が嫁いでくださればそれも万事解決ということになりまして」

「えええそんな簡単に決めていいの?ユーリにも言ったけど私しがない村娘ですよ?そんな私が王族と結婚なんて…」

「ですが同時に世界を救った勇者です。こちらとしても勇者となった者を王族に迎えたいのですよ。王族にむかえて勇者の血筋を取り込みたいという下心もあるわけでして」

「で、でもほら、王族になるには確か貴族様のマナーとか学ばないといけないでしょ?」

「大丈夫、それは今からんみっちり学んでいただきますので」

「そういう問題なの?あ、あと、えっと…」

「ちなみに断るようでしたらユーリ様に狼藉を働いたと冤罪を着せ、国を追われることになります」

「世界を救った勇者から犯罪者に一転、追放ルートだね」

「うぇえん権力はずるい」

まさかの追放ルートに涙流していると王様が「まぁ冗談はさておき」と言った。冗談だったの?どこまで?

「聖女の力を授かるためとはいえ、ユーリをこういう風にしてしまったのはワシらの責任じゃ。この子の願いはできれば叶えてあげたいし、勇者殿には生涯を共に過ごしてくれるパートナーになってほしいのじゃよ」

「そ、そんなこと言われましても…」

「カンナ様」

王様に頼まれるなんてどうしたらいいのかと慌てていると、ユーリが声をかけてきた。

「正直、カンナ様と結婚出来たらこれほど幸福なことはないのですが…私とて無理強いはしたくありません。なので聞かせてほしいのです。カンナ様のお気持ちを」

そう言ってユーリは私の手を握ってくれた。
私の気持ち…ユーリの事はずっと頼れる仲間と思っていた。
可愛くて女の子らしくて…男だったけど、私が男だったら惚れちゃいそうだな―って冗談交じりに言ったことがある。

でも私が魔物の攻撃を受けて怪我をした時、安全な場所に運んでから治療しようと私を背負ってくれたことがある。私より背が低いのに、意外と力が強くて驚いた。

ただの村娘だった私が勇者に選ばれて、自分に自信がなくなっている時もそばにいて支えてくれた。
これまでの冒険を振り返ってみたら、何度も助けてくれたことを思い出す。こんな私でも、彼は…

「…私は勇者といっても、本当にただの、そこら辺にいるタダの村娘です。おまけに男勝りだしがさつだし、力だって男に負けないくらい強いです…そんな女でもいいんですか?」

声が震える。そうだ、私は昔からこんなんだったから村の男の子たちに「お前女じゃねえよ」ってからかわれたことがある。それ以来女としての自信をなくしたんだった。

女らしさの欠片もない私なんかよりも、ユーリにはもっとふさわしい人が…と一人で考え込んでいたその時だった。

「カンナ様は可愛いですよ」

まるで私の考えてることを見抜いたようなその言葉につい顔を上げてしまう。

「ご自分では気付いてないか漏れませんが、カンナ様は十分女の子らしいです」

「私が?」

「えぇ」とうなづくユーリはとてもきれいだ。

「街に買い出しに出ては時々可愛らしい服装を見ているときの目や、パンケーキを食べてる時の美味しそうな顔も、小動物を愛でる姿も、誰かの傷つく姿を見て心を痛めている時…その時の姿はどこにでもいる普通の、可愛らしい女の子です」

「あぅ…」

「そして普通の女の子だったのに、逃げずに勇者の役目を果たそうとするそのお姿も、全てが愛おしいです」

「い、愛おしいって」

そんなこと、今まで一度も言われたことがない。男らしいとか、かっこいいなら何度も言われてきたのだが、可愛いとか愛おしいなんて言われるのは初めてだ。

「そんなあなただから、叶うならずっと、この先の人生を共に過ごしていきたいんです」

ユーリはそう言いながら私の手を握る。その握り方はまるで王子様のようで、見つめる目は真剣そのものだった。冗談なんて言ってられない。ユーリが真剣なら、私もそれに答えた。

「もう一度言いますが、私は勇者ではあれどどこにでもいるような取るに足らない村娘です。おまけに力も男より強くて、がさつで、女らしいと自分では思えないような女です。そんな私でも、その、よろしければ…」

最後まで言わせてくれなかった。だって気が付いたら私はユーリに抱きしめられていたからだ。

「身分とか関係なく、私はあなたがいいんです。何度だって言います。あなたは私から見ればとても可愛らしくて誰よりも魅力的な女の子です」

「ゆ、ユーリ……」

「私と結婚してください」

「は…はい!」

言葉に詰まってしまったが私はユーリからの申し出を受けた。その直後、ずっとその様子を見守ってた国王様たちから歓声が上がった。そういえばここ王座の間だった。恥ずかし!

「いやはやめでたい!」「さっそく婚礼の準備を!」とこちらが止める間もなく皆どこかへと行ってしまった。

「あ、あの、いくらなんでも早すぎない?婚礼ってそんな」

「いえ、私としては早く婚姻を結びたいです!そうしないとカンナ様に言い寄る虫が性懲りもなく来ちゃいますから!」

「言い寄る虫って…だれ?」

「エルフの里で出会ったレオナ様や港町で出会った人魚姫のブルー様、それとカンナ様の村で出会ったミオ様や憎きくそったれ魔王の子のロアです!」

「えぇ…なんか色々衝撃的なんだけど、私は女の子相手にその気になったりしないから」

「いえ、はあんな格好してますが、全員男ですよ?」

「え」



終わり
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