20 / 46
お前の話を聞いてやる
しおりを挟む
司に、改まって呼ばれる。
怖い予感がする。聞いてはいけない、予感が。
逃れようと手を引っ込めようとしたが、司の手はびくともしない。
「お願い、大和。今だけでいいから。オレの話を、聞いて」
急に、切羽詰まったように、泣きそうに言うからつい、反射的に司を見てしまった。
だって、可哀想だろ。こんなに真剣な顔してるのに逃げるなんて、オレには出来るわけなかった。
胸の鼓動がうるさい。静まれ、オレの心臓。
司がオレの両手を少し震える手で包み込んだまま、仕切り直すように大きく息を吸い、吐いた。そしてオレを、キリッとした真剣な顔で見た。
ああ、やっぱりこいつ格好いいわ。
「早乙女 大和さん。オレ、キミの事が、好きです」
「……えっ」
もっと絶望的な事を言われるんだと、無意識に思っていた。なのに、司の口から出た言葉は、信じられないもので。
夢でも、見ているのか?
オレが反応できずにいると、キリッとした眉を下げてとたんに悲しそうな顔になる司。
「ごめん、大和、気持ち悪いよな。でもオレ、大和からの答えなら何でも受け入れるから」
言葉、何か、言葉をかけないと。
「そ、れは……友達として、とかだろ」
そう、そうだ。好きにも色々あるもんな。
だが、オレの言葉に司は明確に首を横に振った。手の熱が、伝わってくる。
「違う。……ちょっと長くなるけど、オレの話、聞いてくれる?」
司の、その泣きそうな真剣な声に、オレは握られた手を見つめたまま、頷く事しかできなかった。
「覚えてるかわからないけどさ、前に、大和と学校でメシ食った時、オレ、ちょっと強引に教室出て行った事あっただろ?」
すごく、真面目そうな顔で落ち着いて言われたので、ちょっとだけ頷く。
忘れもしない。
あの司の行動のせい、いやおかげか、おかげではじめての発情期に薬が間に合ったのだから。ワキガだと思って絶望を味わいもしたけど。
顔を上げると、今度は司がさらに頬を染めて、照れくさそうに視線を逸らした。
「あの時その……、大和の首筋からなんかすっげー良い匂いがしてさ、オレ、なんでだか急に勃っちゃったんだよ。結構ガチのやつ。で、なんでかって考えてみても、理由なんて大和と一緒に居た事ぐらいしか思いつかなかったし。オレ、ついに女の子がダメになったから、大和で抜いちゃったんだって……。大和の事確かに好きだったけど、そこまで見境なくなったのかって、自分にショック受けた。すごい罪悪感と後悔があってさ。これがバレたら、気持ち悪いって思われてもう友達でいられなくなるかもしれないって、怖くなった。
だけど、土曜日に病院行くってメールきたから、思わず心配になってメールしたら、普通に風邪引いたって返してくれたし、ああバレてなかったんだなって。良かったってホッとしてたら、大和、その後からオレの事避けだしただろ」
「えっ、と……」
司の言葉にハッとした。
司も、周りにオメガいなかったせいで、あれがオメガのフェロモンだったって、気づいてないんだ。そのせいで、誘惑されたって事も。
司は何も悪くないのに。司が悩む必要なんて無かったのに。それでも、本当の事を言い出せない、弱虫なオレ。
オレの曖昧な態度に、頬を染めたイケメン顔が急にぐにゃっと崩れ、泣きそうに眉を下げる。
「大和に、オレが変なのがバレたんだって思ったけど、会ったら普通に接してくれるし。避けられてる理由がソレじゃないなら何でって、オレもムキになって近寄ったら、やっぱり、どうしても大和の事、そういう目で追っかける自分がいて」
それはオレが発情期だったからで……。
でも、今ここで司の話を遮るのは、なんだかしてはいけない気がして、口が開けなかった。
司の唇は震え、その少しタレぎみの目がジワッと潤む。
ああ、泣き虫つっくんだ。やっぱり卒業してなかったじゃないか。
「もし本当に、オレが大和にそういう好意を寄せてしまったら、大和困るだろうなって。ベータの人って男性同士に偏見強いじゃん。だから、オレが大和の事そういう意味で好きだってバレたら、きっと気持ち悪いって思われるって、怖かった。それなら、大和とずっと一緒に、一番の親友でいれるように、バレないように頑張って黙ってようって思ってたんだ」
ああ。オレたち、考える事は一緒だったんだな。
親友、の位置を手放せなくて、身動きがとれなくなった。
司の必死の告白を、震える手に包まれながら、聞く。
罪悪感が、どんどん募る。
「でも、日に日に大和への気持ちは募っていく一方で。ある日突然バレたら、どうしたら良いんだろうっていつも考えてた。オレ、つい大和には甘えちゃうからさ。
どうしても、この気持ちに整理がつかないからどうしようも無くなって、だから、オメガの高木先輩に試させて貰おうって思ったんだ。発情期終わった結構後なら万が一も無いだろうから待ってさ。
それで、やっぱりオメガもダメで、ベータの大和にそういった感情を持ち続けるなら、それはもう、オレがおかしいんだって。ずっと幼馴染で、親友で、大好きだった大和を、そういう目で見てしまうオレが異常なんだって、覚悟した」
高木先輩への最低発言が、ここに繋がってくるなんて、思いもしなかった。
でも。
それは違うんだよ、司が傷つく必要なんて、覚悟する必要なんて、なかったのに。
「つかさ」
「でも、高木先輩に叱られて、嫌って程思い知らされたよ」
オレはそれを否定しようと口を開いたが、司の言葉に遮られて、それは言えなかった。
司は潤んだ目はそのままに、苦笑する。
オレのせいもあるとはいえ、やっぱりあの最低発言は怒られてしかるべきだし高木先輩流石すぎる。
「なんて、言われたの?」
オレからのはじめての明確な言葉に、司はちょっとビクッとした後、泣きそうな顔のまま、綺麗に微笑んだ。
「アルファのくせに、オメガがただの男に見えるっていうなら、ベータと何が違うんだよ。じゃあ逆に、オメガは良くてベータがダメな理由って何、同じ男だぜって」
案外男らしいよな、とその綺麗な微笑みをオレに向ける。
夕日の、オレンジ色の光が、司を柔らかく照らす。
オレの目がおかしいわけじゃなければ、司が、キラキラ輝いて見えた。
怖い予感がする。聞いてはいけない、予感が。
逃れようと手を引っ込めようとしたが、司の手はびくともしない。
「お願い、大和。今だけでいいから。オレの話を、聞いて」
急に、切羽詰まったように、泣きそうに言うからつい、反射的に司を見てしまった。
だって、可哀想だろ。こんなに真剣な顔してるのに逃げるなんて、オレには出来るわけなかった。
胸の鼓動がうるさい。静まれ、オレの心臓。
司がオレの両手を少し震える手で包み込んだまま、仕切り直すように大きく息を吸い、吐いた。そしてオレを、キリッとした真剣な顔で見た。
ああ、やっぱりこいつ格好いいわ。
「早乙女 大和さん。オレ、キミの事が、好きです」
「……えっ」
もっと絶望的な事を言われるんだと、無意識に思っていた。なのに、司の口から出た言葉は、信じられないもので。
夢でも、見ているのか?
オレが反応できずにいると、キリッとした眉を下げてとたんに悲しそうな顔になる司。
「ごめん、大和、気持ち悪いよな。でもオレ、大和からの答えなら何でも受け入れるから」
言葉、何か、言葉をかけないと。
「そ、れは……友達として、とかだろ」
そう、そうだ。好きにも色々あるもんな。
だが、オレの言葉に司は明確に首を横に振った。手の熱が、伝わってくる。
「違う。……ちょっと長くなるけど、オレの話、聞いてくれる?」
司の、その泣きそうな真剣な声に、オレは握られた手を見つめたまま、頷く事しかできなかった。
「覚えてるかわからないけどさ、前に、大和と学校でメシ食った時、オレ、ちょっと強引に教室出て行った事あっただろ?」
すごく、真面目そうな顔で落ち着いて言われたので、ちょっとだけ頷く。
忘れもしない。
あの司の行動のせい、いやおかげか、おかげではじめての発情期に薬が間に合ったのだから。ワキガだと思って絶望を味わいもしたけど。
顔を上げると、今度は司がさらに頬を染めて、照れくさそうに視線を逸らした。
「あの時その……、大和の首筋からなんかすっげー良い匂いがしてさ、オレ、なんでだか急に勃っちゃったんだよ。結構ガチのやつ。で、なんでかって考えてみても、理由なんて大和と一緒に居た事ぐらいしか思いつかなかったし。オレ、ついに女の子がダメになったから、大和で抜いちゃったんだって……。大和の事確かに好きだったけど、そこまで見境なくなったのかって、自分にショック受けた。すごい罪悪感と後悔があってさ。これがバレたら、気持ち悪いって思われてもう友達でいられなくなるかもしれないって、怖くなった。
だけど、土曜日に病院行くってメールきたから、思わず心配になってメールしたら、普通に風邪引いたって返してくれたし、ああバレてなかったんだなって。良かったってホッとしてたら、大和、その後からオレの事避けだしただろ」
「えっ、と……」
司の言葉にハッとした。
司も、周りにオメガいなかったせいで、あれがオメガのフェロモンだったって、気づいてないんだ。そのせいで、誘惑されたって事も。
司は何も悪くないのに。司が悩む必要なんて無かったのに。それでも、本当の事を言い出せない、弱虫なオレ。
オレの曖昧な態度に、頬を染めたイケメン顔が急にぐにゃっと崩れ、泣きそうに眉を下げる。
「大和に、オレが変なのがバレたんだって思ったけど、会ったら普通に接してくれるし。避けられてる理由がソレじゃないなら何でって、オレもムキになって近寄ったら、やっぱり、どうしても大和の事、そういう目で追っかける自分がいて」
それはオレが発情期だったからで……。
でも、今ここで司の話を遮るのは、なんだかしてはいけない気がして、口が開けなかった。
司の唇は震え、その少しタレぎみの目がジワッと潤む。
ああ、泣き虫つっくんだ。やっぱり卒業してなかったじゃないか。
「もし本当に、オレが大和にそういう好意を寄せてしまったら、大和困るだろうなって。ベータの人って男性同士に偏見強いじゃん。だから、オレが大和の事そういう意味で好きだってバレたら、きっと気持ち悪いって思われるって、怖かった。それなら、大和とずっと一緒に、一番の親友でいれるように、バレないように頑張って黙ってようって思ってたんだ」
ああ。オレたち、考える事は一緒だったんだな。
親友、の位置を手放せなくて、身動きがとれなくなった。
司の必死の告白を、震える手に包まれながら、聞く。
罪悪感が、どんどん募る。
「でも、日に日に大和への気持ちは募っていく一方で。ある日突然バレたら、どうしたら良いんだろうっていつも考えてた。オレ、つい大和には甘えちゃうからさ。
どうしても、この気持ちに整理がつかないからどうしようも無くなって、だから、オメガの高木先輩に試させて貰おうって思ったんだ。発情期終わった結構後なら万が一も無いだろうから待ってさ。
それで、やっぱりオメガもダメで、ベータの大和にそういった感情を持ち続けるなら、それはもう、オレがおかしいんだって。ずっと幼馴染で、親友で、大好きだった大和を、そういう目で見てしまうオレが異常なんだって、覚悟した」
高木先輩への最低発言が、ここに繋がってくるなんて、思いもしなかった。
でも。
それは違うんだよ、司が傷つく必要なんて、覚悟する必要なんて、なかったのに。
「つかさ」
「でも、高木先輩に叱られて、嫌って程思い知らされたよ」
オレはそれを否定しようと口を開いたが、司の言葉に遮られて、それは言えなかった。
司は潤んだ目はそのままに、苦笑する。
オレのせいもあるとはいえ、やっぱりあの最低発言は怒られてしかるべきだし高木先輩流石すぎる。
「なんて、言われたの?」
オレからのはじめての明確な言葉に、司はちょっとビクッとした後、泣きそうな顔のまま、綺麗に微笑んだ。
「アルファのくせに、オメガがただの男に見えるっていうなら、ベータと何が違うんだよ。じゃあ逆に、オメガは良くてベータがダメな理由って何、同じ男だぜって」
案外男らしいよな、とその綺麗な微笑みをオレに向ける。
夕日の、オレンジ色の光が、司を柔らかく照らす。
オレの目がおかしいわけじゃなければ、司が、キラキラ輝いて見えた。
11
お気に入りに追加
780
あなたにおすすめの小説
二人の公爵令嬢 どうやら愛されるのはひとりだけのようです
矢野りと
恋愛
ある日、マーコック公爵家の屋敷から一歳になったばかりの娘の姿が忽然と消えた。
それから十六年後、リディアは自分が公爵令嬢だと知る。
本当の家族と感動の再会を果たし、温かく迎え入れられたリディア。
しかし、公爵家には自分と同じ年齢、同じ髪の色、同じ瞳の子がすでにいた。その子はリディアの身代わりとして縁戚から引き取られた養女だった。
『シャロンと申します、お姉様』
彼女が口にしたのは、両親が生まれたばかりのリディアに贈ったはずの名だった。
家族の愛情も本当の名前も婚約者も、すでにその子のものだと気づくのに時間は掛からなかった。
自分の居場所を見つけられず、葛藤するリディア。
『……今更見つかるなんて……』
ある晩、母である公爵夫人の本音を聞いてしまい、リディアは家族と距離を置こうと決意する。
これ以上、傷つくのは嫌だから……。
けれども、公爵家を出たリディアを家族はそっとしておいてはくれず……。
――どうして誘拐されたのか、誰にひとりだけ愛されるのか。それぞれの事情が絡み合っていく。
◇家族との関係に悩みながらも、自分らしく生きようと奮闘するリディア。そんな彼女が自分の居場所を見つけるお話です。
※この作品の設定は架空のものです。
※作品の内容が合わない時は、そっと閉じていただければ幸いです(_ _)
※感想欄のネタバレ配慮はありません。
※執筆中は余裕がないため、感想への返信はお礼のみになっておりますm(_ _;)m
【R-18】踊り狂えその身朽ちるまで
あっきコタロウ
恋愛
投稿小説&漫画「そしてふたりでワルツを(http://www.alphapolis.co.jp/content/cover/630048599/)」のR-18外伝集。
連作のつもりだけどエロだから好きな所だけおつまみしてってください。
ニッチなものが含まれるのでまえがきにてシチュ明記。苦手な回は避けてどうぞ。
IF(7話)は本編からの派生。
【R18】お嫁さんスライム娘が、ショタお婿さんといちゃらぶ子作りする話
みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。
前話
【R18】通りかかったショタ冒険者に襲い掛かったスライム娘が、敗北して繁殖させられる話
https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/384412801
ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで
〖完結〗その愛、お断りします。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚して一年、幸せな毎日を送っていた。それが、一瞬で消え去った……
彼は突然愛人と子供を連れて来て、離れに住まわせると言った。愛する人に裏切られていたことを知り、胸が苦しくなる。
邪魔なのは、私だ。
そう思った私は離婚を決意し、邸を出て行こうとしたところを彼に見つかり部屋に閉じ込められてしまう。
「君を愛してる」と、何度も口にする彼。愛していれば、何をしても許されると思っているのだろうか。
冗談じゃない。私は、彼の思い通りになどならない!
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
黒聖女の成り上がり~髪が黒いだけで国から追放されたので、隣の国で聖女やります~【完結】
小平ニコ
ファンタジー
大学生の黒木真理矢は、ある日突然、聖女として異世界に召喚されてしまう。だが、異世界人たちは真理矢を見て、開口一番「なんだあの黒い髪は」と言い、嫌悪の眼差しを向けてきた。
この国では、黒い髪の人間は忌まわしき存在として嫌われており、真理矢は、婚約者となるはずであった王太子からも徹底的に罵倒され、国を追い出されてしまう。
(勝手に召喚して、髪が黒いから出てけって、ふざけるんじゃないわよ――)
怒りを胸に秘め、真理矢は隣国に向かった。どうやら隣国では、黒髪の人間でも比較的まともな扱いを受けられるそうだからだ。
(元の世界には戻れないみたいだし、こうなったら聖女の力を使って、隣の国で成り上がってやるわ)
真理矢はそう決心し、見慣れぬ世界で生きていく覚悟を固めたのだった。
もしも○○だったら~らぶえっちシリーズ
中村 心響
恋愛
もしもシリーズと題しまして、オリジナル作品の二次創作。ファンサービスで書いた"もしも、あのキャラとこのキャラがこうだったら~"など、本編では有り得ない夢の妄想短編ストーリーの総集編となっております。
※ 作品
「男装バレてイケメンに~」
「灼熱の砂丘」
「イケメンはずんどうぽっちゃり…」
こちらの作品を先にお読みください。
各、作品のファン様へ。
こちらの作品は、ノリと悪ふざけで作者が書き散らした、らぶえっちだらけの物語りとなっております。
故に、本作品のイメージが崩れた!とか。
あのキャラにこんなことさせないで!とか。
その他諸々の苦情は一切受け付けておりません。(。ᵕᴗᵕ。)
噂好きのローレッタ
水谷繭
恋愛
公爵令嬢リディアの婚約者は、レフィオル王国の第一王子アデルバート殿下だ。しかし、彼はリディアに冷たく、最近は小動物のように愛らしい男爵令嬢フィオナのほうばかり気にかけている。
ついには殿下とフィオナがつき合っているのではないかという噂まで耳にしたリディアは、婚約解消を申し出ることに。しかし、アデルバートは全く納得していないようで……。
※二部以降雰囲気が変わるので、ご注意ください。少し後味悪いかもしれません(主人公はハピエンです)
※小説家になろうにも掲載しています
◆表紙画像はGirly Dropさんからお借りしました
(旧題:婚約者は愛らしい男爵令嬢さんのほうがお好きなようなので、婚約解消を申し出てみました)
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる