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第二章:恋人義姉とイチャイチャになるまで

恋人義姉と過ごすイチャイチャモーニング その①

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 晴れて付き合うこととなってから、百花の態度は変わった。豹変ひょうへんした。

 「おはよう、百花さん」

 いつも通り迎えた朝。いつもの時間に起き、見慣れた百花のエプロン姿を眺める。

 「おはようございます、博嗣くん。もうできてますから、席についていてください」

 そう言った義姉がお皿を次々並べていく。明らかに違う、いつも通りではない品数。
 白米に味噌汁、納豆、そして卵焼きというのが基本の献立こんだてだったのだが、今はそこに主菜として焼きサバが足されている。さらにオクラやトロロ、梅干しといった小鉢こばち類もある。

 (あ、朝からちょっと量が多くないか?)

 わずかに狼狽うろたえるも、百花はニコニコ顔だ。

 「たっくさん食べてくださいね。男の子はやっぱり身体が資本ですから」

 結局博嗣は朝から二杯もお代わりした。
 次の日の朝。さらに豪華ごうかな朝食が並ぶ。
 そして驚きはそれだけにとどまらない。

 「はい、博嗣くん。私が食べさせてあげますね……お口を、あーん、してください」

 いつもは向かい合って座る百花が隣に腰を下ろし、そのまま卵焼きを差し出してくる。
 しょっぱいはずの半熟卵焼きは、トロトロと口のなかで蕩けるほどに甘さを感じさせた。
 さらに次の日。今日も今日とて当たり前のように百花はあーんをしてくる。その上、

 「……あっ、お米、間違えてほっぺにつけちゃいました。取ってあげますね……ちゅっ」

 わざと頬に付けた──事前にふーふーと入念に冷ましていた──米粒を口付けで取る。

 「博嗣くんの味がして、とっても美味しくなってますね……れる、ちゅれろ、ちゅぱっ」

 取り終わっても舌先でべろべろと舐め回し、百花は満足げな笑みを浮かべるのだった。
 こうして一週間余り、デレデレに甘え、甘やかそうとする未亡人との日々が流れていく。
 その間の博嗣の心境は、正直なところなかなかに複雑なものだった。

 (今の百花さん、めちゃくちゃ可愛いし、僕もイチャイチャできて嬉しいんだけど……)

 こうして流れる甘々で幸福な時間を、まるで新婚生活みたいだな、と思う。
 そしてそれが故人となった兄、和樹と送れなかったモノの代替だいたいに過ぎないのでは、とも。

 (考えすぎ、なのかもしれないけど……でもやっぱり、百花さんが僕を好きになってくれる理由がないんだよな、よく考えなくても)

 だって自分は、優秀な兄とは違うのだから。
 そんなことを思いながら、やや気まずささえ抱えていつも通りキッチンへ顔を出す。

 「おはようございます、百花さええぇっ!」

 唐突に大声を出したが、それも仕方ない。思考を全て吹き飛ばすほどの衝撃があった。

 「あぁ博嗣くん、おはようございます。今朝もたくさん作ったんです。卵焼きがそろそろできるので、楽しみに待っていてください」

 振り返って、穏やかな眼差しと笑みを向けて話す百花だが、それどころではなかった。
 あろうことか、百花はという格好をしていたのだから。それもいつもの機能性を重視した無地ではなく、可愛らしいフリルがあしらわれた花柄のエプロンである。
 わずかに汗の浮いた艶やかな背中を隠すのは交差したひもだけ。ぷりんとまあるい桃尻がくねるたび、尻尾のようにゆらゆら揺れる。

 (や、やばい……凄く似合ってるし、可愛いし、なによりエロすぎる……!)

 裸エプロンなんて男の淫夢いんむの極みだ。それを百花の完熟ボディでされてはたまらない。

 「あ、あのぉ、博嗣くん……?こういうのはやっぱり、私みたいな年増としまの女がやってはダメ、でしたか?お目汚めよごしでしたか?」

 博嗣が無言のままだったのが気になったのか、百花は耳まで朱色に染めて尋ねてくる。
 その不安げな様子にさらに愛しさと肉欲が膨れ上がるが、理性はまだ残っていた。

 「いや、凄く良いよ……ホントに。でも、なんで急にこんなこと……?」
 「急に、でもありません。ずっと興味はあったんですよ。でもやっぱり恥ずかしさが拭えなくて、なかなか実行できなくて……」

 その言葉が、博嗣の仄暗ほのぐらいところを抉った。

 「そ、そうなんだ……兄貴に……兄貴にできなかったから、僕にするんだね……」

 百花が驚いて「えっ?」と声を漏らす。
 言って、すぐに後悔した。
 せっかく幸せな日々を過ごせているのだから、都合よくだまされていれば良かったのにと。
 偽物でも、それで満足できていたのにと。
 苦々しさに博嗣は俯いたまま押し黙る。百花も何も言わなかった。グチャグチャにかき混ぜられた卵が焼ける音だけが響いていた。
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