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8 災厄その5/5
しおりを挟む本日、私はカルステニウスさん家にお邪魔しているわ。
フィリップの御母様から、花嫁衣装の採寸諸々のために、お声をかけていただいたのよ。
…………ついでにフィリップの顔を見てやるのも、吝かではないわよ?
「……お声をかけて下されば宜しかったのに」
「花嫁衣装は当日まで見せてはいけないものらしいわよ?」
応接間にやって来たフィリップが……珍しく拗ねているような、面白い顔をしているのを見ることができたわ!
「……では、もうお帰りになるのですか?」
「…………ちょっとくらいなら、お茶に付き合って上げてもいいわよ?」
「至急用意しますので、こちらでお待ち下さい」
それにしても、流石、由緒正しい伯爵家。マリスカル家の屋敷とは格が違う。毎回結構緊張するのよね。唯でさえ、豪華な物は見慣れていないから……。
貴族社会において、年若い新婚夫婦は一定期間は婚家に入るのが通例となっているのだけれど、フィリップは結婚と同時に御父様が御持ちの爵位の一つを譲り受けるそうで、実質領地経営など諸々あるみたいで……新居を建設することになったのよね。
今の専属侍女も連れて行ってよいと許可も頂いているし、幸先は良好!
そうして、とても良い気分で実家へ戻ると――――屋敷が半壊しかけていたわ。
……全員殺して良いかしら?
行き場をなくした侍女達が、玄関口付近で右往左往していたところを捕まえて事情を確認してみると……なんかもう、酷くメンドクサイことになっていたわ……。
まず、某子爵家のご令嬢が私を訪ねてやってきたらしいのよ。けれど、先触れも出さずにやってきたものだから、当然私は留守。普通だったら自業自得と切り捨てるところだけれど、要件が要件だから、ご令嬢は引くに引けなくなってしまったのでしょうね……そのまま元凶である妹の下へ直行したらしいわ。
ええ、このご令嬢というのは災厄その五、騎士団長御子息のご婚約者の子爵令嬢よ。取り巻き引き連れていらしたようよ。
更に困った事に丁度その時、問題の災厄その五が、私の留守を狙って妹に会いに来てしまったらしいのよ!
……このご令嬢、対応が後手後手で詰めが甘いのよね。
妹を取り巻きと取り囲んで糾弾しているところへ、災厄その五が現れて……もう、そこからは地獄絵図よ。
――ので、全員シメさせていただきました。
一言言わせていただくと、皆が憎くてシメたわけではないわよ?
元凶が妹にあることも、重々理解しているわよ?
けれど、あのまま屋敷が倒壊していたら、沢山の死傷者が出たでしょうし、我が家の使用人は勿論のこと、ご令嬢やご友人方、そして愛する災厄その五までおほほほ、となってしまうところだったのよ!
どこの誰?! 平常心を失った小娘に『古代禁術具』なんて貸し与えたのは!!!
まあ、ご令嬢も最後にはご理解下さったようで、以降は子爵家の慎ましやかな……少々私の周りを彷徨きすぎる娘になりましたけれども、落ち着きを取り戻していたく事ができました。
災厄その五は、何か大きなトラウマでも抱え込んでしまったらしく引きこもり街道をひた走っております。
世のため人のため、二度と下界へ降りてくることのないよう願いたいものです。
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