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学園編
32.お休み中は…2
しおりを挟む「ああ、そうだ、最後に聞いていい?」
「どしたの?」
喫茶店を出る直前――。
店の出入り口のドアを、人懐っこい無邪気な笑顔を見せるマリー・トーマンが開けようとしていたまさにその時。
「マリーって、クリストフ殿下のこと好きなの?」
◇◆◇ ◇◆◇
マリー・トーマンが受けている被害状況を正確に把握するため、彼女のルームメイトに事情聴取を行ったのは、彼女がバイト中の明くる日だった。
バイト中の彼女は、とても楽しそうにしていた。
学園生活でのストレス発散にもなるのなら、無理に辞めさせることもないかと思いもした。しかし、学生の本分は勉強。イジメによる弊害のみで働いているのであれば、原因を取り除き勉強に集中できる体制を整える必要がある。
昼食後、マリー・トーマンの現状についてパトリックと相談をするため、ナナミに扮し学園内を徘徊しながら人気の無い場所を探していた。
平時でさえ使用頻度の低い旧図書館、その裏庭とも言えない狭い人のいない空間……うん、人はいないけど一応ここも清掃が行き届いている様子。
――よし! 次の定期報告はこの辺にしよう!
場所も決まったし、ついでに旧図書館の使用状況でも見てくるかな。
「君は――」
物陰から出てきた私を見つけたのは、よりによってクリストフ殿下だ!
いくらか気の抜けた格好と言うと失礼かもしれないが、完全防備の普段着と比べると随分と地味な布を身にまとっていた。
――ど、どうする?! ここで避けるのはあまりにも不自然!
「ど、どうも……」
彼は傍まで来ると足を止め、こちらをしげしげと見てくる。なんだろう――でも、クリストフ殿下にも聞きたいことがある。マリー・トーマンの方から聞いても埒が明かないから、殿下の気持ちを確かめておこうか。
この話はパトリックにはしづらいからな。
「あの、ちょっと聞きたいことがあるんですけど」
「何かな?」
――笑顔だ……! 殿下は平民には社交的になるのだろうか。
ナナミに扮しているときは以前もこんな感じだったな。直前にミーシャとして能面バージョンと対峙していたから、変に動揺してしまった。
前回も今回も、基本的にクリストフ殿下は他人に対して感情を顕わにするようなことはない。いつも貼り付けた仮面のような品の良い笑みを浮かべていた。
私に対しては最終的にその仮面が能面になり…………終了だ。
「殿下はその……マリーのことど――」
――聞いている最中で、死角に見覚えのある金色が見えた。――パトリックだ!
足音も立てずにそこにいたから気付かなかった! パトリックの前で、クリストフ殿下にマリー・トーマンとの進展を聞くのは……………………いや、だ。
「――クリス、お前、『マリー・トーマン』に特別な感情を持ってたりすンのか?」
パトリックが何を思い何を考え、その言葉を口にしたのか、私には分からなかった。だが、クリストフ殿下が次に爆弾を落としてきた。
「彼女の事を気にしているように見えるのだとしたら……君の友人だからだろう」
――はい?
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