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第一部

10.失格の王太子

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 王都よりはるか北に位置するファイエル領は、山と森、そして川といった緑豊かで風光明媚ふうこうめいびな土地が多い。農耕と鉱山採掘を主な生業なりわいとし、領民は生計を立てている。そんな彼等は、山野や荒地あれちを切り開く開拓民でもあった。
 そんな開拓民が多く暮らすのは、自然豊かと言えば聞こえはいいが何もかもが発展途上で不便な村。そんな村もまた、ファイエル領には数多く存在していた。
 山の麓にあるフテラン村も、そんな村の一つだった。

「よおロビン、親父さんは戻っとるか?」
? ううん、まだ戻ってきてない!」
「ぃんや……いのししを見つけた言うてな、途中で別れよったんよ……そうか、戻っとらんか。ちぃと探してくりゃあ」
「うん! 気ぃつけてや!」
「おう!」

 ロビン・ビラーベックは今年で十歳になる、まだまだ幼いが元気いっぱいな少年だ。この村で生まれ育ち、この村以外のことなど何一つ知らない。手作業で切り出された木材で骨組みを作り、茅葺かやぶきの屋根とわらで覆われた壁でできた粗末な家で暮らし、今年の春から幼い身でありながら炭鉱で働いている。
 それが、ロビン・ビラーベックにとってのだった。
 それでも幸せだった。これしか知らなければ不満など覚えないし、これしか知らなくとも、父がいて、母がいて、兄がいて、妹がいて、それだけでロビンは十分幸せだった。

 そんなロビンに、父の不在を問いかけたのは、彼の父と懇意にしている猟師で、彼もとてもよくなついている男だった。彼は今も筒の長い猟銃を小脇こわきに抱えているし、ロビンの父に猟銃の使い方を教えたのも彼だった。

 山間部を開拓して作られたこの発展途上の村は、まだ、野生動物襲来の危機にさらされていた。もう少し開拓が進めば、動物と人間の境界を設けることもできるようになるだろう。過渡期の混乱を収拾するために、多くの猟師もまた、この村に暮らしていた。

 その後、日が暮れても、父が帰ってくることはなかった。
 そして翌日、再び猟師がロビンの家を訪ね――――周囲に、絶叫が響き渡った。




 ◇


「大変です! 第二王子殿下!」
「ボクのことはと呼べと言っているだろう!!!」
 絢爛豪華けんらんごうかな執務室へと息せき切ってやってきた部下に向かい、エミールの実弟であるブリクサ・グラーフは怒鳴り声を上げながら、そばにあったペン立てを投げつける。それが部下のこめかみに当たり、相手が苦痛に顔をゆがめるのを見て、ようやく溜飲りゅういんを下げたかのように、満足気に腰を下ろした。
 いつものことだ。ブリクサ・グラーフは子供のように些細ささいなことで癇癪かんしゃくを起こし、誰かの血を見なければ収まりがつかない。これは、エミール・ヴェルナー・バイアーがいた頃からそうだった。だからこそ、ブリクサ・グラーフの相手をしてこなかった。その結果、この国に最悪な未来をもたらそうとしていた。

「も……もうしわけございません」
「ふんっ! で、なんだ?」
「騎兵第二連隊が出奔しました!」
「なんだと?! あいつら……全員処刑にしろ!」
「それどころではありません! 魔獣の対処が出来るのは彼等だけです! 魔獣が徒党ととうを組んで攻め込んできたら、民を守り切れません!」

 騎兵第二連隊は、エミールが率いていた魑魅魍魎の対処を専門とするため、特殊な訓練と装備で鍛え上げられた、信頼と実績のある部隊だ。エミールが廃嫡された後も、責任を持って任に当たっていたのだ。ブリクサが「愚人に傾倒しすぎている」などと言って、不必要な譴責けんせきや体罰を与えたりしなければ。「民よりまず第一にボクを守れ!」などと言われては、多くが労働者階級からの志願兵である彼等の信頼を得られるはずもない。
 それこそ、に頼め、と言いたくなっても仕方がないだろう。

「民のことなど知ったことか!」
「殿下!!」
 暴言が過ぎる。両陛下は何を思って、賢明なエミールを廃嫡しこんな阿呆を王太子にすえているのかと、部下は胸中で嘆く。

「ああ、そうだ! あいつらがいるだろう! 教会騎士にでもやらせればいい!」
「教会騎士は手を貸してくれません!」
「なぜだ! ボクを誰だと思ってる?!」
「教会は王太子殿下の部下ではありません!」
 そもそも、彼等の協力を取り付けるため、エミールがどれほど東奔西走していたことか。エミール自身も何度も訴えていたことだ。
 知ろうともせずに追い出した、その結果がこれだ。
「殿下の……殿下のせいです! 殿下は他人の思いに無頓着過ぎたのです! それが許された局面はとうの昔に過ぎ去りました! 恐怖を強いるには知識が足りない! 信頼を得るには行いが足りないッ! 殿下には何もないのです!!!」
 男は腹の底から怒りを感じていた。自分の中にこれだけの怒りが眠っていたのだと、その時まで気づきもしなかった。

「今、殿下に従っているのは知恵も行いも、殿下に遠く及ばない愚者だけであると、肝に銘じるべきです」
「お、お前、何を……」
 低く暗く己を睨みつけてくる部下でしかない男相手に、ブリクサ・グラーフは恐怖に身がすくんだ。

「私も、これにておいとまをいただきたく存じます」
「待て……待て! 待て!」
 へっぴり腰の日和ひよった声に、部下は足を止めることなどしない。

 ブリクサ・グラーフの脳裏に、徐々に不安が込み上げてきた。

 ――なんでこんなことになっているんだ……正義のために愚兄を追い出したこのボクが、なぜ!! ああ、そうだ、ボクのすごさを思い出させれば良いんだ! ベリンダはボクの社交スキルを褒めてくれた! いつも一人でいた彼女を思いやってきたこのボクを認めてくれた! ベリンダはレイモンド王太子殿下との婚約のために他国に旅立ったと聞く。オストワルト公だけでも招待しよう。ああ、そうだ、そうしよう。ボクこそが王太子なのだと低能どもに見せつけて、服従させてやるんだ! 大丈夫、ボクならできる。ボクは優秀なんだから、父上も母上も、いつもそう言ってくれていたんだから……!



 ◇


「旦那様、王家より書状が届いております」
 恭しく頭を垂れながら、執事が一通の書状をファイエル領主、ファイエル伯ボニファーツ・ファイエルの下へもってきたのは、朝食が終わり、執務室で仕事に取りかかろうとしている時のことだった。
 中身を一読し、ボニファーツ・ファイエルは深くため息をつく。

 ――第二殿下は現実が見えていないのか。今、このような状況下で宮廷舞踏会を開くなど。

「欠席の返事を出しておいてくれ」
かしこまりました」

 王都を含め、現在、このレイオニング王国には早急に解決しなければならない問題が山積している。一つは国内を我が物顔で暴れ回る魑魅魍魎による、天災レベルの災害。二つ目はそれによって発生した有害物質による、他国への土壌汚染に対する賠償問題。三つ目は山積する問題の責任を押しつけ合う貴族達と、その犠牲になる罪なき平民達。
 それはこのファイエル領も例外ではない。誰も彼もが社交界どころではなかった。議会は己の利権に固執する者ばかりが発言権を持ち、無意味なものになり果てている。ゆえに、ボニファーツ・ファイエルは議会には息子達を残し、一足先に領地へと戻ってきたのだ。

 ――王家には、他領からも多くの救援要請が届いているはずだが……この様子では、まともな対応をとってはおられないのだろうな。

 エミール・ヴェルナー・バイアーが廃嫡されてすぐ、各領にいた魑魅魍魎に渡り合える戦闘能力を持つ者を、召し上げるための悪法を制定した。己のみを守らせるために。その際、抵抗する領主に対し、「必要があれば常備軍を派遣する」という条件で納得をさせてきた。今こそ約束を果たせと、王家に救援要請を出している領主の数は多い。

 ボニファーツ・ファイエルが把握している、自領内で起こっている魔獣による獣害事件数は二十五件だ。総被害者数は百を超える。だが、これも氷山の一角でしかない。このような状況に陥っているのは、ファイエル領だけではない。
 隣接する領主より、救援要請を受けたこともある。今のところは、自分の持つ私設兵で対処可能な魔獣ばかりだが、ボニファーツ・ファイエルは危機感を覚えていた。
 もし、己の私設兵で対処できない事態が起きたら――――近隣の領主が自分に救援要請を出してきたと言うことは、近隣領主の助けは期待できない。悪法を作ってまで、自分達の身を守ることしか考えていない王家が、こちらの救援要請に応えてくれるとは思えない。
 ボニファーツ・ファイエルの私設兵はあくまで普通の人間だ。日頃の訓練と魑魅魍魎に対する知識、考え抜かれた作戦によって敵を退けているに過ぎない。
 しかし、王家は特殊能力者と認定し、王家に召し上げさせようと横槍を入れてくる始末だ。ボニファーツ・ファイエルは分かっていた。今の王家に彼等を引き渡せば、彼等に待っているのは非業の死だろう。

 彼等の命を預かるものとして、ボニファーツ・ファイエルは王家に迎合するわけにはいかなかった。




 ◇


 ブリクサ・グラーフの下へ戻ってきた「出席」の返事は、彼の想定をはるかに下回る結果となった。それでも、周囲に残った、烏合うごうの衆の甘言に乗せられ宮廷舞踏会を決行した。誰一人、国のことや民のことなど考えていなかったから。
 国が危機にひんしている今、中枢にいる人間が遊びほうけていればどうなるのか。そんな当たり前を考えることすらできない者しか、彼のそばには残っていなかったのだから。


「王太子殿下! 救援要請の件はどうなっているのですか?!」
「うるさいうるさい! ボクを誰だと思ってるんだお前ら!!!」
 湯水のごとく金を使った宮廷舞踏会の会場にもったいつけた様子で、ブリクサ・グラーフは現れた。しかし、数少ない出席者を相手に、意気揚々と己の社交スキルを見せつけようとしていた矢先、逆に相手から詰め寄られるという体たらく。

「追放するぞ!」
「兄のようにか?」
「無礼者が……この者を捕えろ!!!」
 ブリクサの背後に控えていた近衛兵が、若干の躊躇を見せながらも命令に従い、貴族を捉える。捉えられた貴族は拘束されながらも、睨むでも蔑むでもなくまっすぐにブリクサを見据え、きっぱりとした口調で言った。
「この国は終わる! 愚かな王のせいでな!!」
「つれていけ! 明日には処刑にしてくれる! 広場に公開処刑のしらせを出しておけよ!」
「王太子殿下!」
 周囲の貴族達がブリクサをなだめ、発言を撤回させようと言葉を重ねるが、皆の心にあるのは連れて行かれた貴族の無事を祈る思いだけだ。そうなったそもそもの理由など考えることもせずに、ブリクサはそのことにすら怒りを覚え、すがりつく数少ないまともな貴族達を振り払う。

「お待ち下さい、王太子殿下、それはさすがにいかがなものでしょうか」
 見かねて口を出したのは、この場にいる唯一の第三勢力である教会騎士団、団長シュテファン・レームだった。
 彼は言葉少ない人間ではあるが、何よりも義を重んじる男だった。今年で三十五になる彼は、言葉少なくはあるが謙虚にして豪胆、貴族より豪侠ごうきょうとの交流に重きを置く。そんな彼に多くの若者は心酔し、先を争って彼の部下になりたがった。
 シュテファン・レームはそういう男なのだ。

「貴様、誰に向かって口を利いている! 不敬だぞ! なにが教会だ! 貴様も処刑されたいのか?!」
「なんという侮辱! これ以上は付き合い切れん! もう行きましょう隊長!」
 シュテファン・レームの部下が主をおとしめられ激昂げっこうし、ブリクサを殺さんばかりの形相で睨みつけた。あまりの形相にブリクサは業恥ごうはじをさらしかけるが、シュテファン・レームが部下をたしなめたため、すんでのところで彼の矜持きょうじは保たれた。

「非礼はいくらでもおび致します。ですが、かような情勢下ゆえ、今は一人の命が重いのではないでしょうか。賢明なご決断をなさいますよう、お願い申し上げます」

 シュテファン・レームは嘆願を口にしながら、頭を垂れる。
 周囲の視線がブリクサに集中する。この場において、大声でブリクサを非難できるようなものはいない。いたとすればその人物こそが、シュテファン・レームだったろう。
 そんな人物が、頭を下げている。しかも、自分達にとっては赤の他人の命を救うために。
 誰も何も言わずとも、第二王子ブリクサ・グラーフ教会騎士団長シュテファン・レームの人徳の差は明らかだった。そして、この騎士団長が認めているのは第二王子ではない。
 廃嫡された第一王子、エミール・ヴェルナー・バイアーなのだ。

「わ……分かった! 分かったと言っているだろう! なんだその目は! お前ら……ボクを誰だと思ってるんだ!!! 貴様等、教会になど用はない! 分かったらさっさとこの国から出て行け! め!」

 その発言は、幼さゆえの暴言だった。第二王子が、まだ一桁の年の頃で王太子でもないであったならば、見過ごされていたかもしれない。しかし、彼は自らの手で王太子の座を奪い取ってしまった。
 そんな彼は、己の腐りかけた見苦しいプライドを守ることに必死で、周囲の状況を読み取ることができない。

 貴族達の無事を確認すると、教会騎士団は音も無く宮殿を後にして行く。
「お待ち下され!」
 ここへ来て、教会騎士団を引き止めたのは国王だ。今までどこにいたのかと、騎士団も損害を被っていた貴族達も白い目を向ける。第二王子よりは視界の広い国王は、その視線の意味を理解していた。

「今更何を言うことがあるのです? 今まで、何一つしてこなかったあなた方が」
 そう口を開いたのは副隊長だった。シュテファン・レームは何も言わない。ただ、彼はまっすぐに国王を見て、一度、頭を下げただけだ。
「早計ではありませんかな? 王太子殿下はまだ幼いのです。それをそんな――」
 続いて教会騎士団の前に立ちはだかったのはオストワルト公だった。彼は柔和を装った嘲笑をその顔に貼り付け、「子供のごとを本気で受け取るなど大人げない」と言いたげな様子で、団員達の前に立ちはだかる。
 彼は自信満々だった。位の高い人間として、他者からあがめ奉られ顧慮こりょされることに慣れていた。だから、教会騎士団もそうするだろうと思っていた。疑いもせずに。しかし、教会騎士団は冷静すぎるほどに冷静な目で己を見つめるだけだ。

「お……おいッ! 君達も彼等を説得――」
 ここへ来てようやく、彼等にとって己の存在が意味のないものである事に気づき、周囲を取り巻く貴族達へ助けを求める視線を送るが、誰も彼もが彼に背を向け始めた。

「我々も帰りますか」
「そうですな」

 貴族達のそんな声まで聞こえてきて、オストワルト公は己の立ち位置の変化に今頃になって気づき、愕然がくぜんとするしかなかった。



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