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本編
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しおりを挟むちなみに、イザベラの腰巾着をしている三人のメイドは、ユリスン子爵家に近しい男爵家や使用人の家系から連れ出している。
どことなく肩身の狭い、窮屈な生活を強いられていた状況を脱して、ようやく自らが屋敷を取り仕切れるようになったと、主人のような優越感を味わうために雇い入れさせたわけだ。
だから、当然のことだが子爵夫人を見下して良い立場の者達などではない。ロックハート王国にて、数々の重鎮を輩出してきた侯爵家に身を寄せていることで、自分達の立場が高くなっていると勘違いしてしまう者達なのだろう。
「ホホホ、あなた達はよく分かっているわ~。……しかし、ドレスなど残されている服飾は型落ちしたような古くさい物ばかり。だから、貧弱な彼女達にも勘違いさせてしまうのね。正式にダルトンと結婚すれば、すぐにでも王国一の侯爵夫人として相応しい品々を仕立てなくちゃ、もっと忙しくなるわよ~」
自分に相応しい品物ではないと、安物のようなドレスが悪いのだと、一度わざわざ手渡させてから最先端には程遠いと放り投げた。
上質な服装をしていれば、ギラギラと貴金属を輝かせていれば、それだけで自分が優れた人物に映ることを疑う様子はない。そのような自信に溢れた表情を取り戻している。
「相応しいと言えば、リリカンド侯爵令息様には、やはりエミリー様が相応しいですよね」
「そうよね、昨日お二人がテラスでお茶されている様子は、至高の絵画みたいで素敵でしたもの」
逢瀬を重ねている気分で、近隣にて噂話になってしまうほどカイセルとエミリーは頻繁に乳繰り合っている。
その評判が貴族社会で許容される範囲なのかどうかは別にして、メイド達には娘を褒めることが主人を称えることに繋がると認識されている。
「そうねぇ、楽しんでいるカイセル君にもそのつもりがあるみたいだし……、二つの侯爵家が結び付きを強めることが大事なのならば、愛し合っている者同士が結ばれるべきよね~」
「「「もちろんです」」」
「あんな引っ込んだ堅物より、エミリーが似合うのは間違いないわ、だから……」
自分の血を引く娘が褒められることを当然のことと受け止めて、邪魔なマリアベルを適当なところへ嫁がせてしまえばと、侯爵家を牛耳っている未来をイザベラは思い描いていく。
そんな悪い顔を見ながら、メイドがさらなる悪巧みを提案する。
「優れたお二人を支えるためにも、屋敷の古い使用人は入れ替えるべきと思います。大した仕事も出来ないくせに、勤めが長いというだけで、毎日グチグチと嫌味ばかりで……」
古くから侯爵家に雇われている使用人から、我々がぞんざいな扱いを受けていると彼女は嘆いてみせる。
「そうよね、口うるさくて無愛想な執事なんかは、わたくしもさっさと辞めさせたいわね」
やることなすことチェックしてくる執事や、躾のなっていない料理人をイザベラが思い浮かべる。
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