もう二度と、愛さない

蜜迦

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お出迎え

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 「ありがとう。きっと夫人も喜ぶわ」

 朝食を済ませ、部屋に戻った私は早速、お茶会で着用するドレスとジュエリーを選ぶことにした。
 アンヌたち侍女は若い令嬢が好む、明るい色味のドレスを勧めてきたが、どれもこれも、なんとなく今の私にはうるさく映ってしまう。
 きっと、自分の考えや気持ちを整理できていないことの表れなのだろう。
 結局私が選んだのは、まろやかなクリーム色のドレス。
 ごてごてと飾りの付いた夜会用とは違い、生地の上質さで勝負する、シンプルで上品なデザインは、今の自分にしっくりと馴染む。
 
 「お嬢様、ジュエリーはどれにいたしましょう」

 「控え目なものがいいわね……そのダイヤにするわ」
 
 侍女が広げたジュエリーケースの中から選んだのは、ドレスと同じくシンプルな一粒ダイヤのネックレスと、揃いのイヤリング。
 小ぶりだが、ダイヤの質はその輝きを見れば一目瞭然。
 柱時計に目をやると、そうゆっくりはしていられない時間だった。
 
 「じゃあみんな、お願いね」

 アンヌたちは、『心得ている』とでも言わんばかりの頼もしい顔で頷いた。


 *


 「まあぁ、リリティスちゃんが出迎えてくれるなんて嬉しいわ。ねぇ、アンリ!」

 「ええ。本当ですね。ありがとうございます、リリティス様」
 
 息子の手を借りながら、馬車から降りたオリオール夫人は、母の後ろに立つ私を見つけるなり嬉しそうに声を上げた。
 夫人は、ご長男であるアンリ様を出産する際、脚に障害を負ったのだと聞く。
 それを気にしてなのかはわからないが、オリオール夫人が社交の場に赴く際は、できる限りアンリ様が付き添われいるのは有名な話だ。
 オリオール夫人と母は古くからの友人で、そんなことも手伝って、アンリ様との接点は多かった。
 前世では、それとなくアンリ様から好意を伝えられていたのだが、いかんせんその時の私はレティエ殿下に夢中だったため、知らぬふりをしてしまったのだ。

 「うふふ……マリオンったら、私よりもリリティスに会えたことが嬉しそうね。妬けちゃうわ」

 「まあ、リリアーヌったら!……でも、あながち間違いではないかもしれないわ」

 「もう、あなたったら正直ね!」

 およそ高位貴族の会話とは言い難い、砕けた調子で笑い合う母親たち。
 私とアンリ様は目を合わせ、無言のまま苦笑する。

 

 

 
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