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出迎え
しおりを挟む開いた口が塞がらない──とはこういうことを言うのか。
「て、帝国の若き太陽。皇太子レティエ殿下!」
「お会いできて恐悦至極に存じます!」
頬を紅潮させ、母譲りの大きな青い目を爛々とさせる弟たちの姿に頭痛しかしない。
しかも揃って正装とはどういうことだ。
「出迎え感謝する。だが、よく私が来ることがわかったな」
「修道院から到着した御者が、レティエ殿下の側近の方より伝言を承っておりました!」
殿下は小さく『アベルか……』と呟いた。
修道院に置いてきたはずの馬車が、屋敷の正面に停められている。
私を抱きかかえたまま颯爽と、かつ鮮やかに下馬した殿下の姿に、瞳を輝かせるルカスとエリック。
舎弟感満載の姿に頭が痛くなる。
弟たちのこの状況、すべては私のせいなのだ。
巻き戻った年が悪かった──としか言いようがない。
この時弟二人は既に、私による洗脳済みだ。
なにがって、簡潔に説明すると、レティエ殿下がいかに素晴らしいかということに関して。
二人にとってレティエ殿下は憧れの英雄。
幸か不幸か先日末っ子のエリックは、修道院で殿下とまさかの邂逅を果たしたが、そのことに対し、ルカスはしばらく拗ねていたくらいだ。
「そなたは……先日修道院にいたな。姉を見習って、手伝いをしているのか?」
驚くことに、殿下はたった一度会っただけのエリックのことを覚えていた。
あの時はエリックの他に、たくさんの子どもがいたのにもかかわらず。
「あ、あの……僕……」
憧れの人を前にして、うまく言葉が出ないエリック。
けれどそのひたむきな瞳は、言葉にならないなにもかもを物語っていて、なんとも愛おしい気持ちになる、
「名前は?」
殿下の問いかけに、エリックの背筋が伸びる。
「エリックです!」
元気いっぱいの返事に殿下の表情が緩む。
しかし私は、二人のやり取りを横で聞いていたルカスのことが気になって仕方ない。
弟に先を越されたルカスは下唇を噛み締めている。
「あ、あの……殿下……!」
──あれが長男のルカスです
そう伝えようとした瞬間だった。
「ルカス。エルベ侯爵に大切な話がある。案内してくれるか?」
「えっ!?」
ルカスは驚き、きょとんとした顔を向けた。
それはエリックと、腕の中にいる私もだ。
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