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第十六話 親父の要求と現実~人間の価値

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 人間、やればできるもんで……色んなイミで……。こないだカナエから妊娠を告げられた。父親は俺だろう。っていうか俺しかいないし。街中じゃあるまいし、人間の男は俺しかいない。
「へぇで、性別は?もちろん女だよな?」男がいいだろ?家系的に。うちの家系は戦士だろ?男じゃないとだろ?「えー、女の子の方が可愛いよー」そしたら俺の存在が微妙なんですけど……。カナエは秘密主義なのか教えてくれないしなー。
 ライガが真顔で突っ立てる……。まーたおじさんと頭の中で討論してるんだろうけど、大変だなぁ。妊婦の私も大変なんですけどね!!
「そうだ!カナエ、言ってなかったな。ちゃんと。結婚して、ずっと一緒にいてください!」
「はい。でさー」
 うわっ、切りさえはやっ。
「今後の事なんだけど、やっぱテキトー達はそれぞれ群れに返した方がいいと思うのよね」
 すでに群れじゃないのか?
「テキトーは子供の頃からみてるけど、実はスナキツネって生態がハーレムなんだって。テキトーから聞いた」
「あいつ、人語が話せるのか?全くできないフリしてたのか?俺の前で」
「そうみたいだね。で、テキトーからそう聞いたよ。テキトーもいい年だし、繁殖期になるんじゃない?それなら、群れ?に仲間入りさせてあげた方がいいと思うの」
 それが自然か…。
「ユーラとユールはそのままで大丈夫でしょ?翼竜たちはあの子達だけで群れと言えば群れだし、問題はテキトーだけなんだけど。テキトーはわかるかな?他の個体がいる場所。そしてスナキツネの言葉はわかるのかな?」
 人語を理解する前にそっちだろ!全く。
「うーん、パンズのギルドマスターに問い合わせてみるか」


 パンズのギルドにて
「で、こういうわけなんですけど、スナキツネの居場所はだいたいわかりますか?」
「この国だと、最近見つかったわけじゃないから簡単。すぐにわかるわよ」
 手を叩いて合図した。使用人を呼ぶ?みたいなか?
「至急、スナキツネの居場所を地図に書いてくるように」
 そう言う。これは……マダムの風貌だけど、実はオッサンだったりするのかな?アキのギルドマスターは猫に見せかけて……ってのだったし。ここのギルドマスターもマダムに見せかけて、実はってパターンかも。ギルドマスター自体がそういうものかもなぁ。
 などと、俺が考えているうちに早々と地図が出来上がってきた。俺はスゲー、早っとか思ったのに。マダム曰く「まあまあ早かったわね」だそうだ。
「この目印の所にスナキツネがいるわよ。あなたが育てたんだもん。あなたの所のスナキツネ、それなりに強いんでしょ?」主にカナエが育ててたけど。カナエ誘拐の時に強いモンスタ―で引っかかったからまぁ、強いんだろうな。俺にお尻ぺんぺんされるけど。
「ありがとうございます!」
 こうして、テキトーも群れに帰した。ハーレムを作る事だろう。美人のスナキツネがいるといいね。でも、あいつマザコンだから、カナエに似てるスナキツネ……。微妙だな。


「さーて、それじゃまぁ。カナエの実家に挨拶に行かせてもらいます」
「わかりました」
「魔法でサクッと頼みます」
 サクッとカナエの家の前に着いた。
「うえー、すごいキンチョーするんですけど」
「仕方ないなぁ。お母さーん、お父さーん、ただいまー」
 うわっ、強硬的に入りやがった。もうこうなりゃヤケだ。
「すいません!順序が逆になりました!娘さんと結婚させてください!あと、カナエさんのお腹に俺の子がいます。すいません。順序が逆で」
「いいのよー、ライガ君と旅に出るって時点で私はライガ君と結婚するんだなぁって思ってたし」
「でもなぁ、孫かぁ……。なぁ、ライガ君、殴っていいか?」
 うおぅ、そうきましたか。でもまぁ、親父以外の人間の攻撃はあんまり効かないし。
「どうぞ。気のすむまで」
 俺の見通しが甘かった。カナエの親父さんは強い。何でだよ?聞いてないぞ?いちいち急所を狙ってくるから俺はちょこちょこ避けなきゃヤバいじゃんか。いつになったら気が済むんですか?
「ちょっと、お父さん!やりすぎ!もう気が済んだでしょ?ライガで遊んでるんじゃない?」
「バレたか。久しぶりになー」
「あ、口外してないけどお父さんは戦士だよ。ライガのお父さんと仲良しだし」
 なるほど。それで、強くて俺で遊ぶのか……。久しぶりって前にも俺で遊んだのか?数少ない俺で遊べる人間だし。国境の時の事もなんだか納得。
「あー、あれな。そう、若かりし頃。ライガの親父と所謂魔王と戦ったんだ。バトルのつもりで二人は体をそれはもう鍛えたさ。でもな、魔王との戦いの内容は酒の飲み比べだったんだよなぁ。いつの間にやら魔王とも意気投合しちゃってさぁ。魔王曰く『必要悪』というらしい。自分の事をそう言ってたよ。懐かしいなぁ」
 魔王、軽いな。酒かぁ。俺は下戸なんだよな。
「あ、カナエね。どうぞ」
「お父さん、軽い!」
「だって、ライガ君だし。問題ないもん。殴って遊んだし気は済んだ」
 遊ばれたんだ、やっぱり。
「これからライガ君のうちに行くんだろ?気ーつけてな」


 そして俺のうちに行った。相変わらず屋敷だし。
「で、カナエと結婚する。カナエは妊娠してる」
「うん、知ってる」
 そうだよな、よく俺の生活覗いてるもんな。
「カナエなんだけど、妊婦でこの後悪阻とかヒドイんだろ?だから今日から俺もカナエもここに住む。部屋は大量にあるよな。レイカはカナエに魔力を分けてやって」
「う」
「お、返事ができるようになったのか?すごいじゃん!」
「俺に似て頭いいのかなぁ?」
 親父は自分にうっとりしているようだが絶対違う。おふくろに似てるか、幼児としての正しい成長だろう。
「カナエ、いいだろ?あいつらも野に帰したし、問題ない。ここなら使用人もたくさんいるし、魔力も補給できる。環境的にいいと思う。カナエの実家にも近いし。そうだ!親父!なんで、カナエの親父さんと仲良し隠してたんだよ。他にも色々聞いたけどさ」
「隠し事がある方がカッコいい感じがするだろ?」
 それだけかい!それだけのために俺はかなり殴られたんですけど!
「あぁあ、あいつにけっこう殴られちゃったんだー」
「それは、俺が気が済むまで殴ってくださいって言ったから」
「俺には言わないの?」
「俺を殺す気なのか?」親父が俺を気が済むまで、って一撃でも入ったらカナエが未亡人になってしまう。
「はいはい、話は済んだ?カナエちゃんが娘なのね~。嬉しい~!」
 おい、あんまり強く抱きついてお腹潰すなよ。
「で、女の子だよね?カナエちゃん?」
 確定なのか?
「うちは戦士の家系だから男の子の方がいいんじゃないのかと再三言ってるだろ!」
「言ってない私も悪いかぁ。あのね、男の子と女の子の双子の予定」
 俺は腰が抜けるかと思った。マジかよ。いきなり二人増えるのかよ。いや翼竜の場合いきなり10頭は増えたけど。
「おぉ、さっすがカナエちゃん!俺の事も考えてくれたんだー」
 いや、親父の事とか全く考えてないと思う。
「え?おじさん何を考えてたんですか?」
「んもうっ。カナエちゃんってば水臭いなぁ。おじさんじゃなくて『お義父さん』って呼んで欲しいな。で、考えてた事?そ・れ・は俺の夢のハーレム~♪」
 馬鹿親父が発動してるな。胎教に悪い。
「母さんとレイカちゃんとカナエちゃんと孫に囲まれての老後!素敵だろう?」
 俺は?消えたのか?消したのか?頭の中だよな。親父なら簡単に俺を抹殺できるからな。
「親父、そういうのは胎教に悪いからやめてくれ」と親父の暴走を止めさせた。

 親父は楽しそうだな。カナエは顔色悪くなってきてるけど。これは、どうしたら……。
「おふくろ!カナエが気持ち悪そうだけど、どうしたらいいか俺にはわかんない」
「とりあえず、寝床を確保しましょ。横になって、悪阻にしては早い気がする……。お父さんの話を聞いて気分悪くなったのかも」
 親父が凹む。凹んどけよ、鬱陶しいから。
「あとは、使用人に任せとけば大丈夫でしょう!」
 丸投げですか……。
「俺は傍にいよう。親父もさぁ、男の子も腹にいるってのに女の子の事ばかり話して空気読めよ」
 傍にいてもやることにけど、少しは落ち着くかな?普段の状態に近いほうがいいよな。いきなりこの生活は慣れないよな。元気な体でも。それなのに全く親父ときたら!

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