上 下
7 / 24

第七話 カナエの変化~母性の発現?

しおりを挟む
 翼竜の巣みたいな場所が俺らの居場所になり、大人の翼竜は討伐(楽勝)。スナキツネといい、この子供翼竜といい、俺らはモンスターを育てる係だろうか?不思議だ。

 他の国を見て戦士の価値みたいなのを見たかったけど、俺だけなのかもな。
「カナエは何で他の国を見たかったんだ?」と俺は聞いた。
「うーん、広い世界を見たかっただけかもね。あの国の中だけじゃね」との回答。なるほどな。

 しかし……翼竜の子がデサロに懐かない。むしろ避ける。テキトーも同じだ。カナエ曰く「ちょっと震えてる」らしい。うーむ、なんだかなー。

 親父ー、どーよ?どーせ見てるんだろ?
『そうだなー。おめでとー。デサロは多分幹部クラスじゃないのか?モンスターの親玉の右腕みたいな。そもそも、お前の攻撃を受けても少しの怪我だったんだろ?自分で回復したか攻撃を受け流したかだなー』
 ステータスカードとかの数字も操れるのか?
『幹部クラスはなー。がんばれー』

 うーん、またカナエに手紙だな。
~カナエへ
 親父の見立てもあったんだけど、デサロはモンスターの親玉の右腕で幹部クラスじゃないかって。
 幹部クラスはステータスカード操れるらしい。
 今後、デサロを退治しなきゃだなぁ。テキトーも子翼竜もおびえてるし。ギルドからのミッションじゃないけど必要に迫られた。

~ライガへ
 わかった。テキトーも巣に置いて、なるべく広いところに行きましょう。私は本気でやるよ。後方支援できるんだから!!


 話は決まった。デサロは退治する。いい奴だと思ったんだけどなぁ。


「デサロ、弓の練習の仕上げだ!ちょっと離れてるとこまでいこーぜ!」
「カナエは……ほれ」俺は背中に乗るように促した。
「おんぶ?恥ずかしーじゃん、いい年して」
「誰も見てねーよ。お姫様抱っこよりいいだろ?」というと、カナエは俺の背に乗り、おんぶをする形になった。

 俺はなんだよ、カナエの胸ー!胸が背中に当たってる。全身柔らかい気がする。筋力はついてないのかー?というハメになった。


 かなり広い原っぱまで来て、俺の精神修養(カナエをおんぶ)は終わった。
「デサロ、お前も裏切るのか?どうして近づいた?できるなら本当の事をデサロ、お前の口から聞きたいと思う」
「何の話?弓の仕上げでここまで来たんじゃ……?」
 俺とカナエの顔は真顔だ。
「ライガ、カナエ、どこまで知ってる?」
「それが本当の姿か……」
「デサロがヒトではなく嘘であるということ」カナエは言う。
「デサロの方から本当の事を言ってくれて嬉しいよ」
 デサロの姿は翼竜に似ているが、それよりも禍々しい感じがする。
「私に弓を指導してくれてありがとう。私の武器が増えたよ」

 と話しながらも戦いは始まる。デサロの体に俺の剣は刺さらない。切れない。ヒト型じゃないから殴る場所もどうしたもんか。
 そんな時、後方支援のカナエが俺の剣に魔法をかけた。一時的だが、そこで剣を使いデサロにダメージを与えた。
「デサロ、血が出ているのだからおとなしくしてろ」というのに間合いをとった。そして、俺に向かい矢を射かけた。が、カナエが矢にステータスダウンの魔法をかけて、矢は役に立たなかった。足元に落ちるし。
「デサロ、今度は人間として生まれて来いよ」と俺は言って、デサロの喉に剣を突き立てた。


 はぁ~、疲れた。精神的に。体力は特に平気だ。カナエも元気がない。
「おい、お姫様抱っこでテキトーの所まで行くか?」
 ノーリアクションだ。実力行使だな。
「よっこらせっと。おんぶより重くねーか?」
 うーん、ノーリアクションが続くなぁ。さっさと戻ろう。
 カナエはテキトー他に癒されるだろう。およ?カナエの手が俺の首に巻きついている……。あ、泣いてる。
「泣くのはいいが、鼻水つけるなよ」
「あとで汚れとるの私だもん」
 とりあえず戻ろう……。


「ただいまー。テキトー、その他大勢寂しかったか?」
 俺には懐かないなぁ。カナエにはべったりなんだけどなぁ。
 意志の疎通ができればな。カナエはすっと何かを差し出した。
「デサロが落としたアイテム。モンスターと会話できる魔石」
 んー、デサロの遺品になるのか?物としては助かるが。
「有難く使わせてもらう」
 そういえば、お金は落としてなかったな。手ごたえは確かにあったのに。
 うーん、考えすぎかなぁ?カナエならもっと考えてるんだろうな。


 “デサロの遺品”を使った。「カナエー、さみしかったー!またあの男といたのか?」
 うーむ、こんな口が悪かったのか。世の中知らない方がいいこともあるというのは本当だな。
「カナエ、俺はこの魔石使わない」テキトーの口悪いし、その他にもどんなに言われることか……。
「そう?この魔石どうしよっか?特殊だし、売れないよね」
 迷惑な……。荷物か?ギルドに預けるか?
「ギルドマスターに言って預けるか?」
「それがいいかもね」
 意見が一致した。

アキにて
「ギルドマスターに会いたい」と受付で言った。以前と異なる種類の視線を感じる。うーん、A級冒険者として結構難しいミッションこなしてたしなー。
「どうぞ、こちらへ……」とあっさり通された。
 重そうな扉が開いた。やはり猫だ。
「久しぶりだな、ライガ・カナエ。ん?もう一人はどうした?」
「そのことで話が……」と俺は全てを話したうえで、魔石を預かってほしいと言った。
「それな、魔石の形になってるデサロかもしれない。石を粉砕すればよいが、元に戻っちゃうからなー」
「つまり、まだデサロは生きていると?」
「魔石の形でな。この石を粉々にすればデサロは消滅するんだけど……」
「それって、俺は砕くことはできる。あとはゴマをするみたいにやったらダメか?」
 親父もどうせ見てるんだろ?協力しろよー。
 あっ黙った。カナエ協力してくれないかな?魔石には魔力通じないんだよなぁ。
「じゃ、新しいミッションとしてこの石を粉々にすること!」ってことで。



 おぉう。なんてことを。うーん。一時実家に戻るかー。石については。
 カナエにはその旨を告げて俺は一人でサタハユに戻った。
 懐かしいな。この蔑む視線。
「親父、この魔石は……」と全てを話した。魔法じゃどうにもならないってのも伝えた。
「粉々にしなきゃいけないんだけど、俺じゃ砕くのが精いっぱい。親父、粉々にする方法わかる?」
「はははは、若いなぁ。まだまだケツが青い!」笑えないから、実家に戻って来たのに。
「まぁ、この石をすりつぶすとか考えてたみたいだけど、もしこの石の上に岩を落としたらどうなるんだ?」石がなんか汗かいてる……。
 意外とカンタン。俺の親父は「ちょっくら岩を拾ってくる」と家を出て行った。

 石が傷だらけのデサロの姿に戻った。
「ライガの親父なんだよ!危ねーな」
 同感。
「あ、俺より強いからね」
 と言うが早いか親父はデサロの頭と胴を切り離した。虫かよ……。「手と足も取ろうか?一応」と親父が言っているうちにさらさらとデサロは消滅した。やっぱ親父は強いなぁ。
 幹部クラスになると頭と胴を切り離さないとマズいらしい。そして多額のお金がもたらされた。
「岩、拾いに行ったんじゃなかったのかよ」
「そんなのポーズだよ、若いねぇ」

「俺らはミッションの成功費用もあるから一部でいい」と俺が言うと、「当たり前だろ?俺がほとんどやったんだから。うちにも貢献しろよ、息子よ」
 ガメツイな。まぁ、いいか。



 その後、また俺はアキのギルドマスターに石を粉々にした事を伝え、ミッションの成功報酬を受け取り、カナエとテキトーとその他のいるところへ戻った。ら、カナエとテキトーがいなくなっていた。
 休めないなぁ。俺はその他の子翼竜に囲まれたが、何を訴えているのかわからない。うーん……カナエがいない?それはわかる。見れば。
 はぁ、またギルドマスターに相談か……。


 アキにて、「ギルドマスターに会いたい」と受付に言った。
 これまた妙な視線だな。カナエを連れていないから、不満なんだろうか?
 ギルドマスターは一言。「ライガの親父さんに頼め」とな。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

【R18】スライムにマッサージされて絶頂しまくる女の話

白木 白亜
ファンタジー
突如として異世界転移した日本の大学生、タツシ。 世界にとって致命的な抜け穴を見つけ、召喚士としてあっけなく魔王を倒してしまう。 その後、一緒に旅をしたスライムと共に、マッサージ店を開くことにした。卑猥な目的で。 裏があるとも知れず、王都一番の人気になるマッサージ店「スライム・リフレ」。スライムを巧みに操って体のツボを押し、角質を取り、リフレッシュもできる。 だがそこは三度の飯よりも少女が絶頂している瞬間を見るのが大好きなタツシが経営する店。 そんな店では、膣に媚薬100%の粘液を注入され、美少女たちが「気持ちよくなって」いる!!! 感想大歓迎です! ※1グロは一切ありません。登場人物が圧倒的な不幸になることも(たぶん)ありません。今日も王都は平和です。異種姦というよりは、スライムは主人公の補助ツールとして扱われます。そっち方面を期待していた方はすみません。

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

処理中です...