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※逃亡2

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「足を怪我しちゃったみたい。」





それは今、森の中を走り続けなければならないリョクアとシュカナにとって文字通り最悪の状況である。
リョクアはシュカナの足を確認すると傷だらけな上に足首が赤くなっている。
おそらくこれから腫れるかもしれない。



「お兄様、私をおいて逃げて?」


「何言ってるの。
一緒に行こう、大丈夫、僕がおぶってあげるから。」


リョクアは妹を背にしてしゃがみこんだ。
しかし、いつまでも彼女の温もりはやって来ない。


「シュカナ、痛みで動けないの?
なら両手を出して、首にかけて抱えるから。」


「···お兄様、お願い、逃げて。」


振り向くとシュカナはうつむいていた。
地面についた手の甲には雫がぽたぽたと落ちていた。


「何言ってるの。
二人で逃げなくちゃ、置いていけないだろ。
大丈夫だから。」


「大丈夫じゃありません!!
私は足手まといです、このままじゃお兄様も巻き込んでしまいます。」


どうしても動こうとしないシュカナを説得しようと試みるがいやいやと首を降り続ける彼女に、リョクアはどうして良いかわからなくなってきた。






「まだ、見つからねーのか!
たかがお貴族のガキ二人だぞ!!」





「「···!!」」


突然、賊の声が森の中に響いた。
二人は顔を強ばらせながら周囲を見渡した。


そしてリョクアは何かを決心したように言った。


「わかった、シュカナはもう逃げなくていい。」


「お兄様···。」


やっと、自分の願いを聞いてくれたと思ったシュカナはわずかに顔を緩めた。





「───その代わり僕も残るよ。」


「えっ。何を言って···」


「おい、ガキども!!
早く出てこい!!そんなに遠くへはいけないのはわかってんだ!!」


言葉を賊の声に遮られたシュカナの顔は困惑した様子だった。
リョクアは少しだけ微笑んで安心させるように妹の手を握る。


「ほら、こんなに近くまで追っ手は迫っているんだ。
今動くのは最良じゃない。
どこかへ身を隠して二人でやり過ごそう。」


「···はい。」


確かに、リョクアの言うとおりだった。
無理に動いてしまえば相手に見つかってしまう。
こうなったのは自分のせいだと自分を責めつつシュカナは兄におぶられて二人で木のウロに身を隠した。





「何で見つからないんだよ!?」


数人と足音とともに賊の声がはっきり聞こえた。
どうやら木の裏まで辿り着いたようだった。


「このまま進めば詰所だよな。
もう保護されてるんじゃねーか?」


「いや、あそこまではまだ少しある。
それにこれだけの距離を走ったんだ、スピードが落ちてまだ森の中をさまよっているだろうよ。」


彼らの声に二人は思わず呼吸の音さえも漏らさないように手で口を覆った。




───お願い、早く行って!!




そんなシュカナの願いを押し潰すように賊の一人がぽつりと言った。


「ん?なんかこの地面、草が今までより広い範囲で折れているな。」


「本当だな。
もしかしたら、転んで動けなくなっているかもしれねぇ。」


「おい、この周辺にいる可能性が高いぞ!!
先に進むやつと周囲を探すやつで二手にわかれるぞ!!くまなく探せ!!」




───もう、動ける僕が囮になって気を引いた方がシュカナを逃がせるかもしれない。



リョクアは怯えるシュカナを抱き寄せた。
そして別れを惜しむように頭を優しく撫でて、小声で呟いた。


「シュカナ、ご···」


「いたぞ!!」


「そんなっ!!」


シュカナの悲鳴と伸びてくる手にリョクアは動けなかった。

───ああっ、ダメだ。このままじゃあっ!!








「はーい、失礼しまーす。
お二方はそこから出ないでねー。」


突然状況に合わない軽い声がしたかと思うと、ウロの中に手を伸ばした男が吹き飛ばされ、紫色の何かが降り立ったのだった。










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