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マリアさんとおしゃべり
しおりを挟むアシッダール王国はアズライト皇国から見て西にある隣国。
今から約100年位前にあった大陸戦争で両国は他の数ヵ国と同盟を組んで共に戦いに勝利した歴史を持つ。
戦争の後も同盟関係は継続されて今に至る。
「───とここまでがこの国でよく知られるアシッダール王国の情報です。」
広げた地図には東の海に面したアズライトの真西にアシッダール王国が書かれている。
マリアさんはそこを指差した。
「───王国にはただいま3人の王子と4人の王女がいらっしゃいます。
今回留学されるのは第二王子と第三王女で、どちらも歳は15歳です。
それから、王国と皇国は国境の半分近くが山脈で隔たれているために南に迂回して入国することが多いです。
今回もおそらく迂回して来るでしょう。」
「なるほど、マリアさんありがとうございます。」
私はマリアさんにお礼を言った。
実はアシッダール王国のことを詳しく知らないため彼女に空いた時間を使って教えてもらっていたのだ。
「いえ、私も復習になりますので助かります。」
マリアさんは無表情のまま答える。
どうも感情を表に出すことが苦手らしい。
しかし中身は真面目なためか純粋なようで表情に出ない分、頬や耳が赤くなったりそれこそ鼻血を出して倒れてしまったりと様子が体に出てしまう可愛さがある。
「リーナさんは勉強熱心ですね。」
「そうですか?
あ、でも、知識を深めることは強さになると孤児院で教わったものですから、自然とわからないことは調べる癖はついている気がします。」
『強さは武器』、それはよく孤児院の先生がの口癖。
体の強さ、頭の強さは必ず私達の武器になって助けてくれる、と言って先生はいつも子供たちをしごいていた。
「そうなのですね。
やはり、とても変わった孤児院ですね。」
「マリアさんとアリアさんはどんな風に育ったんですか?」
私が聞くと、マリアさんはとたんに表情を固くした。否、固くした気がした。
何かいけないことを聞いてしまったかもしれない。
「あの、話しにくいことであれば言わなくても大丈夫ですよ。」
「気を使わせてしまって申し訳ありません。
私たちが育った環境は良くはなかったものですから昔のことであるのにまだあの頃の気持ちを忘れられずにいるのです。」
マリアさんが視線を落とした。
そしてすぐに顔をあげて、だからリーナさんが羨ましいです、と付け加えた。
「いつか、リーナさんにもアリアとともに話せる時が来ればいいと思います。」
「はい、気持ちの整理がついたら教えてください。
待っていますから。」
私が微笑むと、マリアさんは目を細めた。
多分、微笑んでいるのだと思う。
···だって、とても優しい目をしているから。
私たちはそれからお茶会や歓迎パーティーについて話し合った。
───しかし、それは唐突に中断することになる。
話が盛り上がってきたところで突如ガーナードさんが部屋に飛び込んできたのだ。
「リーナさん、今すぐ西南の草原へ向かってください!!」
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