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国皇のお話
しおりを挟む「苦労をかけておいてなんだがこれからもフィオを頼む。」
「もったいなきお言葉です。
これからも国皇様の期待に添えるよう精進して参ります。」
国皇はすがるように言った。
もって一ヶ月、ということはそれよりも短い期間にやめていった人たちがそれなりにいるのだろう。
···本当に、姫さまなにやってるの。
「それよりもお父様、私にお話があるとのことでしたが?」
話題の姫さまは流石に居心地が悪いのか、話を進めることにしたようだ。
「あぁ、実はフィオに来月お茶会を開いてほしいんだ。」
「お茶会ですか。
急ですわね、何かあったのですか?」
『お茶会』という言葉を聞いて姫さまは叱られてしゅんとした状態から第一皇女の姿勢へと変わった。
お茶会は社交の場であり、高貴な身分の女性にとっては大事な仕事、そして戦いの場でもある。
この国で最も高貴な姫さまならなおさらその意味合いは強い。
しかも主催者としてお茶会を開くのだからこの切り替わりは当然とも言える。
そして、普段の姫さまから第一皇女になるこのギャップがかなり私の性癖に刺さる。
···おっと、いらない情報が紛れ込んだ。
「実は来月にアシッダール王国から王子と姫君が留学生として来ることになったのだが、歓迎パーティーとは別に編入前の交流の場が欲しいんだ。
あちらの王子たちとフィオは似たような年頃だから丁度いいと思ったんだけど。」
「なるほど、編入先は皇立学園で間違いないですか?」
「合っているよ。
それから一応こちらで招待客のリストを作成してみたから見てほしい。」
国皇が合図するとガーナードさんが姫さまの前に二枚の紙を置いた。
それぞれに貴族の子息女の名前が連ねられているようだ。
姫さまはリストを食い入るように見つめてから顔を上げた。
「お父様、スヴェルム公爵家令嬢、それからインスト侯爵子息とカイサル侯爵子息にアルバニャ伯爵令嬢は除きましょう。」
「さすがだね。」
「頼んでおいて試すなんて人が悪いですわね。
学園に通っていなくてもそれくらいの情報は持っています。」
私にはなんの話をしているのかよくわからないが、多分学校で問題になっている生徒もリストに入れていたのだろう。
情報力を試すために。
にしても、スヴェ···公爵?なんか聞いたことがあるような、ないような。
「しかし、なぜ私にこの話が?
学園に通っているお兄様たちにもできるでしょうに。」
「簡単に言えばフィオの実績作りだよ。
いままではあまり外交規模の大きなお茶会はすべて側妃たちに任せていたから。
そろそろフィオにも本格的に動いてほしいからね、同じ年頃同士だしいい練習になればと思って。
もちろん、彼らや側妃たちに手伝わせることは問題ない。」
「かしこまりました、では来月に向けて準備を行います。」
姫さまは専属侍女のクシュー姉妹に目配せをすると二人はうなずいて部屋を退出していった。
私は雇われてからお茶会ははじめてなのでそれがなんの合図かは分からなかった。
なんだか一人だけ置いてけぼりをくらっているようで寂しいです。
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