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選択肢なんて···

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「···まさか、あれか!」




私は驚きのあまり声に出してしまった。


「思い当たりがあったようでなによりだ。」


騎士様はホッとした顔をした。
1週間ある建国祭の5日目くらいの出来事だったので記憶を辿るのにずいぶん長い時間をかけてしまった。



「いや、まだ私の思い当たりが騎士様が思ってるものと合ってるかわからないじゃないですか。」


「路地裏で6人のチンピラに絡まれた少女を助けたはず。
容姿はラベンダー色の髪にエバーグリーンの瞳、背丈は貴女より少々低い。
彼女はこの国の姫君であらせられる。」




···合ってますね、はい。


てか、お姫様だったんですね!!
なんでそんな人が街中うろついてるの!?


「···あの日、姫君は自室から脱走したのだ。
前日から祭に行きたいと騒いでいて、毎日部屋の前に騎士をつけて見張っていたのだが、部屋の中なら人目がつかないのをいいことに窓から脱走したらしい。
そのため、これから専属護衛という名の見張りをそばにつけることになったのだが、襲われた時に助けてくれた貴女がいいとの一点張りで···。
姫君を見張ってくれるだけでいい。
何かあれば呼んでくれれば駆けつける。」


私は美少女、もといお姫様の容姿を思い出してみる。
うん、どう思い出しても儚げ美少女だ。
とても部屋から脱走なんてしそうな子には見えない。
見た目によらずお転婆さんなんだなぁ。

説明をしていてそのときを思い出したのか、途中から騎士様は疲れた顔を見せた。
多分、こんなことは一度や二度じゃないのだろう。
これは護衛は護衛でもお姫様が起こす騒動から城勤めの人たちを護る方の護衛だな。


「私がお姫様の護衛に選ばれたのはそれだけじゃないですよね。」


私が言うと騎士様はハッとした後視線を落とした。


「お姫様が騒いだだけじゃ護衛の話が私にまわってくるはずないですよね。
おそらく、彼女に何かあった場合に平民なら切り捨てやすいとのことなのでしょう。」




「···すまない。」



やっぱりね。




お姫様や皇帝に近づけるチャンスなのに貴族が名乗りをあげないわけがない。
しかも、皇族のお願いは平民の私には勅命と同じだ。
断ったらこの店を潰されかねない。
わかっていて、私に考える猶予を与えていたのだろうな。




「返事を考える猶予を与えたのは私を試すためですよね。」


「···そこまで分かるのか。」


まぁ、花の街で生きてきたわけですし。
こういう深読みはできないとアンアン哭いてる間もうまく立ち回れない。







···昨日は驚きすぎて思考が止まっただけなんだからね!
例外よ、例外!!




「それでは返事をもらいたい。」


選択肢なんて一つしかないじゃん。








「私のような娼婦でよろしければ謹んでお受けします。」







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