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名乗るほどのものじゃない
しおりを挟む「お嬢さん起きれそう?」
私は倒れたまま呆けてる美少女に手を差し伸べた。
これ、なんかお姫様を助ける騎士みたいじゃない?
やだ、私カッコいい!!
「···ありがとうございます。とても助かりました。」
よっぽど怖かったんだろう、まだ体が震えている。
あ、肘とか手とか擦って血が出ちゃってる。
膝もか、逃げるときに転んだかな。
「少し待ってね。」
彼女を起き上がらせるとまず汚れを払ってあげる。
そして屋根へおみやげが入った手提げをとりにもどった。
「怪我した場所見せてくれる?
簡単に手当てをするから。」
「えっ、でもそこまでは···」
「いいから見せて。
ほっといたら、足が腐り落ちるかも。」
その言葉に顔を青くした彼女はおずおずと傷口を見せた。
あまりの怯え具合に悪いことをしたなと反省した私は、稀にあるだけだからそうそうならないよ、と謝罪とともに付け足した。
水筒とおみやげの中から度数の高いアルコールと怪我をしたとき用のポーチから包帯を出して手当てをする。
ついでに余った包帯やら持ってる紐状のもので男たちを縛っておくのも忘れない。
「───お嬢様ーーー!どこにいらっしゃいますかーーー!」
「っ、あの声は!」
手当てをされ大人しく座っていた美少女がはっと顔をあげた。
どうやらお迎えが来たらしい。
聞こえてくる声がわりと近いしもう大丈夫だろう。
私は地面を蹴って屋根へ飛び乗る。
「もう大丈夫っぽいから、もう行くね。」
「あの、本当にありがとうございました!!
お礼をさせていただきたいのですが、お名前を伺ってもいいですか?」
「名乗るほどの者じゃないもので!
じゃあね、美少女さん。」
私はそうして店に帰った。
おみやげのアルコールをもらうはずだった姐さんには、怪我をした女の子に使ってあげたことを説明したら、まぁしょうがないか、と笑って『3日間毎日マッサージする』という条件で許してくれたのだった。
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