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結章
結章 第二部 第二節
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「このあたりだな……」
記憶と重合する風景を探して、シゾーは街中を見回した。
王裾街にある街路など数えてもきりがないが、その中でも商店が近く三階建ての構造物が見られる区画となると、相当に数は限られる。商魂たくましく人通りが行き交う表通りから外れて、奥にあるはずの<風青烏>を目指す。
ほどなくシゾーは、目当ての場所に行きつくことが出来た―――ただし、思いもかけない光景に出迎えられて。
目をぱちくりさせつつ、呼びかける。
「……アシューテティさん?」
「きゃ!」
一階。<風青烏>の事務所のドアにぴったりと張り付いて聞き耳を立てることに専念していると見えた彼女―――アシューテティは、どうやら見た目通りに没頭していたようで、背後からの声に、伸ばした金髪を大仰に跳ね上げさせた。そして、おっかなびっくりこちらを向いて……見上げてくる頃には、こらえていた呼気を安堵に吐き出している。片手で胸を撫で下ろしながら、もう片手の甲で額の汗を拭く真似までしてみせた。
「っあー、おっどろいたーあ。シゾー君じゃないの。どうしたの? 久しぶりね」
「ええはい。あの。お久しぶりです。アシューテティさんも相変わらず可憐な新妻っぷりで、キアズマが羨ましい」
「出合い頭に歯の浮くよーなタラシ節も変わらないわねー。あたしだから別にいいけど。そんな言い回しが似合ううちに、誰かちゃんとしたの捕まえなさいよ。そんな甘言にヘコヘコ寄ってくる樹液舐めたがりのへっぽこ虫じゃない、光る子をね」
ジト目に説教を連ねてくる彼女を真に受けるでもなく、道化じみた半笑いを浮かべながら反駁を口にする。
「火垂る虫なんて追いかけてるうちが華ですよ。追い付いたら最後、虫だって判明するだけです」
「だから大切にするんでしょ。見つけて追いかけたのは、あなたの勝手な夢。あなたに追い付かれた虫に宿る、現実の五分の魂を大事になさい。生き返らせることも出来ないんなら、なぁんだ虫だったーなんて殺すんじゃないわよ」
「……ゴキブリも?」
「んなわきゃないでしょう。あんの非衛生的なブラックてかりシャカシャカ密偵部隊どもと、どーして火垂る虫を同列に出来るのよ。月とスッポンよ。スッポンなら大人しくフリスビーにされて生き血を抜かれていたらいいのよ」
「うあ軽はずみに拷問。……まあ命の値札なんて、ヒト様からしたら、そんな程度のどんぶり勘定かもしれませんね。虫だし」
目蓋を半分下げた裏で諦めを燈し終えると、シゾーは話を切り替えた。<風青烏>のドアを、アシューテティもろとも見下ろして、
「んで。なんでまた聞き耳なんか立ててたんですか?」
「上の階まで響いてきたから。あの人の大声」
「大声? キアズマが?」
「滅多にそんなことないでしょ。ちょっと心配で」
「ですね」
シゾーもまた、頷く。
貴族の遺産とやらで、キアズマは感情が高ぶるにつれ、口回しが早口かつ平淡、しかも冗長となるきらいがある。言ってしまえば、平民層の者が喧嘩を買う時に切る啖呵が短い決まり文句であることの、真逆だ。そうする余裕さえ失くすほど忘我に駆られる怒り様など、筺底にいた時分ならいざ知らず、ここしばらくは耳にしたことがない―――が、確かに耳を澄ますまでもなく、ドア向こうから大音声が漏れ出てきていた。単語の意味を聞き分けられるほどではないが。
ドアノッカーに手をかけて鳴らしながら、シゾーは わきに立ったままでいるアシューテティへと申し出た。
「僕、あいつに用があって来たんで、ついでに宥めときますよ」
「そう。ありがと。なら、あたしは戻るわね。お仕事に口を挟むのは気が引けていたから、たすかったわ」
「どういたしまして。じゃ、これで」
それを最後にアシューテティと別れ、<風青烏>の事務所へと立ち入る。
なんというか、事務所は事務所である。壁際の屑籠に、壁に張られた勤務表と、その上に掲げられた旌旗の紋章―――以煽開舞の華蕾。六人の事務員と九つの事務机が、日々の事務をこなすなりに乱雑に使われ、使われたなりに汚いままとなっている。箱庭との仲介を始め、多くの任務を<彼に凝立する聖杯>から請け負っているにせよ、基本的に義賊と旗司誓は独立独歩の発展を認め合う間柄だ……貴族として真っ当な教育を徹底された経歴が明らかであるため、最近は商家の会計事務を請け負う割合が増えていると伝い聞きしてはいたが、それにしても線の細い若造―――どの口でほざけた身分かという自覚はあるが<彼に凝立する聖杯>元副頭領とくれば誰も異存あるまい―――ばかり室内に残されて、やはり気弱に誰も彼もが気まずげな目線を俯かせている。その中で、シゾーは怒鳴り声の出所を見定めた。事務所の端あたりに、応接用の間取りが衝立で区切られている。その、内側。
「―――くどい! 出席せぬと言っておろう! 斯様な天下分け目の一大事に、頭領たる者が不在になどなれぬわ!! うつけが!!」
「しかし、もう御衣裳まで、こうしてこちらに。今回は御母堂様のみならず、御当主たるツェペランジュ様たっての依頼で……」
「ハッ、然様であろうな。当然だ。瘋癲の末子が事態の関係者と目さるれば、集いの生き餌として抛り込みたくもなろうよの……さすれば後日、お膳立てをした主賓として鼻高々と振る舞えもする! 断固として断る! 貴様なぞ、いつまでもここで正装を小脇に前払い金を数えておるがよいわ―――ネモ・ンルジアッハの走狗め!!」
直後だった。ばん! と八つ当たりまぎれに大股を踏み込ませて、キアズマが―――キアズマ・ネモ・ンルジアッハが、衝立の裏からおん出て来る。視線に貫通力があるなら心臓まで射殺せそうなまでに憤激を焚いた両目を、当の来客から室内へ引き戻して―――ドア間際にいたシゾーの姿を認めた途端、鉄砲水でも食らったかのようにそれを鎮火させた。
「ツァッシ!?」
「ようキアズマ。荒れてるな」
旗司誓としての常套句代わりに、なんとはなしに片手を上げてみたりしながら応じるのだが。
当のキアズマには、そんな小細工など気付く余地もなかったようだ。ひとまず彼は上司らしい圧力を込めた眼差しをぐるりと一巡させて部下をそそくさと各自の仕事に戻らせると、こちらへ詰め寄りがてら苦々しい唾棄を遂げてくる。
「ああまあ色々お前のせいだ」
「そうか。悪かったな」
「それで済ますな。現在進行形だ」
「そうなのか。悪いな」
「しゃあしゃあと言われるだけ小癪極まるわこのワイルド増量キャンペーンボーイが。五割だぞ。五割は増しとるぞ今のとこ。なんだそのヒゲ面。どうしたというのだ出で立ちまでも」
さほど広くもない事務所である。せりふを末尾まで言い終える頃にはキアズマもシゾーの目前で立ち止まっており、苦虫を噛み潰していることを……ついでに今ではそのシゾー当人こそ苦虫であると、顔つきに顕わにしてくれていたのだが。
だからと言って、臆する必要もない。シゾーは右手の指の腹で無精髭をさすりながら、小首を傾げた。
「ふぅん。じゃあ、これを打ち明けたら、もう一割くらい増しそうだな」
「は?」
「エニイージーに刺された。副頭領も辞めた。でもって、これから死ぬかも知れん。それでも心は折れちゃいない。どうだ。ワイルドだろ?」
告げ終えて、唇を曲げる。にやりと不敵に。
手をそこに触れさせていたので、隠れてしまっていたとしても分からなかったが、しっかりと目撃してくれたらしい。悩ましげに二本指でこめかみを押さえたキアズマが、そのまま小刻みに頭を左右に振る。そして、その手を拳に変えると、そこから立てた親指で肩越しに事務所の奥を示した。
「……一割で済ますな。こちらへ参れ」
首肯して、シゾーは背を返したキアズマを追った。
とは言え、何メートルと移動するでもない。丁字に飛び出た壁で事務所と半隔離されているだけの、給湯室と雑庫を混ぜ合わせたような狭苦しいスペースである。しかもそこに大の男が二人して詰まるとなると、むさ苦しい以外のなにものでもない。奥の壁に寄しかかるようにしたが最後、隠そうともせず機嫌の悪さを煮詰め出したキアズマの対角に陣取って―――単にそこが最も間合いを稼げるところだっただけだ―――、シゾーは口火を切った。
「客はいいのか?」
「よい。客ではない」
「ないのか?」
「実家が遣わせた僕だ。集いに参加せられるべしとな」
「集い?」
「そうだ。ツァッシ。お前、現王ア族ルーゼ家ヴェリザハー陛下が御薨去あそばしたという下馬評は聞いたか?」
「……寝耳に水だ」
(―――実父まで逝ったのか。とうとう。あいつは)
容赦ない現実に、言葉を失くす。
その間も、ただただキアズマの解説は続けられていた。
「王裾街では巷間を騒がせる俗言どまりだが、王襟街ではとうに公認されておる―――お前たちが仕出かしてくれた諸事情の絡みで、霹靂ザーニーイの夭逝および後継第一階梯の生還ならびに帰還もろとも、口頭戒厳令下にされておるだけだ。どうした? なにを泣く」
「え?」
「泣きを見もするか。裏切られたのなら」
「キアズマ?」
訊き返しながら、頬に手をやる。目頭から目尻までなぞっても、そこを縁取っている睫毛しか指先に感じない……のだが。
だのに、さもありなんと決まり悪げに、話し相手は目を伏せたままでいる。口調も、どことなく億劫げに歯切れ悪くなった。それでも、先を急いで話していく。
「兎にも角にも。通常は、玉喪の礼にて国葬が完了するまで、二か月ほどを要する。それまでに、貴族には踏まねばならぬ段取りが数多とあるのだ。なかでも、最たるものが―――」
「連日連夜しての通夜パーティーだろ。最近じゃ、八年前の戦争で成り上がって貴族に入り込んだ金持ちや軍人が香典額で自己アピールする場になってきてしまっている上、それすら肴にしたがる下衆貴族どもの鬱屈と入り乱れて、とても上品さがあるとは言い難いとか」
「……よく知っておるな」
「さっき知らされた。主催者から」
「は?」
「なんか半年前のア族ルーゼ家大惨事ドミノ後の集いって、これまた最大級の規模で行われたんだってな。その乱痴気騒ぎで懲り懲りになったのか、そん時の香典に大枚はたき切ったせいか、今回は主だった貴族の中でも特に老顔や古参が直参して来ないんだとさ……そういう連中の後継者が新顔みたいにやってくるだけで。こうなると天然の抑え役までいないもんだから、集いは半年前より無礼講が右肩上がりになってるらしい―――俺は古い連中が顔を見せないのは、ヴェリザハー・ア・ルーゼが二十年以上も公務を空白にしていたから、どのツラさげてって線もアリだと思うけどな。新顔を寄越すのだって、次期王に覚えを新たにって意図だろうし。まあその辺の裏事情は、どうでもいい」
鳩が豆鉄砲を食らったように唖然としているキアズマを見やって、シゾーは鼻を鳴らした。他人事ながら、鼻で笑ってしまったとも言える。
「んで。まだ下々には公表されないながらも、集いはあるんだから参加せよって、ビッグ・ダディからお達しか。お前が<彼に凝立する聖杯>直下の義賊を率いる頭目だから、革命どうこうについて真相を暴露させて、自分たちもその感興に便乗しようって腹だな」
「だろうよ」
「いつだっていつまでもお前のことを余裕でお舐めにしてくれるな、お前んとこの家。坊っちゃん坊っちゃんと甘々な贔屓目にしときながら、暇つぶしだけは高利貸しより貪欲に取り立てとくる」
「ああ、まったくもってその通りだ! こんな時までも見縊りおって! 俺はネモ族ンルジアッハ家の余興のためにアシューテティと義賊を選んだのではないぞ!」
強弁ごと激怒を再燃させたキアズマに―――
シゾーは、すうっと細めた双眸と共に、矛先を返した。
「そう断言することに、後ろ暗いだろう。キアズマ」
「なに?」
「三年前だったな。お前が結婚して義賊となり、ここに拠点を移したのは」
話の切り口から巧妙に、より深い部分まで斬り込んでいく。鼻白み、二の句が継げないでいる彼へと。
「三年より以前から、俺が筺底に居着くのと入れ違いに、お前はシザジアフに連れ立って<彼に凝立する聖杯>の旗司誓となっていた。そもそも筺底に足を踏み込んだのだって、腐り果てた蒼炎が、憧れの旗司誓の成れの果てだと認められなかったからだ。そのピンからキリまでに―――お前が感じている負い目は、独り相撲だよ」
「負い目だと?」
「ああ負い目だ。筺底の頃から、お前に接するたびに感じていた。一挙手一投足に沁み込んだネモ族ンルジアッハ家らしさが、自分の存在理由を侵犯しているような愚弄を覚えるんだろ……旗司誓への憧憬も、蒼炎への嚇怒も、旗司誓を経て義賊となりアシューテティさんと暮らしていることですら、ネモ・ンルジアッハへの反骨に唆かされての産物でしかないように感じているんだ。しかも結局は今も、赤毛であることや貴族であることが役立ってくれている。その中途半端さが、後ろめたいんだ。だから、実家からの呼びつけには従うし、アシューテティさんを束縛してしまう。そうする都度、葛藤と劣等感を拗らせながら」
「……分かった風な口を利きおって」
「分かるさ。どうしようもなく―――どうしたところで蒼炎の中なのは俺だから」
「なに?」
「同じなんだ―――お前は、俺と。ただしお前は、選べずにいる。このまま、そこに居続ける気か? 我が身可愛がりに……裏切り者らしい逃げ場所に、居心地悪く煙に巻いた奥で隠れ住み続けるのか?」
こたえなど、聞くまでもない。
シゾーは、ささくれた剣呑な気配に応答を沈めたままでいるキアズマへ、最後のひと押しをくれた。乞うように視線を下げ、声までも今以上に潜めながら。
「俺に力を貸してほしい」
「<風青烏>としてか?」
「いいや。個人的にだ」
「友としてか?」
「もっと打算ずくの共謀だ」
「成る程。悪餓鬼・糞餓鬼の結託の再来というわけか、ツァッシゾーギ。であらば、まずは俺の得る見返りから聞こう」
と、挑発ならば受けて立つとばかりのぶっきらぼうさで、鋭利に破顔してみせる。
それを揶揄するでもなかったが。シゾーは変わらぬ平淡さで応じた。
「そいつも蓋を開ければ、俺と同じだ」
「なんだと?」
「そうだな。もう少し例を具体的にしよう。お前は、実家と完全に縁を切って、こころおきなくここに居られるようになる。俺は、腐れ縁を引っ張り戻す―――ザーニーイをシヴツェイアとして後継第一階梯らしく据え置きやがった、王冠城デューバンザンガイツの天辺から」
目蓋を元通りに上げると、キアズマはこちら以上に両目を見開いて沈黙していた。ただしその沈黙は、迂遠に拒絶する意思を発散してのそれでなく、こちらの動きを警戒しての―――あるいは、待ち受けての、それだと思えた。
シゾーは、口を開いた。
「話を聞いてほしい。打ち明け話だ……最初から包み隠さず、洗いざらいに、だ。長い話になる―――そのあとでいい。決めるのは、お前だ」
そして、語り始める―――物語を。その終末を得んがために。
記憶と重合する風景を探して、シゾーは街中を見回した。
王裾街にある街路など数えてもきりがないが、その中でも商店が近く三階建ての構造物が見られる区画となると、相当に数は限られる。商魂たくましく人通りが行き交う表通りから外れて、奥にあるはずの<風青烏>を目指す。
ほどなくシゾーは、目当ての場所に行きつくことが出来た―――ただし、思いもかけない光景に出迎えられて。
目をぱちくりさせつつ、呼びかける。
「……アシューテティさん?」
「きゃ!」
一階。<風青烏>の事務所のドアにぴったりと張り付いて聞き耳を立てることに専念していると見えた彼女―――アシューテティは、どうやら見た目通りに没頭していたようで、背後からの声に、伸ばした金髪を大仰に跳ね上げさせた。そして、おっかなびっくりこちらを向いて……見上げてくる頃には、こらえていた呼気を安堵に吐き出している。片手で胸を撫で下ろしながら、もう片手の甲で額の汗を拭く真似までしてみせた。
「っあー、おっどろいたーあ。シゾー君じゃないの。どうしたの? 久しぶりね」
「ええはい。あの。お久しぶりです。アシューテティさんも相変わらず可憐な新妻っぷりで、キアズマが羨ましい」
「出合い頭に歯の浮くよーなタラシ節も変わらないわねー。あたしだから別にいいけど。そんな言い回しが似合ううちに、誰かちゃんとしたの捕まえなさいよ。そんな甘言にヘコヘコ寄ってくる樹液舐めたがりのへっぽこ虫じゃない、光る子をね」
ジト目に説教を連ねてくる彼女を真に受けるでもなく、道化じみた半笑いを浮かべながら反駁を口にする。
「火垂る虫なんて追いかけてるうちが華ですよ。追い付いたら最後、虫だって判明するだけです」
「だから大切にするんでしょ。見つけて追いかけたのは、あなたの勝手な夢。あなたに追い付かれた虫に宿る、現実の五分の魂を大事になさい。生き返らせることも出来ないんなら、なぁんだ虫だったーなんて殺すんじゃないわよ」
「……ゴキブリも?」
「んなわきゃないでしょう。あんの非衛生的なブラックてかりシャカシャカ密偵部隊どもと、どーして火垂る虫を同列に出来るのよ。月とスッポンよ。スッポンなら大人しくフリスビーにされて生き血を抜かれていたらいいのよ」
「うあ軽はずみに拷問。……まあ命の値札なんて、ヒト様からしたら、そんな程度のどんぶり勘定かもしれませんね。虫だし」
目蓋を半分下げた裏で諦めを燈し終えると、シゾーは話を切り替えた。<風青烏>のドアを、アシューテティもろとも見下ろして、
「んで。なんでまた聞き耳なんか立ててたんですか?」
「上の階まで響いてきたから。あの人の大声」
「大声? キアズマが?」
「滅多にそんなことないでしょ。ちょっと心配で」
「ですね」
シゾーもまた、頷く。
貴族の遺産とやらで、キアズマは感情が高ぶるにつれ、口回しが早口かつ平淡、しかも冗長となるきらいがある。言ってしまえば、平民層の者が喧嘩を買う時に切る啖呵が短い決まり文句であることの、真逆だ。そうする余裕さえ失くすほど忘我に駆られる怒り様など、筺底にいた時分ならいざ知らず、ここしばらくは耳にしたことがない―――が、確かに耳を澄ますまでもなく、ドア向こうから大音声が漏れ出てきていた。単語の意味を聞き分けられるほどではないが。
ドアノッカーに手をかけて鳴らしながら、シゾーは わきに立ったままでいるアシューテティへと申し出た。
「僕、あいつに用があって来たんで、ついでに宥めときますよ」
「そう。ありがと。なら、あたしは戻るわね。お仕事に口を挟むのは気が引けていたから、たすかったわ」
「どういたしまして。じゃ、これで」
それを最後にアシューテティと別れ、<風青烏>の事務所へと立ち入る。
なんというか、事務所は事務所である。壁際の屑籠に、壁に張られた勤務表と、その上に掲げられた旌旗の紋章―――以煽開舞の華蕾。六人の事務員と九つの事務机が、日々の事務をこなすなりに乱雑に使われ、使われたなりに汚いままとなっている。箱庭との仲介を始め、多くの任務を<彼に凝立する聖杯>から請け負っているにせよ、基本的に義賊と旗司誓は独立独歩の発展を認め合う間柄だ……貴族として真っ当な教育を徹底された経歴が明らかであるため、最近は商家の会計事務を請け負う割合が増えていると伝い聞きしてはいたが、それにしても線の細い若造―――どの口でほざけた身分かという自覚はあるが<彼に凝立する聖杯>元副頭領とくれば誰も異存あるまい―――ばかり室内に残されて、やはり気弱に誰も彼もが気まずげな目線を俯かせている。その中で、シゾーは怒鳴り声の出所を見定めた。事務所の端あたりに、応接用の間取りが衝立で区切られている。その、内側。
「―――くどい! 出席せぬと言っておろう! 斯様な天下分け目の一大事に、頭領たる者が不在になどなれぬわ!! うつけが!!」
「しかし、もう御衣裳まで、こうしてこちらに。今回は御母堂様のみならず、御当主たるツェペランジュ様たっての依頼で……」
「ハッ、然様であろうな。当然だ。瘋癲の末子が事態の関係者と目さるれば、集いの生き餌として抛り込みたくもなろうよの……さすれば後日、お膳立てをした主賓として鼻高々と振る舞えもする! 断固として断る! 貴様なぞ、いつまでもここで正装を小脇に前払い金を数えておるがよいわ―――ネモ・ンルジアッハの走狗め!!」
直後だった。ばん! と八つ当たりまぎれに大股を踏み込ませて、キアズマが―――キアズマ・ネモ・ンルジアッハが、衝立の裏からおん出て来る。視線に貫通力があるなら心臓まで射殺せそうなまでに憤激を焚いた両目を、当の来客から室内へ引き戻して―――ドア間際にいたシゾーの姿を認めた途端、鉄砲水でも食らったかのようにそれを鎮火させた。
「ツァッシ!?」
「ようキアズマ。荒れてるな」
旗司誓としての常套句代わりに、なんとはなしに片手を上げてみたりしながら応じるのだが。
当のキアズマには、そんな小細工など気付く余地もなかったようだ。ひとまず彼は上司らしい圧力を込めた眼差しをぐるりと一巡させて部下をそそくさと各自の仕事に戻らせると、こちらへ詰め寄りがてら苦々しい唾棄を遂げてくる。
「ああまあ色々お前のせいだ」
「そうか。悪かったな」
「それで済ますな。現在進行形だ」
「そうなのか。悪いな」
「しゃあしゃあと言われるだけ小癪極まるわこのワイルド増量キャンペーンボーイが。五割だぞ。五割は増しとるぞ今のとこ。なんだそのヒゲ面。どうしたというのだ出で立ちまでも」
さほど広くもない事務所である。せりふを末尾まで言い終える頃にはキアズマもシゾーの目前で立ち止まっており、苦虫を噛み潰していることを……ついでに今ではそのシゾー当人こそ苦虫であると、顔つきに顕わにしてくれていたのだが。
だからと言って、臆する必要もない。シゾーは右手の指の腹で無精髭をさすりながら、小首を傾げた。
「ふぅん。じゃあ、これを打ち明けたら、もう一割くらい増しそうだな」
「は?」
「エニイージーに刺された。副頭領も辞めた。でもって、これから死ぬかも知れん。それでも心は折れちゃいない。どうだ。ワイルドだろ?」
告げ終えて、唇を曲げる。にやりと不敵に。
手をそこに触れさせていたので、隠れてしまっていたとしても分からなかったが、しっかりと目撃してくれたらしい。悩ましげに二本指でこめかみを押さえたキアズマが、そのまま小刻みに頭を左右に振る。そして、その手を拳に変えると、そこから立てた親指で肩越しに事務所の奥を示した。
「……一割で済ますな。こちらへ参れ」
首肯して、シゾーは背を返したキアズマを追った。
とは言え、何メートルと移動するでもない。丁字に飛び出た壁で事務所と半隔離されているだけの、給湯室と雑庫を混ぜ合わせたような狭苦しいスペースである。しかもそこに大の男が二人して詰まるとなると、むさ苦しい以外のなにものでもない。奥の壁に寄しかかるようにしたが最後、隠そうともせず機嫌の悪さを煮詰め出したキアズマの対角に陣取って―――単にそこが最も間合いを稼げるところだっただけだ―――、シゾーは口火を切った。
「客はいいのか?」
「よい。客ではない」
「ないのか?」
「実家が遣わせた僕だ。集いに参加せられるべしとな」
「集い?」
「そうだ。ツァッシ。お前、現王ア族ルーゼ家ヴェリザハー陛下が御薨去あそばしたという下馬評は聞いたか?」
「……寝耳に水だ」
(―――実父まで逝ったのか。とうとう。あいつは)
容赦ない現実に、言葉を失くす。
その間も、ただただキアズマの解説は続けられていた。
「王裾街では巷間を騒がせる俗言どまりだが、王襟街ではとうに公認されておる―――お前たちが仕出かしてくれた諸事情の絡みで、霹靂ザーニーイの夭逝および後継第一階梯の生還ならびに帰還もろとも、口頭戒厳令下にされておるだけだ。どうした? なにを泣く」
「え?」
「泣きを見もするか。裏切られたのなら」
「キアズマ?」
訊き返しながら、頬に手をやる。目頭から目尻までなぞっても、そこを縁取っている睫毛しか指先に感じない……のだが。
だのに、さもありなんと決まり悪げに、話し相手は目を伏せたままでいる。口調も、どことなく億劫げに歯切れ悪くなった。それでも、先を急いで話していく。
「兎にも角にも。通常は、玉喪の礼にて国葬が完了するまで、二か月ほどを要する。それまでに、貴族には踏まねばならぬ段取りが数多とあるのだ。なかでも、最たるものが―――」
「連日連夜しての通夜パーティーだろ。最近じゃ、八年前の戦争で成り上がって貴族に入り込んだ金持ちや軍人が香典額で自己アピールする場になってきてしまっている上、それすら肴にしたがる下衆貴族どもの鬱屈と入り乱れて、とても上品さがあるとは言い難いとか」
「……よく知っておるな」
「さっき知らされた。主催者から」
「は?」
「なんか半年前のア族ルーゼ家大惨事ドミノ後の集いって、これまた最大級の規模で行われたんだってな。その乱痴気騒ぎで懲り懲りになったのか、そん時の香典に大枚はたき切ったせいか、今回は主だった貴族の中でも特に老顔や古参が直参して来ないんだとさ……そういう連中の後継者が新顔みたいにやってくるだけで。こうなると天然の抑え役までいないもんだから、集いは半年前より無礼講が右肩上がりになってるらしい―――俺は古い連中が顔を見せないのは、ヴェリザハー・ア・ルーゼが二十年以上も公務を空白にしていたから、どのツラさげてって線もアリだと思うけどな。新顔を寄越すのだって、次期王に覚えを新たにって意図だろうし。まあその辺の裏事情は、どうでもいい」
鳩が豆鉄砲を食らったように唖然としているキアズマを見やって、シゾーは鼻を鳴らした。他人事ながら、鼻で笑ってしまったとも言える。
「んで。まだ下々には公表されないながらも、集いはあるんだから参加せよって、ビッグ・ダディからお達しか。お前が<彼に凝立する聖杯>直下の義賊を率いる頭目だから、革命どうこうについて真相を暴露させて、自分たちもその感興に便乗しようって腹だな」
「だろうよ」
「いつだっていつまでもお前のことを余裕でお舐めにしてくれるな、お前んとこの家。坊っちゃん坊っちゃんと甘々な贔屓目にしときながら、暇つぶしだけは高利貸しより貪欲に取り立てとくる」
「ああ、まったくもってその通りだ! こんな時までも見縊りおって! 俺はネモ族ンルジアッハ家の余興のためにアシューテティと義賊を選んだのではないぞ!」
強弁ごと激怒を再燃させたキアズマに―――
シゾーは、すうっと細めた双眸と共に、矛先を返した。
「そう断言することに、後ろ暗いだろう。キアズマ」
「なに?」
「三年前だったな。お前が結婚して義賊となり、ここに拠点を移したのは」
話の切り口から巧妙に、より深い部分まで斬り込んでいく。鼻白み、二の句が継げないでいる彼へと。
「三年より以前から、俺が筺底に居着くのと入れ違いに、お前はシザジアフに連れ立って<彼に凝立する聖杯>の旗司誓となっていた。そもそも筺底に足を踏み込んだのだって、腐り果てた蒼炎が、憧れの旗司誓の成れの果てだと認められなかったからだ。そのピンからキリまでに―――お前が感じている負い目は、独り相撲だよ」
「負い目だと?」
「ああ負い目だ。筺底の頃から、お前に接するたびに感じていた。一挙手一投足に沁み込んだネモ族ンルジアッハ家らしさが、自分の存在理由を侵犯しているような愚弄を覚えるんだろ……旗司誓への憧憬も、蒼炎への嚇怒も、旗司誓を経て義賊となりアシューテティさんと暮らしていることですら、ネモ・ンルジアッハへの反骨に唆かされての産物でしかないように感じているんだ。しかも結局は今も、赤毛であることや貴族であることが役立ってくれている。その中途半端さが、後ろめたいんだ。だから、実家からの呼びつけには従うし、アシューテティさんを束縛してしまう。そうする都度、葛藤と劣等感を拗らせながら」
「……分かった風な口を利きおって」
「分かるさ。どうしようもなく―――どうしたところで蒼炎の中なのは俺だから」
「なに?」
「同じなんだ―――お前は、俺と。ただしお前は、選べずにいる。このまま、そこに居続ける気か? 我が身可愛がりに……裏切り者らしい逃げ場所に、居心地悪く煙に巻いた奥で隠れ住み続けるのか?」
こたえなど、聞くまでもない。
シゾーは、ささくれた剣呑な気配に応答を沈めたままでいるキアズマへ、最後のひと押しをくれた。乞うように視線を下げ、声までも今以上に潜めながら。
「俺に力を貸してほしい」
「<風青烏>としてか?」
「いいや。個人的にだ」
「友としてか?」
「もっと打算ずくの共謀だ」
「成る程。悪餓鬼・糞餓鬼の結託の再来というわけか、ツァッシゾーギ。であらば、まずは俺の得る見返りから聞こう」
と、挑発ならば受けて立つとばかりのぶっきらぼうさで、鋭利に破顔してみせる。
それを揶揄するでもなかったが。シゾーは変わらぬ平淡さで応じた。
「そいつも蓋を開ければ、俺と同じだ」
「なんだと?」
「そうだな。もう少し例を具体的にしよう。お前は、実家と完全に縁を切って、こころおきなくここに居られるようになる。俺は、腐れ縁を引っ張り戻す―――ザーニーイをシヴツェイアとして後継第一階梯らしく据え置きやがった、王冠城デューバンザンガイツの天辺から」
目蓋を元通りに上げると、キアズマはこちら以上に両目を見開いて沈黙していた。ただしその沈黙は、迂遠に拒絶する意思を発散してのそれでなく、こちらの動きを警戒しての―――あるいは、待ち受けての、それだと思えた。
シゾーは、口を開いた。
「話を聞いてほしい。打ち明け話だ……最初から包み隠さず、洗いざらいに、だ。長い話になる―――そのあとでいい。決めるのは、お前だ」
そして、語り始める―――物語を。その終末を得んがために。
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