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転章
転章 第五部 第三節
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旗司誓。
その起源は、無二革命にまで遡る。革命後の残存勢力への遊弋を首題目的とした組織発祥のため、失われた八十枝族―――その中に紛れて、義烈あるキフォー、智謀のアクハゲノム、生かすならリョクロア、真猿よりスェンケルフールナーム、大義なくともフェビノドヒュグ、具申ながらヲルモグニ、ゆえありてイト、……以下、計三十七名が姿を消した。
<彼に凝立する聖杯>は、キフォーが司ることを誓った旗幟の印章である。彼に凝立する聖杯……<終末を得る物語>において、允可に足りぬこその檠架―――ランプ・ジ・ケンプファーから、液体もろとも聖性を授かった杯。その液体は、液体であることそれ以外を一切赦免されず、神の御手携えし鉄扇を織り成す神刃、それを染めた生き血を洗い清めるどころか双頭三肢の青鴉へと変貌させた。月を突っつき日を掻いて月食・日食を手玉に取り、天駆ける青蒼の閃きは、吹雪から花吹雪まで好き放題に乗り回したという……その存在を、外道よりあぶれた鬼畜なりと神への愚弄に発禁する者もいれば、奇跡の御業が成した神道におわす聖獣と崇める者もいる。キフォー当人がどう考えていたのかは分からない。前者に悪乗りしたのかも知れないし、後者にあやかろうとしたのかも分からない―――両極は存在しないのだから、ただ白いまんまの旗じゃ揚げておけんかろう違う意味になるしといったご都合主義的な下心がまかり通っていたのであっても、特筆すべき不思議でもない。
ここに来て十三日と十九時間後。とにかくその頃にはそんな御大層な伝説も知っていたが、それに便乗できるような活躍なんぞとは縁遠い日々を、シゾー・イェスカザは送っていた。
当時の新米旗司誓への割り当て仕事は、食事の支度や衣服の洗濯等々の恒常的な雑用がほとんどである。それは自分が新米だったことそれそのものよりも、子どもだったことを頭領ふたりが最優先にした結果だった。鉄は熱いうちに打てと言うが、打つ手順を間違えれば、鈍刀になるどころか半ばで折れる。練磨とは、打算を捨てた時に始めるべき見極めの初手である。つまりはこれも忍耐だ。イェンラズハもジンジルデッデも、やわらかい鉄と、かたい鉄を知っていた。刀を知っていたし、それよりほかのことも知っていた。
なので、行動する時は、いつだって いの一番にザーニーイと組まされた―――彼は子どもながら、みっつほどシゾーより年嵩だった。どちらのことも、ザーニーイは喜んだらしい。年齢であれ立場であれ、下がいると嬉しがるのは動物の性なりにしょうがないにせよ、部屋まで相部屋にされた時はさすがにシゾーも反抗した。
「黙らっしゃい。大なり小なり漏らしたら言えと忠告したろう。聞き入れなかった罰です。シッズァの馬鹿」
養父からの断罪に、ぐうの音も出なくなった。
ともあれ、こうなると四六時中顔を突き合わせていることになる。字を覚え、字の持つ意味を知り、意味が連なると世界を語り出すそれらを代弁するならば、演説より高説より歌うのが心地よい―――それらをひとつひとつ学んでいく逐一に黄色い嘴を容れられるのは煩わしくもあったが、ザーニーイが機嫌よくしているうちは見逃してやることにした。彼は概ね善人で、面倒見が良い先輩肌であり、だからこそちょくちょく鬱陶しい世話焼きだ。それ以上に極端でもない。両極が無いように、単極もまた存在しない。
だからこそ、見逃してやることが出来ない時もある。例えそれが、ザーニーイを不機嫌にしようとも。
ふたりが狩猟を終えて自室に戻ってきたのは、昼前だった。近所の食用虫くらいならこのタッグでも狩りに出ることを許されるのだが、今回はほか幾人かの旗司誓と組んで足を延ばし、大型の爬虫類をハンティングしに行ってきたのである。ごくごく一般的な罠猟だ。ありふれたとおりに、巣穴に仕掛けておいた成果を、回収してきた過ぎない―――のだが、今回に限って、それだけでは済まなかった。
長かったシゾーの黒髪は、とかく無残にぶち切れていた。ざんばらというのもおこがましく、何十年と放置された朽ち屋敷の窓辺に引っかかったカーテンのように、長いのも短いのもごちゃごちゃと入り乱れて縺れ合い、みすぼらしい汚さで垂れ下がっている。
それが撒き散らされた素肌の背中を、じっとりと半眼で見やって。下穿き一丁で椅子に座っている彼の後ろにて、寝台の端っこに腰を下ろしたザーニーイは、机から取ってきた鋏を片手に、ぶすっと告げた。
「……じゃ、切るぞ」
「知ってますから早くしてください」
「…………」
当人が承諾しているというのに やたら ぎこちなく、ザーニーイはシゾーの髪を持ち上げて鋏を入れ始めた。
しゃきり・しゃきりと、鎬が擦れ合う響きに合わせて、さふ・さふと髪が床へ落ちていく。
室内。窓から垂直に、ふたつ並べられた寝床は、板にシーツを巻いただけの軽いもので扱いやすく、喧嘩するつど合間を広げては、部屋掃除するたび狭まるという周期を、不定期ながら周回していた。今は最大径まで広げられているのだが、これは単に床屋作業を終えたあとでの床の片付けを見越してのことだった。
ひとつきりの窓明かり、そのお日様に照らし出される鋏を繰りながら、刃の反射光がきらきらする中で、ザーニーイが口を開く。
「おい」
「なんですか」
「ふてくされるにしたって程があんだろ。なんだよ、お前。狩りン途中から、帰ってからも変だぞ。こんな風に俺が毟っちまったから、拗ねてんのか? 毛」
「違います」
「毛根まで抜けたか?」
「違います」
「脳みそ付いてたのか? 毛根に」
「違いますったら」
「だよな。味噌なら香るよな」
「違う!」
そこらへんで憤激堪らず、がっと肩越しに振り返るのだが。
上背のあるザーニーイは余裕綽々とばかり、こちらを見おろしつつ嘆息混じりに眉根を寄せるだけだ。シゾーの様子よりか、切ろうとしていた長髪の残りが、手元から逃げていった先を気にしている。
「違うんなら、違うのどこだよ。言えよ。聞くから」
「だっからああもう、こいつと来たら……!」
「どうもこうもあるか。お前んとこ来んなら俺しかいねーだろ。シゾーのくせして。ほら、聞いてやっから言えっつの。もじもじっ子にしたってうぜーなお前」
「ああああああああ!」
加速する苛立ちに、養父に倣う口調すら取りこぼしてしまうのだが。
意地でも前に向き直って、暗に散髪の続きを催促することにする。鋏の感触がひと段落する頃合いを見計らって、シゾーは怒号した。
「なんで―――たすけた!?」
「なん?」
後方より。ぼけっと、声半ばに反芻してくる。飾り気ないにしたって、あんまりにも自覚していない。
使い終えた鋏を持て余しているザーニーイを置き去りに、深まる怒気に唆かされるまま、口早な指摘を唾棄もろとも向け続ける。
「大蜥蜴に狙われたのは僕なのに。油断してた、その先から……勝手に庇いやがって」
「だって。うしろからイテッとか呟かれたら、振り向くだろうがよ、普通。その肩向こうに化け蜥蜴がいたら、たすけるのだって、成り行きだろ。ウェンデのじっちゃん、あのひと噛みに右の脹脛と膝小僧持ってかれたから、うまいこと立てなくなったんだぞ。お前なんざ丸呑みだ。そうなったら、胃袋から引きずり上げるだけ手間かかっだろ。ケツの穴からひり出されて来るまで、悠長気長に待ってらんねぇし」
「だからって―――!」
「聞き分けねーな。なんでもへっても糞もあるか。成り行きだっつの。字ぃ分かっだろ? 行っちゃって成っちゃったんだから、もー、しゃーねえじゃん。弟分なんだから、兄貴風に吹かれるくらいでナンボのもんだろ」
「納得できるか! 誰が決めた! そんなもん!」
「神様なんじゃねえの? 産まれた順なんだから」
「はあ!?」
「あのなあ。ンないるかいないかも知れねえ流れを割り振った誰かさんにネチネチ恨みつらみ向けるより、現実的に現実の悪いとこ改めろよ」
と、あくまで能天気に歯牙にもかけず、悪びれることもなく、ぞんざいにしてくれる。
「なにが悪いって、そもそもお前の髪の毛だろーが。目に入ったのが悪い。だぁから長っちょろいまんまにしないで、とっとと切っときゃよかったんだ。謝んねーぞ。ごっそり引き千切っちまったけど、針の一本だって呑んでやらねえ。こちとら指という指に もっさりされて気持ち悪かったし。えんがちょ」
「だから、僕が言ってるのは、あんたがこうしてくれた髪じゃない! あんたが俺を庇ったことだ!」
「へ?」
しつこい見当違いに我慢ならず、ついにシゾーは椅子を蹴倒して立ち上がった。身体を反転させて、真っ向からザーニーイを見下ろす……のだが、彼は自分の寝台端に座したまま、股座の間の座面に鋏を置いて、ターバンを巻いた後ろ頭にて悠々と空手を組んでいる。彼が時々ターバン姿を気取って、こうしてシザジアフの真似をしたがるのは、今日に始まったことではなかったが―――今日ばかりは癇に障ると、そう思えた。盲愛にふんぞり返って虚勢を張ることを屁とも思っていない相手へと拳を固めて、それを確信する。
「もう、こんなことするな―――ってんですよ。契約外だ……恩を作るなんて、絶対に金輪際まっぴらなんですから」
「んなこと言ったって。無理だよ、それは。お前、俺よりガキじゃんか」
「なんだと?」
「デデ爺が言ってた。貸したり借りたり着たり着せたりは気ままでいいし、猫糞したって笑い飛ばせるけど、水と同じで最後は上から下へ流さないと、おかしく濁るのが恩なんだって。だから、お前もそのうち下が出来たら流せよ」
いきり立つシゾーはそっちのけに、さらりとザーニーイが ごり押しした。頭に血が上っているシゾーを扇ぐように、こちらへ向けて片手をぱたつかせつつ、
「恩返しってのは、手渡しして受け継ぐほどいいもんらしいぞ。磨かれるうちに玉になって、心の中で光るんだとさ―――握った手を忘れなきゃあな」
「知るか。上も下もない。僕だけが僕です」
「とんがるなって。俺だって、とうさんたちから、そうやって面倒見られてきてんだ。勘定するだけ馬鹿を見るっつの。デデ爺の言う通り、水なら下に流す方が利口だ。どっちみち、お互い、子どもが出来るくれぇ大人になるまでの辛抱さ。だろ?」
「勝手にしろ!」
「勝手にするさ。これが俺だ」
喧嘩にすら発展しなかった口争いは、そこで終わった。と思えていた。その時は。
肩を荒らげれば、切り刻まれた黒髪の破片が、素肌に痒みを残して、ばらばらと散っていく。ザーニーイが箒を取り行っている間、シゾーは身体をはたいた。大体は払えたようだが、今度は下穿きと下腹まわりに積もってしまう。どうせ水回りまで行って頭から流さないとならないのだが、そこまで掻痒感を同伴するのも嫌だった。下穿きを脱いで、全裸のまま、布地にへばり付いている毛の滓を叩き落とす。ついでに尻から臍の穴から、ぼりぼりと掻いた。
「なあ、おい」
その声に、シゾーは振り向いた。それは、ザーニーイの両手から箒と塵取りが床に落下したのと同時であり、だからこそ、バタぽか―――とでも言おうか、そんなおかしな可笑しな音も聞いた。
それが、引き金は引かれていたことに気付いた瞬間だったと、今は知っている。このことは……とうに、知っていた。
「それ。お前、俺よりガキのくせして、なんでもう生えてんの?」
ザーニーイは、シゾーの股間を指差していた。
□ ■ □ ■ □
「だから―――これは、大人になったら毛と一緒に股座に生えてくるもんじゃなくてだなあ。生まれた時から、その……男の子と女の子で違っていて、花で言うとこの雄しべと雌しべが―――って、にたにた見てないで、なんか言ってくれよジンジルデッデ! あんた女だったんだろ!」
「あいあい、そう逸るな。ひとしきり感心してるんだから、まだ水を差さないでおくれや。にしても、いやはや風流だねえ。子どものブッ飛びは、そうこなくっちゃあ。満喫したら、ちゃんと図書庫の本とマネキン使って教えといてやっからさあ」
「俺も立ち会わせてもらいますからね! あんたって人は、ぜえっっっったい危ない余興プラスアルファするから!」
「んだよー保護者なパパンったら過保護チャンだぁね。骨も皮も伸びるついでに治るんだから、がきんちょの時分に怪我しとかないと、伸び終わった頃合いにゃあビビって包丁も持てなくなっちまわぁな。いいのかい?」
「いくねぇのは、芋の皮剥きついでにナイフ投げ教える頭領でしょう!?」
「いーじゃねえの。教えときゃいい。香具師の大道芸がこれっぽっちだけでもありゃあ、爪に火を点すなんてぇ一芸に堕すこたぁないんだ。しっかもこいつはありがたいこって、木の天辺にお高く留まった林檎を落とすのにだって使えるし、トンズラかましてくれた悪党の逃げ足を斬り落とすのにも使えるし、あとまあついでに女ぁ落とすのにゃあ一発芸は二発三発ぶっ続けられるほどあるだけいい。だろ? そーだぞ覚えてるかい、お前ら。ほれほれ。こっちにゃ甘い水があるぞーい。寄ってきんしゃいなーあ」
「ええ、寄るのかお前ら!? マジかよ寄せやがった!」
「来たなー。粒揃いに見どころありげたぁエライえらい。よしよし、復習だ。ナイフ投げは基本的に二種類の型があってだな、柄を保持しつつ振りかぶって直線的に投擲するフォームは、威力はあるが安定しにくいから近距離向きで、命中率を上げて遠くを狙うなら、刃先を保持しつつ円弧を描いて落ちるように投げる回転投げだ―――」
「こないだ その的に配役しておいて威風堂々!? ふたりでどっちの的がいいか選べって、今まで見たことねえよあんな極悪涙目ジャンケン! 遠くても近くても刺さるじゃねーか!」
「はッハァ! 最っ高じゃねえの! それとて伝家の宝刀さ! 怪我した経験は身を守る心となり、身を癒す技となり、身を逃す体となる……心技体から目利きになるだけ言うこたぁ無ぇし、宝刀だってあるだけ損することもねえさ―――その刃は、いずれ神の御手愛撫す鉄扇までも織り成してくれよう! 双頭三肢の青鴉までも射ち出してくれる日が来たる!」
ともあれ。<彼に凝立する聖杯>に来て、十三日と二十時間後。その旗司誓を統べる頭領の執務室にて。
これ以上ない困り顔に冷や汗を垂らしたシザジアフを横目に、ジンジルデッデは呵々大笑を味わいながら、手拍子がてら面白がっていた。子どもたちを見おろして。ザーニーイ、彼―――女、に否応なく連れられて来た、シゾーをも見おろして。
ジンジルデッデ。以前の名はない。肉を削がれてから太らなくなったのだと自称する現頭領は、まだ形見として残していかない煙管を銜えながら、鼻の孔を膨らませて紫煙を吹いている。そこの肉もまた、欠けたあとで癒着したのが奇跡と言わんばかりの凄惨極まる瘢痕だが、まるでその道の者が刺青を誇るように、咲き誇る大輪の肉芽華の一切を隠していない。手足のみならず、顔もそうだ―――左頬にあるいち・に・さんの三本傷は、今日も今日とて笑い皺に歪められ、彗星も難着陸を試されそうである。独自のユーモアとヒューマニズムを風流韻事に溢れさせた心は磁石のように、物心つくかどうかといった子ども心ですらくっつけて離さなかった。独壇場にあるその天真爛漫さたるや、あたかも星。近視眼的でないにしても遠すぎる輝きは、星辰が振り撒く光のように、並み居る人知から程遠い。それでも、星。見上げるならば―――煌めく彼方。心洗われ、心惹かれる彼方。
シザジアフ。シザジアフ・ザーニーイ。名前はともあれ、父親。男親。いつだって心身から親身になって心配し、無駄に焦眉を絶やすことのない大人。旗司誓でもあるが、今は取り立てて重要でもない。彼が守るのは、旗ではなかった。誓って言える―――旗幟ではない。
ザーニーイ。シヴツェイア・ザーニーイ。ザーニーイだけだと思い込んでいる、今はまだ、子ども。少女。なにも知らずにいられた時代が終わっていく。それと知らず、世界は すげ替わっていた。
契約者はそれを、ずっと見ていた。シザジアフ・ザーニーイを超えろ、そのような契約の元、タグ付けされた……これもまた、今はまだ子ども。少年。泣きぬれる都度―――夢のたび泣きながら振り返ることになるのに、子どもだから、それすら知らない。名をシゾー・イェスカザと言う。これもまた、以前の名はない。
この場にいる誰一人名乗らずとも、総員それでいい。予てから呼ばれるまでもなく、烙印は押されている。それもきっと、巨人の原罪。
その起源は、無二革命にまで遡る。革命後の残存勢力への遊弋を首題目的とした組織発祥のため、失われた八十枝族―――その中に紛れて、義烈あるキフォー、智謀のアクハゲノム、生かすならリョクロア、真猿よりスェンケルフールナーム、大義なくともフェビノドヒュグ、具申ながらヲルモグニ、ゆえありてイト、……以下、計三十七名が姿を消した。
<彼に凝立する聖杯>は、キフォーが司ることを誓った旗幟の印章である。彼に凝立する聖杯……<終末を得る物語>において、允可に足りぬこその檠架―――ランプ・ジ・ケンプファーから、液体もろとも聖性を授かった杯。その液体は、液体であることそれ以外を一切赦免されず、神の御手携えし鉄扇を織り成す神刃、それを染めた生き血を洗い清めるどころか双頭三肢の青鴉へと変貌させた。月を突っつき日を掻いて月食・日食を手玉に取り、天駆ける青蒼の閃きは、吹雪から花吹雪まで好き放題に乗り回したという……その存在を、外道よりあぶれた鬼畜なりと神への愚弄に発禁する者もいれば、奇跡の御業が成した神道におわす聖獣と崇める者もいる。キフォー当人がどう考えていたのかは分からない。前者に悪乗りしたのかも知れないし、後者にあやかろうとしたのかも分からない―――両極は存在しないのだから、ただ白いまんまの旗じゃ揚げておけんかろう違う意味になるしといったご都合主義的な下心がまかり通っていたのであっても、特筆すべき不思議でもない。
ここに来て十三日と十九時間後。とにかくその頃にはそんな御大層な伝説も知っていたが、それに便乗できるような活躍なんぞとは縁遠い日々を、シゾー・イェスカザは送っていた。
当時の新米旗司誓への割り当て仕事は、食事の支度や衣服の洗濯等々の恒常的な雑用がほとんどである。それは自分が新米だったことそれそのものよりも、子どもだったことを頭領ふたりが最優先にした結果だった。鉄は熱いうちに打てと言うが、打つ手順を間違えれば、鈍刀になるどころか半ばで折れる。練磨とは、打算を捨てた時に始めるべき見極めの初手である。つまりはこれも忍耐だ。イェンラズハもジンジルデッデも、やわらかい鉄と、かたい鉄を知っていた。刀を知っていたし、それよりほかのことも知っていた。
なので、行動する時は、いつだって いの一番にザーニーイと組まされた―――彼は子どもながら、みっつほどシゾーより年嵩だった。どちらのことも、ザーニーイは喜んだらしい。年齢であれ立場であれ、下がいると嬉しがるのは動物の性なりにしょうがないにせよ、部屋まで相部屋にされた時はさすがにシゾーも反抗した。
「黙らっしゃい。大なり小なり漏らしたら言えと忠告したろう。聞き入れなかった罰です。シッズァの馬鹿」
養父からの断罪に、ぐうの音も出なくなった。
ともあれ、こうなると四六時中顔を突き合わせていることになる。字を覚え、字の持つ意味を知り、意味が連なると世界を語り出すそれらを代弁するならば、演説より高説より歌うのが心地よい―――それらをひとつひとつ学んでいく逐一に黄色い嘴を容れられるのは煩わしくもあったが、ザーニーイが機嫌よくしているうちは見逃してやることにした。彼は概ね善人で、面倒見が良い先輩肌であり、だからこそちょくちょく鬱陶しい世話焼きだ。それ以上に極端でもない。両極が無いように、単極もまた存在しない。
だからこそ、見逃してやることが出来ない時もある。例えそれが、ザーニーイを不機嫌にしようとも。
ふたりが狩猟を終えて自室に戻ってきたのは、昼前だった。近所の食用虫くらいならこのタッグでも狩りに出ることを許されるのだが、今回はほか幾人かの旗司誓と組んで足を延ばし、大型の爬虫類をハンティングしに行ってきたのである。ごくごく一般的な罠猟だ。ありふれたとおりに、巣穴に仕掛けておいた成果を、回収してきた過ぎない―――のだが、今回に限って、それだけでは済まなかった。
長かったシゾーの黒髪は、とかく無残にぶち切れていた。ざんばらというのもおこがましく、何十年と放置された朽ち屋敷の窓辺に引っかかったカーテンのように、長いのも短いのもごちゃごちゃと入り乱れて縺れ合い、みすぼらしい汚さで垂れ下がっている。
それが撒き散らされた素肌の背中を、じっとりと半眼で見やって。下穿き一丁で椅子に座っている彼の後ろにて、寝台の端っこに腰を下ろしたザーニーイは、机から取ってきた鋏を片手に、ぶすっと告げた。
「……じゃ、切るぞ」
「知ってますから早くしてください」
「…………」
当人が承諾しているというのに やたら ぎこちなく、ザーニーイはシゾーの髪を持ち上げて鋏を入れ始めた。
しゃきり・しゃきりと、鎬が擦れ合う響きに合わせて、さふ・さふと髪が床へ落ちていく。
室内。窓から垂直に、ふたつ並べられた寝床は、板にシーツを巻いただけの軽いもので扱いやすく、喧嘩するつど合間を広げては、部屋掃除するたび狭まるという周期を、不定期ながら周回していた。今は最大径まで広げられているのだが、これは単に床屋作業を終えたあとでの床の片付けを見越してのことだった。
ひとつきりの窓明かり、そのお日様に照らし出される鋏を繰りながら、刃の反射光がきらきらする中で、ザーニーイが口を開く。
「おい」
「なんですか」
「ふてくされるにしたって程があんだろ。なんだよ、お前。狩りン途中から、帰ってからも変だぞ。こんな風に俺が毟っちまったから、拗ねてんのか? 毛」
「違います」
「毛根まで抜けたか?」
「違います」
「脳みそ付いてたのか? 毛根に」
「違いますったら」
「だよな。味噌なら香るよな」
「違う!」
そこらへんで憤激堪らず、がっと肩越しに振り返るのだが。
上背のあるザーニーイは余裕綽々とばかり、こちらを見おろしつつ嘆息混じりに眉根を寄せるだけだ。シゾーの様子よりか、切ろうとしていた長髪の残りが、手元から逃げていった先を気にしている。
「違うんなら、違うのどこだよ。言えよ。聞くから」
「だっからああもう、こいつと来たら……!」
「どうもこうもあるか。お前んとこ来んなら俺しかいねーだろ。シゾーのくせして。ほら、聞いてやっから言えっつの。もじもじっ子にしたってうぜーなお前」
「ああああああああ!」
加速する苛立ちに、養父に倣う口調すら取りこぼしてしまうのだが。
意地でも前に向き直って、暗に散髪の続きを催促することにする。鋏の感触がひと段落する頃合いを見計らって、シゾーは怒号した。
「なんで―――たすけた!?」
「なん?」
後方より。ぼけっと、声半ばに反芻してくる。飾り気ないにしたって、あんまりにも自覚していない。
使い終えた鋏を持て余しているザーニーイを置き去りに、深まる怒気に唆かされるまま、口早な指摘を唾棄もろとも向け続ける。
「大蜥蜴に狙われたのは僕なのに。油断してた、その先から……勝手に庇いやがって」
「だって。うしろからイテッとか呟かれたら、振り向くだろうがよ、普通。その肩向こうに化け蜥蜴がいたら、たすけるのだって、成り行きだろ。ウェンデのじっちゃん、あのひと噛みに右の脹脛と膝小僧持ってかれたから、うまいこと立てなくなったんだぞ。お前なんざ丸呑みだ。そうなったら、胃袋から引きずり上げるだけ手間かかっだろ。ケツの穴からひり出されて来るまで、悠長気長に待ってらんねぇし」
「だからって―――!」
「聞き分けねーな。なんでもへっても糞もあるか。成り行きだっつの。字ぃ分かっだろ? 行っちゃって成っちゃったんだから、もー、しゃーねえじゃん。弟分なんだから、兄貴風に吹かれるくらいでナンボのもんだろ」
「納得できるか! 誰が決めた! そんなもん!」
「神様なんじゃねえの? 産まれた順なんだから」
「はあ!?」
「あのなあ。ンないるかいないかも知れねえ流れを割り振った誰かさんにネチネチ恨みつらみ向けるより、現実的に現実の悪いとこ改めろよ」
と、あくまで能天気に歯牙にもかけず、悪びれることもなく、ぞんざいにしてくれる。
「なにが悪いって、そもそもお前の髪の毛だろーが。目に入ったのが悪い。だぁから長っちょろいまんまにしないで、とっとと切っときゃよかったんだ。謝んねーぞ。ごっそり引き千切っちまったけど、針の一本だって呑んでやらねえ。こちとら指という指に もっさりされて気持ち悪かったし。えんがちょ」
「だから、僕が言ってるのは、あんたがこうしてくれた髪じゃない! あんたが俺を庇ったことだ!」
「へ?」
しつこい見当違いに我慢ならず、ついにシゾーは椅子を蹴倒して立ち上がった。身体を反転させて、真っ向からザーニーイを見下ろす……のだが、彼は自分の寝台端に座したまま、股座の間の座面に鋏を置いて、ターバンを巻いた後ろ頭にて悠々と空手を組んでいる。彼が時々ターバン姿を気取って、こうしてシザジアフの真似をしたがるのは、今日に始まったことではなかったが―――今日ばかりは癇に障ると、そう思えた。盲愛にふんぞり返って虚勢を張ることを屁とも思っていない相手へと拳を固めて、それを確信する。
「もう、こんなことするな―――ってんですよ。契約外だ……恩を作るなんて、絶対に金輪際まっぴらなんですから」
「んなこと言ったって。無理だよ、それは。お前、俺よりガキじゃんか」
「なんだと?」
「デデ爺が言ってた。貸したり借りたり着たり着せたりは気ままでいいし、猫糞したって笑い飛ばせるけど、水と同じで最後は上から下へ流さないと、おかしく濁るのが恩なんだって。だから、お前もそのうち下が出来たら流せよ」
いきり立つシゾーはそっちのけに、さらりとザーニーイが ごり押しした。頭に血が上っているシゾーを扇ぐように、こちらへ向けて片手をぱたつかせつつ、
「恩返しってのは、手渡しして受け継ぐほどいいもんらしいぞ。磨かれるうちに玉になって、心の中で光るんだとさ―――握った手を忘れなきゃあな」
「知るか。上も下もない。僕だけが僕です」
「とんがるなって。俺だって、とうさんたちから、そうやって面倒見られてきてんだ。勘定するだけ馬鹿を見るっつの。デデ爺の言う通り、水なら下に流す方が利口だ。どっちみち、お互い、子どもが出来るくれぇ大人になるまでの辛抱さ。だろ?」
「勝手にしろ!」
「勝手にするさ。これが俺だ」
喧嘩にすら発展しなかった口争いは、そこで終わった。と思えていた。その時は。
肩を荒らげれば、切り刻まれた黒髪の破片が、素肌に痒みを残して、ばらばらと散っていく。ザーニーイが箒を取り行っている間、シゾーは身体をはたいた。大体は払えたようだが、今度は下穿きと下腹まわりに積もってしまう。どうせ水回りまで行って頭から流さないとならないのだが、そこまで掻痒感を同伴するのも嫌だった。下穿きを脱いで、全裸のまま、布地にへばり付いている毛の滓を叩き落とす。ついでに尻から臍の穴から、ぼりぼりと掻いた。
「なあ、おい」
その声に、シゾーは振り向いた。それは、ザーニーイの両手から箒と塵取りが床に落下したのと同時であり、だからこそ、バタぽか―――とでも言おうか、そんなおかしな可笑しな音も聞いた。
それが、引き金は引かれていたことに気付いた瞬間だったと、今は知っている。このことは……とうに、知っていた。
「それ。お前、俺よりガキのくせして、なんでもう生えてんの?」
ザーニーイは、シゾーの股間を指差していた。
□ ■ □ ■ □
「だから―――これは、大人になったら毛と一緒に股座に生えてくるもんじゃなくてだなあ。生まれた時から、その……男の子と女の子で違っていて、花で言うとこの雄しべと雌しべが―――って、にたにた見てないで、なんか言ってくれよジンジルデッデ! あんた女だったんだろ!」
「あいあい、そう逸るな。ひとしきり感心してるんだから、まだ水を差さないでおくれや。にしても、いやはや風流だねえ。子どものブッ飛びは、そうこなくっちゃあ。満喫したら、ちゃんと図書庫の本とマネキン使って教えといてやっからさあ」
「俺も立ち会わせてもらいますからね! あんたって人は、ぜえっっっったい危ない余興プラスアルファするから!」
「んだよー保護者なパパンったら過保護チャンだぁね。骨も皮も伸びるついでに治るんだから、がきんちょの時分に怪我しとかないと、伸び終わった頃合いにゃあビビって包丁も持てなくなっちまわぁな。いいのかい?」
「いくねぇのは、芋の皮剥きついでにナイフ投げ教える頭領でしょう!?」
「いーじゃねえの。教えときゃいい。香具師の大道芸がこれっぽっちだけでもありゃあ、爪に火を点すなんてぇ一芸に堕すこたぁないんだ。しっかもこいつはありがたいこって、木の天辺にお高く留まった林檎を落とすのにだって使えるし、トンズラかましてくれた悪党の逃げ足を斬り落とすのにも使えるし、あとまあついでに女ぁ落とすのにゃあ一発芸は二発三発ぶっ続けられるほどあるだけいい。だろ? そーだぞ覚えてるかい、お前ら。ほれほれ。こっちにゃ甘い水があるぞーい。寄ってきんしゃいなーあ」
「ええ、寄るのかお前ら!? マジかよ寄せやがった!」
「来たなー。粒揃いに見どころありげたぁエライえらい。よしよし、復習だ。ナイフ投げは基本的に二種類の型があってだな、柄を保持しつつ振りかぶって直線的に投擲するフォームは、威力はあるが安定しにくいから近距離向きで、命中率を上げて遠くを狙うなら、刃先を保持しつつ円弧を描いて落ちるように投げる回転投げだ―――」
「こないだ その的に配役しておいて威風堂々!? ふたりでどっちの的がいいか選べって、今まで見たことねえよあんな極悪涙目ジャンケン! 遠くても近くても刺さるじゃねーか!」
「はッハァ! 最っ高じゃねえの! それとて伝家の宝刀さ! 怪我した経験は身を守る心となり、身を癒す技となり、身を逃す体となる……心技体から目利きになるだけ言うこたぁ無ぇし、宝刀だってあるだけ損することもねえさ―――その刃は、いずれ神の御手愛撫す鉄扇までも織り成してくれよう! 双頭三肢の青鴉までも射ち出してくれる日が来たる!」
ともあれ。<彼に凝立する聖杯>に来て、十三日と二十時間後。その旗司誓を統べる頭領の執務室にて。
これ以上ない困り顔に冷や汗を垂らしたシザジアフを横目に、ジンジルデッデは呵々大笑を味わいながら、手拍子がてら面白がっていた。子どもたちを見おろして。ザーニーイ、彼―――女、に否応なく連れられて来た、シゾーをも見おろして。
ジンジルデッデ。以前の名はない。肉を削がれてから太らなくなったのだと自称する現頭領は、まだ形見として残していかない煙管を銜えながら、鼻の孔を膨らませて紫煙を吹いている。そこの肉もまた、欠けたあとで癒着したのが奇跡と言わんばかりの凄惨極まる瘢痕だが、まるでその道の者が刺青を誇るように、咲き誇る大輪の肉芽華の一切を隠していない。手足のみならず、顔もそうだ―――左頬にあるいち・に・さんの三本傷は、今日も今日とて笑い皺に歪められ、彗星も難着陸を試されそうである。独自のユーモアとヒューマニズムを風流韻事に溢れさせた心は磁石のように、物心つくかどうかといった子ども心ですらくっつけて離さなかった。独壇場にあるその天真爛漫さたるや、あたかも星。近視眼的でないにしても遠すぎる輝きは、星辰が振り撒く光のように、並み居る人知から程遠い。それでも、星。見上げるならば―――煌めく彼方。心洗われ、心惹かれる彼方。
シザジアフ。シザジアフ・ザーニーイ。名前はともあれ、父親。男親。いつだって心身から親身になって心配し、無駄に焦眉を絶やすことのない大人。旗司誓でもあるが、今は取り立てて重要でもない。彼が守るのは、旗ではなかった。誓って言える―――旗幟ではない。
ザーニーイ。シヴツェイア・ザーニーイ。ザーニーイだけだと思い込んでいる、今はまだ、子ども。少女。なにも知らずにいられた時代が終わっていく。それと知らず、世界は すげ替わっていた。
契約者はそれを、ずっと見ていた。シザジアフ・ザーニーイを超えろ、そのような契約の元、タグ付けされた……これもまた、今はまだ子ども。少年。泣きぬれる都度―――夢のたび泣きながら振り返ることになるのに、子どもだから、それすら知らない。名をシゾー・イェスカザと言う。これもまた、以前の名はない。
この場にいる誰一人名乗らずとも、総員それでいい。予てから呼ばれるまでもなく、烙印は押されている。それもきっと、巨人の原罪。
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