2 / 7
episode 1 俺の妹
しおりを挟むーーお兄ちゃん……
ん? なんか聞こえるような……
ーーわたし、お兄ちゃんの事が……
むむ? なんだこれ……
ーー大好き
はい? なんですと?!
ーーちゅっ
は? はああああああああ?!
ーーガタン!
「いってぇ?!」
俺は机の上のパソコンのキーボードに額を強打して目を覚ました。
くっそー、なんなんだ一体今のは。目覚めが悪いにも程があるとはこの事だ。
だが、俺はすぐにその原因が理解できた。パソコンの画面に映し出されている女の子の姿。
原因はこれである。
昨日、隼人からこの今人気があると言われている《仮の彼女》略してカリカノを見れば俺のこの妹への熱い想いがわかるッ! とかなんとかで半ば強引に持ってかされたこのアニメを見ながらいつの間にか寝てしまったらしい。
とりあえず一応は少し見てみたが、妹と兄の純愛ラブとは……まさに現実世界ではありえない話だな。
あー二度寝するか……
俺はベッドに入るとまた深い眠りついた。
ーーコンコンッ!
俺は琴音が部屋のドアをノックする音で目を覚ました。
「竜にぃー? 起きてるー? 朝ご飯できたよー?」
さすがに夜更かししすぎて頭がぼーっとするな。
俺はもそっとベッドから起きてリビングへ向かうと琴音が朝飯をテーブルの上に置いている姿があった。
「あっ! 竜にぃ、おはよう~」
「おはよう、琴音」
俺は洗面所に行き顔を洗っていると琴音が顔を覗かせている。
「竜にぃが寝坊なんて珍しいよね~なんかあったの?」
「うっせーなー、昨日少し夜更かししてただけだよ」
俺が椅子に座り飯を食べていると琴音が正面に座り俺をじーっと見ている。
「はぁ……なんなんだ……その疑いの眼差しは」
「はっは~ん、もしかして彼女ができたとか」
琴音はニヤニヤ笑いながら俺を見ている。
「それとも~、好きな人ができて考えすぎて眠れなかったとか」
おい……夜更かしからどうやったらそんな発想に発展すんだ琴音よ……
「そんなんじゃねーよ、ちょっと勉強してたら遅くなっただけだよ」
「はいはい、竜にぃが勉強ねぇ。まっ、そういう事にしといてあげる」
そういうと琴音はニコっと俺に笑って見せた。
ーーこ、こいつ絶対信じてねえええ!!
まぁでも確かに普段勉強なんて全然しない俺を十分知ってる訳だしこんな嘘ついたとこで琴音にはバレバレな訳なんだが……
俺達は支度をすると学校へ行くため家を出るといつものように美由と隼人が待っていた。
「おーっす!竜也、琴音ちゃん」
「おはよぉ、竜くん、琴音ちゃん」
美由と隼人が元気よく挨拶してきた。
「おはようございますっ、美由お姉ちゃん、柏木先輩」
琴音がニコっと笑うと隼人はすかさず毎度のごとく琴音の手を両手で握ると涙を流しながら今日も可愛いです!とかなんとか言っている。
はぁ……ほんと隼人の妹属性はなんとかならないものなのか。
「おら、隼人行くぞ」
俺は隼人の襟を掴むとズルズルと引きずって学校へ向かって歩く。
「あ~!琴音ちゃん今日も栄養をありがとおおお! ーーゴブァ!」
ーービシッ!
「うっせぇ!!」
隼人がそう言いきった後脳天目掛けて俺の痛烈なチョップが炸裂したのだった。まぁ、もちろんこれもいつものお決まりになっている訳だが。
それを後ろで見ていた琴音と美由は顔を見合わせながら笑っていた。
俺達は学校に着き琴音とは別れ教室に向かっていると何やら廊下で男子達が立ち話をしているのが目に入る。
話の内容はあの子が可愛いだとか綺麗だとかそんな内容だ。
ただ一つ引っかかったのは何故か琴音の名前が多数上がっていた事だ。
「なあ? 隼人、琴音ってそんなモテんのか?」
「はあ?! 竜也お前、マジで知らないのかよー?!」
当たり前だ! そんな今まで妹がモテるとかモテないとか考えた事すらなかったわ!
俺が苦笑いしていると隼人は片手で頭を抑えてうなだれていた。
「その顔じゃ、マジで知らないみたいだな……琴音ちゃんバスケ部のエースだろ? その中でも一番の人気みたいだぜ、顔も可愛いし、スタイルもいいし、性格もいいって言うまさに妹の中の妹って感じだあああ!」
そこまで言うとかなり大げさな気もするぞ隼人よ……
ーーというかそこに妹の文字はいらねぇだろ!!
だがまぁ性格がいいって言うのは認めなくもない訳だが。
そういや、琴音がバスケ部に入っているのは聞いてはいたがバスケしてる所は一度も見たことはなかったな。
たまには見にいってやるのもいいか。俺は帰りに少し見にいってやる事にした。
そして普段通り授業を終え放課後バスケ部が練習している体育館へと向かってみた。
すると何やら入口付近に小さな人集りができているのを見つけた。
俺はその人集りの横で体育館を覗いてみるとそこにはまさに練習真っ最中の琴音の姿があった。
今はシュートの練習か何かだろうか、琴音はボールをパスしてもらうと華麗にシュートを決めていた。
おお! 結構さまになってるもんだな。
俺が見ていると琴音が入り口のほうに向かってきたので俺は声をかけてみる事にした。
「よう、練習お疲れさん」
「あっ、ありがとうごますーーって、りゅ、竜にぃ~?!」
ん? 何だ? たしかに急に声をかけたかもしれないがそこまでびっくりされるような事だったのだろうか。
「な、な、な、な、なんでこんなとこに?!」
いやいや、まてまてそんな驚く事か?!
「み、み、見てたの? 練習……」
「お、おう、結構さまになってたぞ?」
「~~~~~~~~?!」
琴音は何故かは知らんが言葉になってない声を上げながら顔を真っ赤にして猛ダッシュで体育館を飛び出していった。
っておい……練習どうすんだあいつは。というか、周りの男共の視線が何故か強烈に痛いぞ!!
俺は足早に体育館を後にし家路についた。
結局のところ、琴音のあの行動は一体なんだったのか。
あそこまでされると妙に気になってしまうんだよなぁ……
ーーそんな事を考えてるうちに今日も1日が終わった。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
【完結】少年の懺悔、少女の願い
干野ワニ
恋愛
伯爵家の嫡男に生まれたフェルナンには、ロズリーヌという幼い頃からの『親友』がいた。「気取ったご令嬢なんかと結婚するくらいならロズがいい」というフェルナンの希望で、二人は一年後に婚約することになったのだが……伯爵夫人となるべく王都での行儀見習いを終えた『親友』は、すっかり別人の『ご令嬢』となっていた。
そんな彼女に置いて行かれたと感じたフェルナンは、思わず「奔放な義妹の方が良い」などと言ってしまい――
なぜあの時、本当の気持ちを伝えておかなかったのか。
後悔しても、もう遅いのだ。
※本編が全7話で悲恋、後日談が全2話でハッピーエンド予定です。
※長編のスピンオフですが、単体で読めます。
虐げられた令嬢は、姉の代わりに王子へ嫁ぐ――たとえお飾りの妃だとしても
千堂みくま
恋愛
「この卑しい娘め、おまえはただの身代わりだろうが!」 ケルホーン伯爵家に生まれたシーナは、ある理由から義理の家族に虐げられていた。シーナは姉のルターナと瓜二つの顔を持ち、背格好もよく似ている。姉は病弱なため、義父はシーナに「ルターナの代わりに、婚約者のレクオン王子と面会しろ」と強要してきた。二人はなんとか支えあって生きてきたが、とうとうある冬の日にルターナは帰らぬ人となってしまう。「このお金を持って、逃げて――」ルターナは最後の力で屋敷から妹を逃がし、シーナは名前を捨てて別人として暮らしはじめたが、レクオン王子が迎えにやってきて……。○第15回恋愛小説大賞に参加しています。もしよろしければ応援お願いいたします。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
【完結】美しい人。
❄️冬は つとめて
恋愛
「あなたが、ウイリアム兄様の婚約者? 」
「わたくし、カミーユと言いますの。ねえ、あなたがウイリアム兄様の婚約者で、間違いないかしら。」
「ねえ、返事は。」
「はい。私、ウイリアム様と婚約しています ナンシー。ナンシー・ヘルシンキ伯爵令嬢です。」
彼女の前に現れたのは、とても美しい人でした。
竜王の花嫁
桜月雪兎
恋愛
伯爵家の訳あり令嬢であるアリシア。
百年大戦終結時の盟約によりアリシアは隣国に嫁ぐことになった。
そこは竜王が治めると云う半獣人・亜人の住むドラグーン大国。
相手はその竜王であるルドワード。
二人の行く末は?
ドタバタ結婚騒動物語。
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる